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2009年10月25日 (日)

■【映画評】『私の中のあなた』。私は何の為に生まれてきたのか、生きるとはどういうことなのか。

これは泣けました。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.35  『私の中のあなた
           原題: My Sister's Keeper
    原作:ジョディ・ピコー「わたしのなかのあなた」
     監督:ニック・カサベテス 公開:2009年6月(米国)
  出演: キャメロン・ディアス アビゲイル・ブレスリン ソフィア・ヴァジリーヴァ 他

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■ストーリー■
11歳の少女アナは白血病の姉に臓器を提供するドナーとして遺伝子操作によってこの世に生まれた。母サラは愛する家族のためなら当然と信じ、アナはこれまで何度も姉の治療のために犠牲を強いられてきた。そんなある日、「もうケイトのために手術を受けるのは嫌。私の体は、自分で守りたい」と、アナは突然、両親を相手に訴訟を起こす。しかし、その決断にはある隠された理由があった…。(goo映画より)

   
■私は何の為に生まれてきたのか、という問いは、10代前半には芽生えてくる問いのように思える。

主人公のアナは、姉のケイトが生きていく為のドナーとして人工的に生を受けたわけで、客観的に考えるならば、その問いの答えはかなり厳しいものとなるだろう。

■物語はアナの独白ではじまり、アナの独白で終わる。

その間にある出来事を通して、彼女自身、その問いに対するひとつの答え、というより想いに至る。

そのとき、邦題の「私の中のあなた」というタイトルの意味が深く心に沁みてくるのである。

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■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■どうも「隠された理由」にこだわりすぎたのか、臓器移植を拒否するアナと、その一方でケイトに対する思いやりに溢れる日常のアナとのギャップに違和感を覚えてしまう。

きっと母親のサラ(キャメロン・ディアス)も同じことを感じていたに違いなく、見る者はその意味でサラと同じ目線で子供たちを見ていることになるのだろう。

■けれど、ケイトの命を助けることで気持ちがいっぱいになっているサラに対し、それ以外の大人たちの視点がしっかり描かれていて、観客はサラだけに没入することはない。

ふたりの娘のどちらの気持ちも汲み取ろうとする父親(ジェイソン・パトリック)、アナの訴えを叶えようと全力をつくす敏腕弁護士(アレック・ボールドウィン)、自らも最愛の娘を亡くしたばかりの裁判官(ジョーン・キューザック)、そして、ケイトにとって最良のことを常に考えている彼女の主治医(デヴィッド・ソートン)。

■その視線の多様さが、アナとケイトの造形に深みを与えてくれている。

と、同時に、「子供たちが自分たちで決めたこと」を理解する道筋を与えているのである。

■本来ならば、明るい青春を謳歌しているはずの年頃のケイトにとって、入退院を繰り返し、抗がん剤の副作用に苦しむ人生とはいったい何なのか。

そして、そんな姉にとって、これから明るい青春を謳歌するはずの妹を腎臓移植による苦しみの道に引きずり込むこととは、いったいどういう意味をもつのだろうか。

■同じ白血病をかかえるボーイフレンドの死に直面したケイトはそれを真剣に考え、兄と妹もその考えを尊重することを決め、行動に移す。

彼らにとって、それがどれだけ苦しい選択であったことか。

アナが移植を拒否した理由が明らかになるに従って、ケイトの、そしてアナの気持ちに落涙を禁じえないのである。

■「私の中のあなた」という邦題は、ケイトの中で生きるアナの臓器を想起させつつ、実はアナの心の中で生き続けるケイトの記憶のことを意味する。

もちろん、ケイトが生き続けられれば、それにまさることはない。

けれども、自然のままに生きられない、となったとき、果たして「生き続けること」が本当に最良の道なのか。

尊厳死、などという難しい言葉の前に、

生きる、とは一体どういうことなのか。

物語の中とはいえ、子供たちにそれを教えられる、それが感動をさらに深くするのだ。

   

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                           <2009.10.25 記>

Photo
■【原作】わたしのなかのあなた
ジョディ ピコー 著 ・ 川副 智子 訳 早川書房
 

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■STAFF■
監督:ニック・カサベテス
原作:ジョディ・ピコー
脚本:ジェレミー・レベン、ニック・カサベテス
撮影:キャレブ・デシャネル
美術:ジョン・ハットマン
編集:アラン・ハイム、ジム・フリン
音楽:アーロン・ジグマン



■CAST■
キャメロン・ディアス    :母親 サラ・フィッツジェラルド
アビゲイル・ブレスリン  :次女 アナ・フィッツジェラルド
ソフィア・ヴァジリーヴァ  :長女 ケイト・フィッツジェラルド
ジェイソン・パトリック   :父  ブライアン・フィッツジェラルド
エヴァン・エリングソン  :長男 ジェシー・フィッツジェラルド
ヘザー・ウォールクィスト :ケリー叔母さん
 
アレック・ボールドウィン :アレクサンダー弁護士
トーマス・デッガー    :テイラー(ケイトのボーイフレンド)
ジョーン・キューザック   :デ・サルヴォ判事
デヴィッド・ソートン      :チャンス医師

     
■過去記事■

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コメント

はじめまして。
この作品、良かったですね~。生と死について、深く考えさせられた映画でした。

応援凸!

投稿: とにー | 2009年11月 9日 (月) 13時17分

とにーさん、
はじめまして&
コメントどうもありがとうございます。

これからも、ちょっとずつですが
いろいろと記事を書いていきたいと思いますので
気が向いたらまた遊びにいらしてください。

投稿: 電気羊 | 2009年11月10日 (火) 19時19分

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