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2009年9月 9日 (水)

■【映画評】『20世紀少年 ―最終章― ぼくらの旗』。大切なのは日常のなかのちょっとした勇気なのだ。

いやー、ハラハラしました。いろんな意味で・・・。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.32  『20世紀少年 ―最終章― ぼくらの旗』
          監督:堤幸彦  脚本:浦沢直樹  公開:2009年8月
      出演:唐沢寿明 豊川悦司 平愛梨 他
  
   

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■ストーリー■
“ともだち歴3年”の2019年、世界は世界大統領として君臨する“ともだち”に支配され、殺人ウイルスがまん延する東京は壁で分断。都民の行動は完全に制限されていた。そんな中、カンナ(平愛梨)は反政府組織として武装蜂起する一方、“血の大みそか”以降、行方がわからなくなっていたケンヂ(唐沢寿明)が突然現われる。(シネマトゥデイ)

■20世紀少年3部作の最終章。

公開直前にテレビでやった第1章、第2章が面白かったので、その熱が醒めないうちにと映画館に向かった次第。

けどね、ちょっと毛色が違うのでありました。

■1章、2章は、ケンヂたちが小学生のころの昭和60年代の回想を織り込みつつ現在世界で物語が進行していくという形をとる。

そのため、とてもリアルな感覚にあふれた映画となっていた。

2000年末の’血のおおみそか’で暴れまわった張りぼての巨大ロボットを筆頭に、’ともだち’のテロ行為は胡散臭さ故のリアリティがあって、オウム真理教の地下鉄サリン事件、9.11の同時多発テロから地続きの感覚を維持していた。

■ところがこの最終章では舞台が近未来になっていて急速にそのリアリティを失った印象が否めない。

特に空飛ぶ円盤と巨大ロボット。

そこには’現実’のかけらも存在しない。

確かに、1960年代から見た21世紀は、エアカーなんかが空を走りまわっていたりして、われわれの知る’つまらない’現在とはまったく異なった世界であり、作者はそこを描こうとしたのかもしれない。

けれども、なーんか入り込めない、ノリきれない。
   

■とはいえ、ドラマ自体はスリリングで役者も良くってそこはいい。

香川照之にしても、石橋蓮司にしても、黒木瞳にしても、脇を固める俳優陣がドラマに深みを与え、崩壊しかけたリアリティを取り戻すことに成功している。

■そしてラストの大団円へと物語はなだれ込んでいくワケなんだけれども、ここでまた引っかってしまうのだ。

満場の大観衆に囲まれて熱唱するケンヂ。

人類は救われた、ハッピー、ハッピー!!

けどそこでエンドロールが流れ始めたときは、ほんと、もうどうしようかと途惑ってしまった。

おいおい、これで終わりかよっ、何か忘れてやしませんか、ていう感じ・・・。

(以下につづく)

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

  

■■■              ■■■

■いやー、やられました。

エンドロールの後の展開、良かったなあ。

感動しました。

ケンヂがいう。

’ともだち’を生んだのは俺たちじゃない、俺なんだ!!

そこでケンヂは、ともだちランドのバーチャルアトラクションを使って過去に戻り、自分自身の過去、今回の悪夢を生む元凶となった出来事に決着をつけに行くのであります。

■小学生のときのエピソードもいいけれど、’ともだち’とケンヂが本当の友達になる、そこのシーンにグッときてしまった。

ここまでの悪夢の根本にケリをつける、これぞ完結編!!

本当の友達ができた’ともだち’は癒され、架空の悪夢は消え去った、というわけだ。

そこまでの話が壮大であっただけに、このちょっとした、当たり前の物語が効いてくる。

大切なのはちょっとした思いやり、素直さとそれを実行に移す勇気であって、それを再確認させてくれたこのラストシーンにこちらもすっかり癒されてしまったのであります。

  

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                           <2009.09.09 記>

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■ 20世紀少年(ビッグコミックス)全22巻+21世紀少年 上・下
作・浦沢直樹
■実は読んでいないんです。
大人買いするか、マンガ喫茶通いをするか、考え中・・・。

20th_century_boy
■【CD】 20th Century Boy: Ultimate Coll (Dig) T.REX

   

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■STAFF■
監督・脚本: 堤幸彦
プロデューサー: 飯沼伸之 / 甘木モリオ / 市山竜次
エグゼクティブプロデューサー: 奥田誠治
原作・脚本: 浦沢直樹
脚本: 長崎尚志
撮影: 唐沢悟
編集: 伊藤伸行
美術: 相馬直樹
音楽: 白井良明



■CAST■
ケンヂ(遠藤健児)    :唐沢寿明
オッチョ(落合長治)   :豊川悦司
ユキジ(瀬戸口雪路)   :常盤貴子
遠藤カンナ          :平愛梨
ヨシツネ(皆本剛)     :香川照之
マルオ(丸尾道浩)     :石塚英彦(ホンジャマカ)
ケロヨン(福田啓太郎)   :宮迫博之(雨上がり決死隊)
フクベエ(服部哲也)     :佐々木蔵之介
コンチ(今野裕一)     :山寺宏一
    
神様             :中村嘉葎雄
蝶野将平          :藤木直人
春波夫           :古田新太
ヤン坊・マー坊       :佐野史郎
漫画家・角田        :森山未來
小泉響子           :木南晴夏
仁谷神父          :六平直政
キリコ(遠藤貴理子)    :黒木瞳
敷島教授          :北村総一郎
  
万丈目嵐舟        :石橋蓮司
13番(田村マサオ)     :ARATA
高須             :小池栄子
ヤマさん          :光石研
地球防衛軍        :高嶋政伸、田村淳(ロンドンブーツ1号2号)
  
市原節子          :竹内都子
ジジババ          :研ナオコ
漫画家・金子       :手塚とおる
漫画家・氏木       :田鍋謙一郎
ビリー            :高橋幸宏(YMO)
大垣師範代        :武蔵
  
神木隆之介


・・・神木隆之介、相変わらずいい演技だったけど、大きくなったねぇ。

    
■過去記事■

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» 原作よりすっきりするエンディング、20世紀少年最終章 [オヤジの映画の見方]
20世紀少年最終章は、原作ではどうにもすっきりしないエンディングをよりわかりやすく、納得出来る形にして示してくれた。この作品で浦沢直樹は、いじめられた側が大人になってから世界中を巻き込んで復讐をするという、殺伐とした世界を映画作品を通じて表現したかったと思う。... [続きを読む]

受信: 2009年9月11日 (金) 16時11分

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