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2009年5月 1日 (金)

■【書評】 第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい。実践の愚直な繰り返しが直観力を鍛えるのだ。

「パッと見の印象って、意外に正しいよね」っていう感覚は誰にでもあると思うけれど、その感覚について深く深く掘り下げ、豊富な事例で説得力を獲得した非常に興味深い本なのである。

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■『 第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい 』
マルコム・グラッドウェル 著 沢田博 阿部尚美 訳

■原題は

 blink  The Power of Thinking Without Thinking

である。

’blink’とは、無意識のまばたき、とでも訳すのだろうか。

要するにパッと見で無意識に判断する、そういう能力を我々は持っていて、本書はその不思議な能力である「無意識的直感=≪第1感≫」についてとことん解明してやろう、という試みだ。

■切り口は大きく3つある。

①理屈では説明が難しい「無意識的直感」の驚くべき能力。

②その「無意識的直感」を曇らせるものがある。

③「無意識的直感」は養うことも、制御することも出来る。

「第1感」の素晴らしさを褒め称えてそこで終わりにしないところが重要ななポイントなのだ。

■プロの鑑定士が直感的に’何かがおかしい’と違和感を感じたとき、それが本物だと保証する鑑定書がついていようがどうしようが、おかしいものはおかしくて、実際にそれは贋作だったりするのである。

そこで彼に、なぜ分かったのか、どこがおかしかったのか、と問うたとしても答えることは難しい。

同じようなことは、選手がボールを投げ上げた瞬間に「あ、ダブルフォルトだ!」と分かってしまうテニスコーチにも言えることだし、若いカップルの会話をおさめた短い映像から15年後までに二人が離婚するかどうかを90%以上の確率で判定してしまう心理学者にも言えることだ。

■ところが、それではまわりは納得しない。

だから、その説明を’後から’つけるのだ。

「何となく」という曖昧な判断が「主」で、「こういう理屈だ」という説明が「従」だという面白い話である、

と同時にさもありなんと私の「直感」が告げている。

本文中にある

 説明できないと話をでっち上げる

というフレーズもかなりの説得力でにじり寄ってくるのである。

■イラク侵攻に向けた大規模な机上演習の話もまた振るっている。

あらゆる情報を分析して最適な戦略を採用する米軍上陸部隊。それに対してベトナム戦争の泥沼の中で周囲の絶大な信頼を得た名物司令官がいて、彼が上陸作戦を阻止する’ならず者’側を指揮、各場面での瞬時の判断で「米軍」の連中の鼻をあかすのである。

■下手の考え休むに似たり。

情報が増えれば増えるほど複雑な状況はさらに複雑な解釈を呼び、待ったなしの意思決定が必要とされる状況においては最適解を導き出すどころか現場は混乱するばかり。

足りない情報はないかと探し回り、結局その情報に振り回される日常を送る身には極めて耳が痛い話である。

要は、深い経験に裏打ちされた’暗黙知’の力を信じよということだろう。

■だが、論理よりも本質を突くその素晴らしい「直感力」も、実は容易に周囲の影響を受けてしまう頼りない面を持つというところが面白い。

どんなに良心的で公平なこころを持った人でも、「黒人」ということばと「暴力」ということばを無意識的に関連付けてしまう。

それは本人が選び取った判断ではなくて、テレビや映画やそういった彼をとりまく周辺環境によって無意識に刷り込まれてしまっているものなのだ。

■著者の調査によると、アメリカ人男性の身長の平均が175cmであるのに対して、アメリカの大手企業のCEOの平均身長は182cm。さらには188cm以上の身長の人の割合は全体の3.9%に対してCEOでは3分の1近い割合なのだそうだ。

何をかいわんや、である。

■それじゃダメじゃん、というのが早合点。

社会を覆う「文脈」による偏向も、事前の無意識への印象付けによる偏りも、訓練によって打開可能だと著者は解く。

それは「実際」を体験する。

それを愚直に繰り返すことにある。

■世界中を電子化し尽してしまおう。

というGoogleの野望に代表されるように、端末がネットにつながってさえいれば大抵の情報は手に入る。

そういう空気のなかで我々は生きている。

だが、それは自らの直観力をスポイルし、背の高いCEOを信頼してしまう思考停止人間を増殖させてしまう危険を大いに孕んでいるのだと思う。

■本書の終わりの方で強いストレスで直観力を喪失してしまったことで引き起こされた悲劇的事件について語られているのだが、それも「実際」に準じた体験を繰り返し訓練することで克服し、回避可能なことなのだ。

こんなブログを書き散らして頭でっかちに生きている者にとっては極めて大切なことが埋め込まれている本であり、

Practice ! Practice !

と呪文のように唱えながら実践的に生きていこうという十何回目の決意を胸に、本を閉じるのであった。
   

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                         <2009.04.30 記>

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■『 第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい 』
マルコム・グラッドウェル 著 沢田博 阿部尚美 訳 光文社 (2006/2/23)

   
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受信: 2009年5月 1日 (金) 20時46分

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