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2009年5月 9日 (土)

■【映画】『ハプニング』、M・ナイト・シャマラン監督。ホラー的状況を乗り越える科学するこころ。

好みのハッキリ別れそうな映画だけれどM・ナイト・シャマラン好きの期待は裏切らない作品である。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.24  『ハプニング
           原題: The Happening
          監督: M・ナイト・シャマラン 公開:2008年6月
       出演:  マーク・ウォールバーグ ズーイー・デシャネル 他

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■ストーリー■
ある日、ニューヨークのセントラルパークで人々が突然時が止まったかのように立ちつくし、唐突に自らの命を絶つという事態が発生。また、とある工事現場では作業員たちが次々とビルの屋上から身投げする不可解な惨事が起きていた。

この異常現象はアメリカ南東部で急速な拡がりをみせ、多数の犠牲者を生んでいく。この大事件の報せを受けたフィラデルフィアの高校教師エリオットらは、どこか安全な場所へ避難しようとするのだが…。(Amazonより引用、編集)
   

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■この状況に巻き込まれる前のシーン。

「今、ミツバチの群れが突然姿を消すという現象がアメリカのあちこちで発生している。どうしてだと思う?」と、エリオットが生徒たちに質問する。

ここに、この映画の核心がある。

■何が起きたか分からないまま、まわりの人間たちが突然動きを止めたかと思うとおもむろに自殺するという主人公たちが巻き込まれる「現象」。

その着想は現実に起きているミツバチの大量失踪(蜂群崩壊症候群)からヒントを得たのだろう、というだけではない。

冷静に自分の頭で考え、実際に試してみて検証する。

実は、この「科学するこころ」こそがこの映画のテーマなのである。

■絶望的な状況に追い込まれていくなかで、なんとかこの「現象」の特徴をつかみ、分析し、生き残る道を探る。

何故? どうして? どこが違う?

M・ナイト・シャマランは、ゾンビ映画を思わせる状況に対抗する唯一の手段をその「科学するこころ」に求めたのである。


■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■主人公のエリオットとその妻、アルマ。そしてエリオットの同僚の数学教師ジュリアンとその娘、ジェス。この4人で逃げることになるのだが、後から必ずくると言っていたジュリアンの妻と携帯電話がつながらなくなってしまう。

彼女のいるはずの街は既に「現象」が始まっているのだが、それでもジュリアンは娘をエリオットたちに託して妻を捜しに戻ってしまう。

■娘を友人に託して死地に赴く。

夫婦の絆はもちろんあるのだけれど、危機に巻き込まれている状況で娘から離れてしまうというのは、われわれ日本人の現代のメンタリティでは少し理解に苦しむ行動だ。

ふーん、欧米人はそうなんだ。

■と、話の流れに少し引っかかりを持ちつつも、死の街へ向かうジュリアンがいい。

その街に向かう一家のクルマに便乗させてもらうのだけれども、街に近づくと死体がごろごろと目に付き始める。

クルマの窓を閉じて空気を密閉してさらに中心部に向かうのだが、「見えない恐怖」はそれでも車内に満ちてくる。

■そこで、ジュリアンはその家族の娘に数学のクイズを出す。一生懸命何かを考えていれば少しでも現実から離れていることが出来る。

そう言ってクイズを出すジュリアンの視線の先には走行風でバタバタと揺れるキャンバストップの小さな裂け目が映っている。

ああ、きっとダメなんだな。

そう分かっていながら皆の恐怖の気持ちを少しでも逸らそうとするジュリアンの行動にグッとくるのである。

その最期を遠景でとらえる見せ方も抑制が効いていて効果的だ。

ゾンビ映画のフォーマットを使いながらも、どこまでもナイト・シャマランの映画なのである。

■一方のエリオットたちは、すぐ背後まで迫っている’それ’にパニックを起こしそうな心を落ち着かせて、状況を分析し、最善の道を選んでギリギリのところで生き延びる。

このあたりが一番の盛り上がりで、目で見ることの出来ない’それ’を風にそよぐ植物のざわめきで表現し、もうスグそこに’いる’というのが嫌でも分かる。

その恐怖の中で人間の中に生まれる’狂気’もまた脅威であり、見えない恐怖の単調さを飽きさせない効果をうまく出している。

■ああ、もうダメ、ここまでだ。

というところで’それ’は急速に消えていく。

ご都合主義という無かれ。

唐突に消えていく不思議もまた、ワケのわからない’それ’の重要な属性なのである。

■さて、あの現象はいったい何だったのであろうか。

モデルとなったミツバチの失踪の原因は未だハッキリとは分かっていない。

栄養不足からくるストレス、ダニなどの寄生生物からの病原体の感染、農薬などの化学物質、遺伝子組み換え作物の影響、最近’オールマイティ’な地球温暖化(苦笑)。

さまざまな説が出されているが、’何かの変化’が起きていて、それはとても小さな変化なのだけれども、それが増幅してミツバチの失踪という現象につながっている、ということなのだろう。

■その小さな、しかし致命的な’変化’が人間によって生み出されたものであるという予測は「何故、今なのか?」と考えたとき最ももっともらしい考え方である。

それが植物を刺激して一種の神経毒を発生し’思考回路、意志’をマヒさせ、自死に至らせる。と、映画のなかでは示唆される。

植物に人間を懲らしめてやろうという意志があるとは思わないが、仕組みとしては無くは無い。

■ハイチのヴードゥー教に伝わる’ゾンビ・パウダー’という神経毒は、ターゲットにされた人間の脳の機能の一部をマヒさせて’意志’を奪い、奴隷のように働かせる効果をもつといわれる。

この映画に出てくる’毒’も、積極的に自殺をさせる、というよりは自殺を押しとどめている「回路」があたまの中にあって、それが破壊させる、というイメージなのだろう。

■底流に人間文明に対する批判的メッセージがあるのだけれども、淡々と描かれる現象の方にしっかりとした軸足がある。

メッセージが前面に出しゃばらずに鬱陶しくないところがいい。

映画はメッセージの媒体ではなくて、直接カラダに侵入してくる体験であってこそ、のものなのだ。             

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                           <2009.05.09 記>

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■監督:M・ナイト・シャマラン (2008年公開)
   

■STAFF■
監督:M・ナイト・シャマラン
脚本:M・ナイト・シャマラン
製作:M・ナイト・シャマラン

撮影:タク・フジモト
美術:ジェニーン・オッペオール

編集:コンラッド・バフ
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード

 
■CAST■
マーク・ウォールバーグ :エリオット
ズーイー・デシャネル  :アルマ
ジョン・レグイザモ    :ジュリアン
アシュリー・サンチェス :ジェス
M・ナイト・シャマラン  :電車の乗客

  
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受信: 2009年5月10日 (日) 21時21分

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