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2009年3月

2009年3月31日 (火)

■【書評】未来歳時記・バイオの黙示録 諸星大二郎。これぞ諸星ワールドなのだ。

「バイオ」なんて安っぽいタイトルと、ワケのわからないこの表紙。

本屋でこの漫画を買う人って、たぶん諸星大二郎フリークだけなんだろうな。何か見た目で損してるよな・・・、面白いのに。

なぁ、みんな!食わず嫌いはイケないよ!

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■未来歳時記・バイオの黙示録 諸星大二郎 著

■11の短編によって構築される悪夢的未来の世界感。

コメディあり、ハードボイルドあり、ホラーありの独立した作品たちが次第につながっていって、この世界の本当の姿が見えてくる、その圧倒的な構成力に思わずうなる。

初期の傑作短編「生物都市」、’おらといっしょに、ぱらいそさ、いくだ!!’の妖怪ハンター「生命の木」。

未来歳時記・バイオの黙示録は、そういった諸星大二郎お得意の奇妙に捻じ曲がったユートピア論であり、久しぶりに作家の本領を味わった。

■諸星大二郎を読んだぞー!!という満足感なのだ。

その点、最近発表されている作品の中でもピカイチだろう。

ファンならば絶対読むべし、だし、不可思議な世界に迷い込むのが好きな人にも是非ともお薦めしたいマンガなのである。
 

■■■■■■以下、少しネタバレあり■■■■■■

■とさかのついたアタマがあって、コッコッコッなんて鳴きながら隣に植わっているレタスを食い荒らしてしまうチキン風味の「キャベツ」。

美しい女の艶かしい姿で若い農夫を虜にしてしまう「雑草」。

オバサン口調でかしましく人間の言葉でおしゃべりをする養鶏場の「ニワトリ」たち。

■遺伝子操作の技術の行き過ぎが、ニワトリなのかキャベツなのか、雑草なのかヒトなのか、その境界があやふやになってしまっていて、それでも「日常」は、あくまでもこれはキャベツ、美しい女の姿をしていてもこれは雑草、というふうに黒々と明確な境界線を引き、何事もない日々が流れていくかに見える。

だが、読みすすめるうちに、その背景に戦争があったこと。その戦争ではバイオの技術が投入され、それによって世界全体が汚染されていることが明らかになっていく。

■最後の一篇のタイトルは、「風が吹くとき」。

レーガンとブレジネフの時代。

核戦争が起きればお互いの報復攻撃で世界は滅ぶ、そういう危機が目の前の現実として真剣に議論されていた時代があった。

「風が吹くとき(When the Wind Blows)」は、その冷戦のさなかイギリスで出版された本で、後にアニメーション化され、独特の絵本のような優しいタッチで絶望を描き上げ、世界的に有名になった作品である。

■あれから25年くらい経つうちに強固であった冷戦構造は崩れ去り、全面核戦争の恐怖は薄らいでしまった。

ローカルにはまだその危機はあるのだけれど地球全体が危ういという事態はどうやら無くなってしまったようだ。

それに代わる「恐怖」は今のところ地球温暖化なワケだが、いや、それよりも恐ろしい破滅が我々を待ち受けているのかもしれない。

その破滅的な未来のヴィジョンを描いてみせるのが諸星版’風が吹くとき’、「バイオの黙示録」なのである。

■遺伝子操作の恐ろしさは、対象が一体何者なのか、さらに言えば自分自身が何者なのかが分からなくなる原初的な恐怖である。(「シンジュク埠頭」のラヴクラフト的恐怖を見よ!!)

そんな大袈裟な、という見方はあるし、今のところ恐れるほどではないのも事実だろう。

■けれど、ひとつの生命に別の生きものの特徴を組み込むということが一度行われはじめたならば、

「ひとつの系の中では、全体は常に無秩序に向かっていく」

という熱力学第二法則(エントロピー増大の原理)に従って、個々の生命の遺伝子が混ざり合い、いったいそれが何かが分からなくなっていく、というのも方向性としては道理である。

■その混沌がどういうカタチで現れてくるのか、我々凡夫には想像を絶する世界なのだが、日常の薄皮一枚はさんだ向こうに広がる異界があって、その奇妙な世界を日常の延長線上に描かせたら天下に比類するもの無し、なのが諸星大二郎であって、もちろんその期待を裏切られることは無い。

そして、「風」が吹いたあとに、そのままの姿でひとり残ったアンドロイドのサトル君をもってくるラストシーン。この後味がまた格別なのである。

いやー、諸星大二郎って本当に素晴らしいですね!

