■NHKスペシャル 「ヤノマミ、奥アマゾン 原初の森に生きる」。ドキュメンタリー番組は田中泯のナレーションで「作品」となる。
アマゾンの最深部に、1万年以上昔からの狩猟採集生活を守ってきた部族がある、それがヤノマミである。
■NHKスペシャル 「ヤノマミ、奥アマゾン 原初の森に生きる」 2009.04.13放送 Nスペ公式HPより
■ブラジル政府や部族との10年にわたる交渉の結果、テレビクルーが部族のなかに入って合計150日もの共同生活、取材が可能になった。
つまりはテレビ映像としては初。
さらに言えば、狩猟採集生活を送っていた1万年以上前の我々がどんな生活をしていたのかを推察する上で、非常に参考になる調査なのである。
■まず驚くのは彼らの容貌が日本人と近いな、ということだ。
エスキモー、インディアン、そして南米奥地で生きてきた彼らヤノマミ。
その分布は、人類が3万年前以降にベーリング海を渡り、1万年頃には南米最南端に到達するというカタチで展開した。
そういう人類史的な展開を考えたとき、我々に似たヤノマミたちの容貌は、なにやら分からない懐かしい気持ちを胸に浮かび上がらせるのである。
■そんなノンキなことを考えていると、
調査隊が初めて部落に入ったとき、屈強な体躯のヤノマミの男が
「ナプなら殺すか。」(※)
と尋常じゃないことを口走ったその目つきはとても冗談には思えず、背筋に冷たいものが走った。
オレたちや兄弟みたいなもんじゃん、
というのは我々の勝手な思い込みなのであって、ヤノマミにとってはただの【部外者】に過ぎないのだ。
※ナプ: ヤノマミ[人間]と同属の人間[ヤノマミ]以下の存在、我々。
■そんな部外者である調査隊も、ヤノマミの言葉を少しは使えるようになり、狩りに同行させてもらったりするなかで、特に好奇心旺盛な子供たちを中心に、仲間として受け入れられつつあるように感じた。
けれど我々はその直後に、これはどうか、という場面に出くわすことになる。
子殺しである。
■この社会では、生まれたばかりの赤ん坊はまだ人間ではない。
森影に潜む精霊たちと変わらぬ存在なのである。
まだへその緒もついた生まれたままの状態で大地に寝かされた赤ん坊は、母親の決断を待つ。
その赤子を人間として育てるのか、精霊として森に返すのか。
■育てるに決まっているだろう、というのは現代の豊かな世の中に生きる我々の考えであって、原始の時代を生きるヤノマミの人たちにとって、食い扶持を増やすのか、増やしてやっていけるのかは切実な問題なのである。
一見、残酷に思えるのは、それを判断するのを親でもなく集落の指導者でもなく、その赤ん坊の母親であるということ。
長い年月をかけてそのルールにたどり着いたのであろうが、まだ人間ではない、と思ってはみるものの10ヶ月のあいだ自分のおなかの中で成長してきた我が子が愛しく思えぬわけはない。
けれどそのあまりにも若い母親は我が子を「森に返す」ことを選択する。
■人間として受け入れられなかった赤ん坊はアリ塚に置かれ、シロアリたちによって食われ、もとの自然へと返っていく。
だがそれをそのままにしておかず、食われたあとにそのアリ塚ごと焼き払うというところにヤノマミの母親のどうしようもない切なさが胸を打ち、漂う。
■ヤノマミは自然を食い、自然に食われる。
番組のさいごに流れる田中泯のナレーションが重く響くのであるが、人間も自然の一部だなんていう単純さを超えて深い重いものが後を引く、そういう作品であった。
<2009.04.16 記>
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■ アマゾン源流生活 高野 潤 著 平凡社 (2006/1/12)
■アマゾンに取り付かれた男のノンフィクションなんだけれども、アマゾン源流域の情景がリアルに浮かぶ。この本では虫と蛇に往生したらしいんだけど、この番組の取材班は大丈夫だったんでしょうか。
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