■【映画評】『スター・トレック』。挑むこころ。
スター・トレックっていっても、シリーズの続編がどんどん出ていてまったくついていけてないもんだからあんまり興味が湧かなかったんだけど、え? カークとスポックの若き日の話なの?
要はエピソード・ゼロだってんだから、これは見逃せない。
●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
No.28 『スター・トレック』
原題: Ster Trek
監督: J・J・エイブラムス 公開:2009年5月
出演: クリス・パイン ザカリー・クイント 他
■と、勇んで劇場に飛び込んだわけだが、結論を言えば大正解!
スター・トレックの世界を存分に満喫できてとっても幸せな気分なのである。
■ストーリー■
テレビドラマや映画でおなじみの「スター・トレック」を再構築し、ジェームズ・T・カークの若き日を描くスペース・アドベンチャー。
ジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)が宇宙艦隊に入隊して3年。USSエンタープライズに乗ることに成功したカークだったが、船内のトラブルメーカーになってしまう。それが気に入らないスポック(ザカリー・クイント)は、カークを船から追い出そうとするが……。(シネマトゥデイ)
■’エピソード・ゼロ’とはいっても、スター・トレックを幼少の頃に見ていたようなオジサンだけに向けた内向きのマニアックな作品ではなく、予備知識がまったく無い人でも十二分に楽しめる作品になっている。
それは物語の軸となるスポックとカークのふたりの人物像の描きこみがシッカリ出来てるからこその芸当なのだ。
■バルカン人と地球人のハーフであることで冷静な表情の奥にアイデンティティの問題を抱えるスポック。
片や、勝ち目の無い絶望的状況のなかで自らを犠牲にして大勢の仲間の命を救った英雄を父に持ち、それを受け継いでか、型破りで常に限界を超えようとする性格に育ったジム・カーク。
スポックを静とするなら、カークは動で、それがスター・トレックの物語を面白くしているのだけれども、この作品ではエピソード・ゼロとして、その性格が形作られた背景が語られる。
うまい作りだ。
■もちろん主役のふたりだけでなく、船医のマッコイや、ウーラ、スコット(チャーリー)、スールー(カトウ)、チェコフといったおなじみのメンバーもそれぞれに見せ場が用意されていて、ファンはニッコリ。
特にロシア訛りのチェコフの一所懸命さが、とてもかわいい。
■物語のテーマは、絶望的状況に直面したとき、どのようにその状況と向き合うのか、というところにある。
スポックの論理でいけば、生き延びる可能性がゼロなものはゼロなのであって、あとはそれをどう受け止めるか、となるのだけれども、破天荒なカークはそこで諦めない。
一体カークは何回高いところから落ちそうになってぶら下がれば気が済むのか(笑)、という話なのだけれども、最後には必ずなんとかなるのである。
■ご都合主義というなかれ、
何しろ相手は想像を絶した未知の世界。
常識が通用する世界ではない。
そこで必要とされるのは’求めよされば開かれん’、という挑戦のこころであって、さらにその挑戦の先には新たな驚きの世界が展開する。
それがスター・トレックなのだ。
■監督はM:i:Ⅲ(監督、脚本)、クローバーフィールド(製作)のJ・J・エイブラムス。
迫力と美しさを兼ね備えた映像が見事。
それはスター・トレックとして絶対に外せないところなんだけど、それだけでなく、随所に思わずクスりとさせるユーモアが埋め込まれていて飽きさせない。
そのあたりも、しっかりした人物描写によって作り出された奥行きがあってこそなのであろう。
■さて、この航海でカーク筆頭としたスター・トレックのオリジナルメンバーがそろったわけだ。
もちろん、ここで終わらせるわけはないだろう。
しかもオリジナルから大きく’歪んだ’世界のなかで物語が進行していくことになるから、彼らの前途にはあらたな驚異が待ち構えているのである。
そんなことを考えながら迎えたエンドロール。
そこに流れるテレビシリーズのテーマ曲に否応なく胸が高鳴るのであった。
<2009.06.11 記>
[追記]
レナード・ニモイのバルカン式さよならのハンドサイン。つい懐かしくてスクリーンに向かって小さくやってしまいました(笑)。
この話のオチがとても好きなのだ。
■STAFF■
監督 : J・J・エイブラムス
製作 : J・J・エイブラムス
: デイモン・リンデロフ
脚本 : アレックス・カーツマン
ロベルト・オーチー
音楽 : マイケル・ジアッチーノ
撮影 : ダニエル・ミンデル
編集 : メリアン・ブランドン
メアリー・ジョー・マーキー
視覚効果 : ロジャー・ガイエット
■CAST■
ジェームズ・T・カーク (艦長) : クリス・パイン
スポック (副長) : ザカリー・クイント
レナード・ニモイ
レナード・マッコイ (船医) : カール・アーバン
ウフーラ (通信担当): ゾーイ・サルダナ
モンゴメリー・スコット (機関士、チャーリー) : サイモン・ペッグ
ヒカル・スールー (航海士、カトウ) : ジョン・チョー
パヴェル・チェコフ (航海士) : アントン・イェルチン
ネロ : エリック・バナ
クリストファー・パイク : ブルース・グリーンウッド
サレク : ベン・クロス
アマンダ・グレイソン : ウィノナ・ライダー
他
■過去記事■
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