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2009年10月 8日 (木)

■【映画評】『カムイ外伝』、活劇であるならば何よりも大切なのはラストのカタルシスに至る下準備なのだ。

♪忍びが通る~けものみち~。

風~がカムイの影を斬ぃる~。(ワクワク)

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.34  『カムイ外伝
           公開:2009年9月
           監督・脚本: 崔洋一  脚本: 宮藤官九郎 原作:白土三平
       出演: 松山ケンイチ 小雪 伊藤英明 他

          Photo

■ストーリー■
抜忍であるカムイは追われる身として厳しい追忍の刃を切り抜け、生き抜いていく。そんな逃亡の旅のなかで、カムイは奇縁によって漁師の半兵衛一家のもとに身を寄せることになるが、その半兵衛の妻もまた身を潜めて生きてきた抜忍なのであった・・・。
  

■監督:崔洋一、脚本:宮藤官九郎、主演:松山ケンイチなんてメンバーであの名作を実写化しようってんだから期待がぐんぐんと高まるのも当然。

一部の映画サイトでの評判の悪さはその反動なのだろう。

確かに、ワイヤーアクションがチープすぎるとか、山崎努の説明過多なナレーションに違和感を感じるだとか、いろいろと難点はある。

が、そのあたりに片目をつぶれば、なかなかの傑作。

■’飯綱落とし’、’変移抜刀霞切り’といったカムイの必殺技をうまく見せていたし、松ケンの忍者走りも決まっていたし、小林薫や伊藤英明を中心とした俳優陣の熱演と山崎努のシブい声によってでドラマの中にも没入出来た。

要するにエンターテイメントとして楽しめた。

決して1800円の価値のない駄作などではない。

それだけに、ラストの描き方がどうにももったいなく、解せないのである。

■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■
   

■■■              ■■■

■渡り衆の頭である不動(伊藤英明)が島の民たちだけでなく、仲間であるはずの渡り衆まで皆殺しにした、そこの背景を、

「うぬがイヌだったのか!」

というカムイのセリフで全部を了解せよ、というのは原作を知らない観客に対して酷である。

果たして本当に伝わったのか、というそこである。

■もともと、「スガルの島」編は、半兵衛一家を中心とした島の人たちだけでなく、殿様とか、抜け忍集団の渡り衆だとか、追忍たちとかの関係が絡み合う複雑な話である。

それを2時間ほどの映画にまとめる苦労もわかる。

けれども、この話の何が大事だったかというと、関係のない者達をも巻き込んで無益な死に追いやっていく忍者社会の非道さ、その象徴である不動の裏切り。

そこを描くのがあまりにも早足過ぎるのではないか、ということだ。

抜け忍スガルと事情を知りすぎた半兵衛を始末するために島民を皆殺しにする理由もよくわからないし、抜け忍組織を作っておいてまとめて始末しようという不動のたくらみも分かりにくい。

そこがよく分からないまま、不動との対決に入っていくフラストレーション。

■なにもすべてが原作に忠実である必要はない。

けれども、不動が新たな抜け忍を助けに行くという名目でカムイを誘い出し、罠に嵌め、その間に半兵衛一家の水がめに毒を盛り、渡り衆を「組織を裏切った愚か者」呼ばわりしつつ船ごと全滅させる。

その一連の裏切りの流れが、不動に対するカムイの怒りの原動力になるわけで、そこを丁寧に描かなければラストシーンのカタルシスにつながらないのである。

物語りにとって、ラストに向けた流れの加速の丁寧さがいかに大切かを改めて認識した次第である。

  

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                           <2009.10.08 記>

Photo
■カムイ外伝-スガルの島- (ビッグコミックススペシャル)
■【原作】白土三平 小学館 (2009/8/28)
■カムイ外伝全集、全11巻のうち、スガルの島編を抜き出した本だと思われる。話は独立しているからコレだけを読んでもまったく問題ないだろう。
  

Photo_2
■決定版カムイ伝全集 カムイ伝 外伝 11巻セット
■2007年に刊行されたカムイ伝全集の外伝編。
映画公開と平行して新作が連載されているがそれは含まない。
  

Photo_4
■カムイ伝全集―決定版 (第1部1) (ビッグコミックススペシャル)
■士農工商、エタ、非人。

江戸時代のその社会構造の歪みと悲劇、そして本当に生きる、ということを描こうとした壮大な叙事詩。

むごい話の連続なだけに、ラストの「生」に対する力強さに心を揺り動かせられた。

手塚治虫の『火の鳥』と並ぶ日本漫画史上に輝く傑作だとおもう。

(第一部、全15巻)
   

■STAFF■
監督 崔洋一
原作 白土三平
脚本 宮藤官九郎 、崔洋一



■CAST■
松山ケンイチ  : カムイ
小雪       : スガル(お鹿)
伊藤英明    : 不動
佐藤浩市    : 水谷軍兵衛
小林薫     : 半兵衛
大後寿々花   : サヤカ
金井勇太     : 吉人
芦名星      : ミクモ
土屋アンナ    : アユ
イーキン・チェン : 大頭
イ・ハソン  : カムイの少年時代
PANTA  : 絵師
隆大介  : 柏原
坂口征夫  : 渡り衆
* * * * * * * *
語り  : 山崎努

    
■過去記事■

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