   

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                          <2009.03.31 記>

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■未来歳時記・バイオの黙示録
■諸星大二郎 著 集英社 (2008/7/18)
 

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■風が吹くとき
■レイモンド ブリッグズ 著 さくまゆみこ 訳 あすなろ書房 (1998/09)
(英国初版:1982年)
   

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■ ユリイカ 2009年3月号 特集=諸星大二郎
■この年になってユリイカを買うとは思わなかった(笑)。
「諸星は’AKIRA’の大友克洋と双璧をなす漫画界の雄である」、というとビックリする若い人もいるだろう。
あやふやな線によって漂うその画風は大友克洋のカッチリと隅々まで描き込む画風とは対極で、だからこそ描ける作品がある。唯一無二、それが諸星大二郎の魅力なのである。
本書は諸星を愛してやまない作家や評論家による諸星論がうなっていて、いちいちヒザを打ちながらうんうんとうなづいてしまう。それがまた愉しい。
その上、デビュー時の幻の短編も掲載されていて、
マニア垂涎の一冊なのである。
    

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2009年3月30日 (月)

■地味に生きる。

極めて地味でささやかではあっても、幸せ、というものはあるし、

むしろその方が、味のある豊かな生き方だったりするのだと思う。

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■スズメノカタビラ(雀の帷子) イネ科イチゴツナギ属 

花期:3月から11月

よく見かける雑草なのだけれども、花はちゃんと咲く。

’スズメ’は小さいことをあらわし、カタビラは裏地のない単衣(ひとえ)の着物のこと。

米粒のように小さく、平べったい実を着物にたとえる。

実に風流だ。

   

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■ヤエムグラ(八重葎)アカネ科ヤエムグラ属 

花期:5月から7月 花径:1~2mm程度 

道端の至るところで群生していて、どんな花をつけるのかなと思っていたのだけれど、よく見たら既に花は咲いていたのね、と驚いた。

ちいさな薄緑色の可愛らしい花である。

葉には小さなとげがあり、互いに寄り合い、他の植物に寄りかかったりして立ち上がる。

茎を中心に6~8枚の葉が放射状に取り巻くところから「八重」、生い茂るさまが「葎(むぐら)」。

■八重、といっても本物の葉はこのうち2枚で、あとは託葉といわれる小葉片なのだそうだ。

うーむ、ほんものは誰だ?!って土居まさるじゃないんだから。

(といっても今の若者には通じないだろうが・・・。)

因みにヤエムグラの実にもトゲがあり、いわゆる引っ付き虫になるらしい。

  

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■ヒメウズ(姫烏頭) キンポウゲ科オダマキ属 

花期:3月から5月 花弁の長さ約5mm

和名のウズは鳥帽(トリカブト)のことであり小さなトリカブトの意味。

地味だけれども雰囲気のある花である。

天気が悪かったからか花が開いていなかったのが残念。

   

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■ハキダメギク(掃溜菊)キク科コゴメギク属 

花期:6月から11月(実際はほぼ周年?) 花径:約5mm

熱帯アメリカ原産の帰化植物。

ゴミの集まるようなところ(掃き溜め)に生えることが多いので「掃溜菊」と名付けられた。

可憐な乙女に、こんなひどい名前を付けたのは「日本の植物学の父」、牧野富太郎博士なのだそうだ。

この花が咲いていたのは街路樹の陰で、「掃溜」は言い過ぎにしても確かに目立たない草で、あまり自己主張はしない方じゃないかと思われる。

最近は死語に近くなってしまった’おくゆかしい’という言葉が似合う花である。
  

  
■■■ 花の写真 ■■■  
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2009年3月29日 (日)

■お早うの朝。

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さわやかな朝です、お早うございます。

                            <2009.03.29 記>

 
■■■ 空の写真 ■■■  
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2009年3月28日 (土)

■スミレの見分けは難しい。

道草を覚えて2年くらい。

やっとスミレに目が留まるようになった。

去年はまったく気が付かなかったんだけど、ひとつ見つけたら、急に見えるようになってきた。

これが「パターン認識」ってやつだろうか。

けれどもそれより問題なのは、種類の特定なのであった・・・。

   

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■コスミレ(小菫) 【花期】3~5月 【分布】本州・四国・九州 【環境】人里,山地,野原

■交通量の多い通りの街路樹の陰に咲いていた。

きっちり’顔’を撮影したかったんだけど、街路樹の幹との距離が近すぎてカメラが入らなかったのが残念。

花の色が青紫がかっているので、スミレ、ノジスミレ、ヒメスミレではなく、コスミレと判断。

でも、葉の裏が紫がかっていないんだよね。

ま、とりあえずコスミレということにしよう。

   

