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2009年3月 8日 (日)

■意識と水と複雑系。『爆笑問題のニッポンの教養』 脳神経学、中田力。

今回のテーマは、脳神経学。

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■ 爆問学問『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE064:「こころは水でつくられる!?」 2009.3.03放送
新潟大学教授 脳神経学 中田力(なかだつとむ)。

■「こころ」とか「意識」とかを解明した先生だなんていうもんだから、そりゃもうびっくりして引き込まれたわけである。

理解できたことをまとめると、

●「意識」や「こころ」は大脳構造によって作られるもので、哺乳類のネズミにはあるがサカナには無い。

●人間を人間たらしめているのは前頭葉によるものであり、それによって自らが体験していない情報をも処理する(想像する)ことが出来るようになった。

●「意識」とはテレビの受像機のようなものであり、ボーっとしている(チャンネルを合わせない)時にはランダムな「砂の嵐」のような状態で、何かに意識を向けると(チャンネルを合わせると)意味のある「像」があらわれる。

といったところで、

まあそうかな、とすんなり受け入れられる内容である。

■けれども、中田先生の中田先生たる所以は「水分子」にあるようなのだけれど、それについては番組の内容を見ていても、どうもぼんやりしてハッキリしない。

意識はニューロンのネットワークによって発生するのではなく、水分子が大きな役割を果たしていて、その駆動力は熱エネルギーである。

って、なんのこっちゃ分からない。

■で、少しだけ調べてみた。

中田先生のオリジナリティは、ノーベル賞化学者で、高校のときに習った「電気陰性度」を考え出したライナス・ポーリング博士の全身麻酔に関する論文につきあたったことで生まれたもののようである。

■実は全身麻酔が効く仕組みは未だに解明されていないのだそうで、不活性ガスである(要するに化学反応しにくい)キセノンも麻酔作用をもっているらしいから、何となくその「分からなさ具合」が想像できる。

中田先生が出合ったそのポーリング博士の論文は、麻酔物質のまわりには水分子のかたまりができやすく、その仕組みによって意識が喪失する、というものであった。(キセノンは電気陰性度、つまり電子を引き付ける強さが比較的大きく、ナルホドな、というわけである。)

■麻酔物質によって水分子が整然と並ぶことで消失する「意識」。

中田先生はそのイメージから、意識とは水分子がつくる「渦」によって成り立っているのだ、という結論に至ったようだ。

■先生の最近の著作、「脳の中の水分子」のアマゾンの書評を見てみると、ちょっと眉唾じゃないのっていう評価があるのだけれど、むしろ、そのことが「本物」らしさを醸し出している。

細分化されて石アタマになってしまった専門家にすんなり受け入れられるものであるならば、「意識」なんてとっくに解明されているだろう。

何しろ、誰もが疑問をもつ問題なのだ。

■社会とか、経済だとか、気候だとか、生命だとか、

今までのニュートン的アプローチでは「解析」できない問題があって、いろいろな分野の最高の知恵があつまって、そういった問題に取り組もうと20世紀末に生まれた「複雑系」なる学問がある。

多少の誤解は覚悟で簡単にいうと、それら「複雑系」のシステムは、今までの還元主義的科学の視点で説明できる仕組みではなく、個々の小さな単位(人間、大気中の分子、いろいろな有機物)が多様に組み合わさって影響しあうことで生まれ、維持される系であって、完全な無秩序(カオス)と秩序(ニュートン力学で説明できる世界)の狭間にゆらぐものなのだ。

■うーん、簡単じゃないな。

それは鳴門の渦潮のようなもので、確かに存在するのだけれど、「これ!」とつかみだすことが出来ないもの、といえばいいだろうか。

■要するに、水分子だとか、熱だとか、渦だとか、中田先生の意識の理論の周辺にあるキーワードがとても「複雑系」的で、意識、というつかみどころの無いものを捉えるのには絶好のアプローチなのではなかろうか、と思うのである。

まあ、ともかく読んでみようと思う。

面白そうな本と出会えて、番組に感謝なのだ。

                        <2009.03.08 記>

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■脳のなかの水分子―意識が創られるとき
中田 力 著 紀伊國屋書店 (2006/08)

■脳の方程式 ぷらす・あるふぁ 
中田 力 著 紀伊國屋書店 (2002/09)
■「渦理論(Vortex Theory)」を語るこっちが本丸なのかも。
  

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