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2009年9月 7日 (月)

■【書評】『夜と霧』、ヴィクトール・E・フランクル 著。苦境の中で生きていく為に必要とされるものとは。

ナチスの強制収容所の話であるからには相当に厳しい内容であると覚悟していたのだけれども、その厳しさを静かに静かに語りかけてくる本である。

その静かさ故に、人間とは何か、というこの本のテーマが深くこころに染み渡ってくるのだ。

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■夜と霧 新版 
ヴィクトール・E・フランクル 著 池田 香代子 訳 
みすず書房 (2002/11/6)

■ユダヤ人強制収容所、アウシュヴィッツ及びその支所での体験を通して、過酷な、という表現を通り越した極限状態に放り込まれた人間が一体どうなってしまうのか。

本書はそれを精神科医の眼で綴った記録である。

■人間が人間として扱われない、その状況に慣れていくなかで、人間の感情は鈍磨、消失し、その内面は冷淡さと無関心に満たされる。

その過酷で理不尽な状況が人間をして否応無く、ある型にはめ込んでいく。

それが精神科医・フランクルの見立てだ。

■だが、

 
「わたしが恐れるのはただひとつ、

 わたしがわたしの苦悩に値しない人間になることだ」
 

というドストエフスキーの言葉を引用しつつ、彼はいう。

そんな状況でもなお、人間として踏みとどまり、己の尊厳を守り通した人が少ないながらにしても存在したのだ、と。

そして、

およそ’生きること’そのものに意味があるのであれば、苦しみにも意味があるはずだ。

苦しみや運命、死をも含めた’生きること’を意味あるものにする。

その可能性は、自分のありようががんじがらめに制限されるなかで、どのような覚悟をするかという、まさにその一点にかかっていたのだ、と。

■現在の我々を取り巻く閉塞感は、極限度はまったく異なるものの、本書で語られる状況に近い側面が確実にあると思う。

年間3万人を超す自殺者を出す社会。

それは、我々の社会が未来に対する希望を持ちにくくなっている、その現れであろう。

■ひとそれぞれに状況はきっと異なっていて、まとめて語ることが出来るものではないのだろうけれども、ただ言えることは、

その苦境の中で生きていくために必要とされるのは、決して希望を捨てない自分自身の意志、勇気なのだ、

絶望的状況においてもなお、それを自分の人生として背負う力なのだ、

それが叶わないとしても、かくありたいと願うこころなのだ、と思う。

  
■最終章。

結局、フランクルは収容所から生還を果たすのだが、唯一の心の支えとなっていた愛する家族はみな亡くなっていた。

夢にまで見た自由を手にしたのに、運命は、’乗り越えることがきわめて困難な体験’を彼に与える。

それでも、彼は生きていく。

精神科医としての使命感で自らを奮い立たせる。

  
その気丈さに、つい泣けてしまうのである。
 

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                          <2009.09.07 記>

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■夜と霧 新版 
■ヴィクトール・E・フランクル 著 池田 香代子 訳 
みすず書房 (2002/11/6) ■なお本書は、霜山 徳爾 訳、『夜と霧―ドイツ強制収容所の体験記録』(1956) の再訳であり、原著の1977年新版をもとにしたものだそうです。

  

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