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2009年5月 6日 (水)

■【書評】『闇の鶯』、諸星大二郎。単行本未収録作品を侮るべからずなのだ。

単行本未収録傑作選!!

と、帯に書いてある。

新刊を買ったはずなのに、あっ、これ読んだよなぁ。なんてことが多いので(特に妖怪ハンター系)、こうハッキリ謳ってもらえると実にありがたいのだ。

Photo_2 ■闇の鶯 (KCデラックス)

■収録されているのは5作品。

単行本未収録作品だからといって単行本に拾われることの無かったマニア向けの作品ばかりかというと、さにあらず。

「わけのわからないモノ」が異界との接点を越えてやってくる、諸星大二郎の’怪異もの’として十分に読み応えのある作品たちである。

  
■「それは時には少女となりて」

稗田礼二郎のフィールド・ノート(妖怪ハンター)外伝、「大島君と渚ちゃん」シリーズの最新(?)作。

「うつぼ舟の女」、「六福神」などでは中学生だった彼らはここではもう高校生になっている。

例によって海からやってくる「怪しいモノ」がいて、すっかり人のいい青年になった大島君が’それ’に取り付かれる話。

年頃のふたりの間のラブコメ的要素が押し出されていて面白い。

「うつぼ舟の女」のような怖さよりも「栞と紙魚子」ほどでは無いにしてもそれに近い味わいである。

そのあたりが結構気に入っている。

(月刊アフターヌーン、2004年9月号に掲載)

  
■「人魚の記憶」

これは怖い。

主人公はサイレンの音に対する恐怖症に悩まされている青年。

それが次第に悪化して、ついには生活していくことさえままならなくなってくる。

「サイレンの音」といったときに頭の中に浮かぶ印象があって、それは幼い頃に行方不明になった姉がどこかの洞窟らしきところで、人魚と水のなかで戯れている、そういうイメージなのである。

青年は自らを苦しめる恐怖症の根源を明らかにすべく、幼い頃に暮らした海辺の村へと向かうのであった。

というお話。

プロットについては、これ以上は書かない方がいいだろう。

衝撃のラストの迎え方は諸星大二郎の作品の中でも珍しい類のものだろう。

どこかラブクラフトのクトゥルー神話の読後感に似ている。

(2007年、ゲーム「SIREN2 MANIACS」解析本に掲載)

  
■「描き損じのある妖怪絵巻」

京極夏彦の特集本に掲載された作品。

むりやり京極堂の世界にひっかけようとした感が強く、違和感がある。

けれどその展開の無理やりさを、そのまま突き進んでフィニッシュしてしまう「絵」の力があって、それこそが諸星大二郎の魅力なのだと思う。

(2007年 「妖怪変化 京極堂トリビュート」に掲載)

  
■「闇の鶯」

表題作。

就職試験に失敗した青年のもとに受けてもいない土地開発会社からの合格通知が届く。

新人研修もそこそこに、実家からそう遠くない山間の土地でのゴルフ場開発の準備室に派遣されることになる。

あまり大した仕事も無く、ひまをもてあそばして、かつて親しんだ山の中を散策するうちに迂闊にも道に迷ってしまい、謎めいた女がひとりで暮らす一軒家にたどりつく。

これは1989年の作品であり、当時の’最先端’であるパソコンを小道具として使っているために流石に古さが目立ってしまう。

が、「会社の幽霊」だとか、後年の長編「魔障ヶ岳」だとかのイメージがかぶさってきて十分に楽しめる。

「鶯」という名の’山の神’が魅力的であり、その彼女に「決して開けてはいけない」といわれた襖の向こうのイメージが豊穣で、寺山修司の映画を思い出した(『田園に死す』だったかな)。

(1989年 「コミックバーガー」誌に連載)

 
■「涸れ川」

ひたすら砂漠を行く男。

彼が誰なのか、なぜ砂漠を歩んでいくのか説明はまるでない。

ただ、乾きに苦しみながら前へ、前へと歩を進める。

砂漠に生える植物のそばにもしかしたら水が湧き出すかもしれない。

そう考えて地面を掘る男がみつけたのは、湧き出す水ではなく、砂の中に埋まって裸で眠る女であった。

本作は他の4編とは異なり、「日常に侵入してくる’怪しいモノ’」の話ではない。

「カオカオ様」のような異界譚に近い。

が、ラストの味わいはこの本を締めくくる一編として意外に収まりがいい。

(スピリッツ増刊’IKKI’2001年2月28日号掲載)

  

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                           <2009.05.06 記>

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■闇の鶯 (KCデラックス) 諸星 大二郎 著 講談社 (2009/4/23)

   
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