■【ドキュメンタリー】『妖怪 水木しげるのゲゲゲ幸福論』、食って、笑って、クソして寝るのが幸せの根本なのだ。
水木しげるサンは人生の天才なのである。
●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
No.30 『妖怪 水木しげるのゲゲゲ幸福論』
― そりゃアンタ、
何か根本的に覆さんと
人類は幸せになりませんヨ ―
主演:水木しげる 朗読:和久井映見 放映:2006年3月
出演: 荒俣宏、呉智英、南伸坊、京極夏彦 他
■ 妖怪水木しげるのゲゲゲ幸福論
■ 2006年/日本/テレビマンユニオン・BS JAPAN/120分
■本作は2006年にBS JAPANで放映された水木サンの異色のドキュメンタリーであって、テレビ界の日本アカデミー賞ともいえる、ギャラクシー賞を受賞した作品である。
内容としては、水木サンの日常とニューギニア訪問、水木サンを良く知るひとたちによる座談会で構成されているのだけれど、本編1時間半、まったく飽きることのないうまい作り方をしている。
■タイトルの通り、テーマは「幸福」。
これがなかなか一筋縄ではいかない独特の幸福論で、観る者はその幸福菌に感染してとても幸せな気分に浸れるのである。
■幸福論、なんていう場合、生きる意味だとかなんだとか小難しい話に陥りがちなのだけれども、水木サンの場合は単純至極。
生きること、そのものなのである。
■食うことを楽しみ、面白いものや面白いひとに出くわしては楽しく笑い、銭をもらってはにんまりし、素晴らしくよいカタチのクソをして、こころゆくまで寝るのを楽しむ。
その行動とか発言は極めて自己肯定的であって、他のひとがどうだとかいうことは一切関係ない。
それでいてその天真爛漫さゆえに嫌味がなくて誰からも愛され、その幸福菌を周囲にばら撒き感染させていくのである。
■ニューギニアの戦地で生死のギリギリの場面に幾度も遭遇し、爆撃で左手を失い、戦後は紙芝居や貸しマンガで生計をたてようとするも全く売れず腐りかけのバナナで飢えをしのいだ。
その迫力。
それでいて「不幸」という文字は水木サンの背中には一切感じさせることはない。
自らが生き残る、ということが最重要課題であって、それさえあれば「幸せ」なのである。
■小難しいことは考えない。
そうしたとき、食うということ、寝るということ、それそのものが即ち幸せなのであって、ああ、本当にうらやましい生き方だなあ、と思う。
それもまた水木サンの才能なのだと思うのだけれど、水木さんの生き方を感じることでほんの少しだけおすそ分けを頂けるような気もする。
そういう意味で、繰り返し眺めてみたい作品である。
特に特典映像の座談会特別版は、生き方についての眼からウロコな内容であって、体内の幸せ菌が減ってきて心が疲れてしまったときの特効薬になるだろう。
<2009.08.07 記>
■ 妖怪水木しげるのゲゲゲ幸福論
■ 2006年/日本/テレビマンユニオン・BS JAPAN/120分
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