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2009年7月 1日 (水)

■【書評】『武装解除 ―紛争屋が見た世界―』 伊勢崎賢治 著。平和は正義を曲げてでも手に入れる価値のあるものなのだ。

日本人にもこんな人がいたのかと驚いた。

まだまだ日本人も捨てたものじゃないのである。

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■ 武装解除 -紛争屋が見た世界
伊勢崎賢治 著 講談社現代新書 (2004/12/18)

 
■著者の伊勢崎さんは東チモール、シエラレオネ、アフガニスタンといった地で活躍した紛争解決の専門家であり、現在、戦地から離れて大学の教壇に立っている人である。

こんな人に世界の現実を教授され、思考と議論の機会を与えられる学生は幸せ者である。

そして、その一部を垣間見ることができそうなところがこの本の魅力なのだ。

■紛争解決に向けた手順に、DDR(Disarmament,Demomilization,Reintegration)という活動がある。

・武装解除(各軍事勢力からの武器を回収)、

・動員解除(指揮者の解任、組織の解体)、

・社会再統合(市民生活に戻るための教育などの復員事業)

の3つの活動からなるもので、国家再建のための首長選挙・議員選挙を成功に導くには、法と秩序の回復と治安の保証が必須であり、DDRは避けて通れない重要な活動なのである。

■伊勢崎さんは東チモールでは国連から委任された県知事として平和維持軍を統制して治安の維持に当たり、シエラレオネでは国連PKOのもとDDRを統括する立場で現場を引っ張って内戦終結へと導き、その後、アフガニスタンのDDRを担当することになった日本政府の特別顧問として2004年3月までの1年間をアフガンで過ごした。

すごい人である。

こういう感心の仕方は落合信彦以来かもしれない。

■と、感心ばかりしているわけにはいかない。

上手い話ばかりではないのだ。

シエラレオネではDDRを成功させるために、自国民を大量に虐殺し、腕を切断するといった残虐な行為を繰り返してきた武装勢力に恩赦を与えざるを得なかった。

そんな身を切られるような思いをしてまでも、内戦状態を停止させ武装解除を進めることは重要なのである。

内戦の原因は貧困だ、などという人がいるが、著者はその欺瞞を批判する。

そういえば、先に読んだジャン・ジグレールの本でも貧困、飢餓の大きな要因のひとつとして内戦を上げていた。

ここでは内戦は結果ではなく原因なのである。

■こういったキレイゴトだけでは前に進んでいかない泥臭い武装解除活動を行ってきた伊勢崎さんが、本書の結びで語っている。  
 

 現在の日本国憲法の前文と第九条は、

 一句一文たりとも変えてはならない。

  
日本人は憲法に守られた受益者として、その意味を深くかみ締める義務がある、と思う。                             

                           <2009.06.30 記>

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■ 武装解除 -紛争屋が見た世界
伊勢崎賢治 著 講談社現代新書 (2004/12/18)

     

日本国憲法 前文(後半部分、抜粋)

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。(1946年11月3日公布)
  
   

    
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