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■タチツボスミレ(立坪菫) 【花期】3~6月 【分布】日本全土 【環境】人里,山地,森林,野原

■スーパーのまわりの植え込みの影で発見。

ハート型の葉と、紫色の距(きょ:花のうしろのでっぱり)からタチツボスミレだと思う。

日本にはスミレの種類が60種くらいあるらしいのだけれども、このタチツボスミレが一番メジャーなのだそうで、きっとそうに違いない。

植え込みの下にひっそり咲いている感じがなんとも可愛らしい。

   

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■オオタチツボスミレ(大立坪菫) 【花期】4~6月 【分布】北海道・本州・四国・九州 【環境】人里,山地,森林,野原,湿地

■道路脇の比較的日当たりのいい土手に結構まとまって咲いていた。

タチツボスミレに対して少し大柄で、葉の葉脈が凹んでいるように見えたので、まあオオタチツボスミレではないか、と・・・。

距の色が完全な白ではなく、気持ち紫がかっていたのであまり自信なし。

■スミレをまじまじと見るのって初めてなもんでこんなに種類があって、しかも素人目にはおんなじに見えてしまうくらい微妙な差異で分類されているのに驚いた。

どうやらスミレの世界ってかなり奥深いもののようです・・・。

                           <2009.03.28 記>

【補記】:スミレに詳しい方で、もし間違いに気付かれたら(たぶんあるんだろうけど、苦;)コメントでご指摘いただけるとありがたいです。

  
■■■ 花の写真 ■■■  
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2009年3月25日 (水)

■WBC決勝、やっぱりイチローは凄いや!!

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■ここぞ、というところで結果を出す。

職人だなあと思う。

今回は調子が上がらず、インタビューを受けるときも、憔悴しきった表情に目だけがギラギラしていて、ああ、眠れてないんだな、と同情していた。

けど、イチローに対して同情なんて、とんでもなく失礼なハナシであることを改めて思い知らされた。

■何しろ9回の裏に同点に追いつかれた延長10回の表、2死1、3塁で打順がまわってくる、しかもそこでシッカリと結果を出すなんてあまりにも劇的過ぎる。

やはり勝負どころにはドラマの神様が光臨してくるものなのか。

■韓国が盗塁を許して2死2塁3塁。

ここは歩かされても仕方あるまい、だし、ベンチのサインも敬遠だったらしい。

けれど林昌勇(イム・チャンヨン)は男だよ。

明らかに調子を取り戻してきている世界のイチローに対して真っ向からの勝負を挑んだ。

こんな最高の場面で計算高く逃げを打つなんて、申し訳ないが私にはそんな器用なまねは出来ません。

なんて、高倉健的な渋いつぶやきが聞こえてきそうだ。

■ファール、ファール、ファール。

その一球が来るまで、イチローはひたすらに粘り続ける。

ふー、心臓がバクバクするぜ。

と、イチローのバットが一閃、強い回転を伴ったライナーがあたかもスローモーションのように林昌勇の右肩の上を抜けていく。

  
・・・カッコいい、

イチロー、カッコ良すぎだぜ!

                           <2009.03.25 記>

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2009年3月24日 (火)

■ドラマ 黒部の太陽 後編。絶対にやり遂げる人間の強い意志と生きる力、勇気。

前後編2時間半の〆て5時間の大作、質のいい邦画を観終えたような気分である。

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■このタイトル画も昭和30年代の映画の看板の雰囲気。

■昭和31年、高度経済成長を目指すなか、電力需要は増大し発電能力は限界に達しようとしていた。

その状況を打開する為に関西電力は黒部川最上流部に日本最大の水力発電所を建設することを決意した。

このダム建設のカギを握るのが、前人未到の北アルプスにダム建設の資材を運び込むためのトンネルをつくること。

だが、この大町トンネルの掘削は、岩盤が脆く非常に崩れやすい上にアルプスの大量の地下水を溜め込んだ破砕帯に遮られ、絶望的な戦いを強いられるのであった。

というお話。

■人間が踏み込むことを拒み立ち塞がる大自然の強大な力を前にして決して退くことなく立ち向かう人間の強い意志、そしてトンネルを突き抜いたその時きっと目の前に現れるであろうまばゆい光。

タイトルの「黒部の太陽」とは、凍えるように冷たい絶望的な暗闇のなかで震えながら苦闘する男たちが信じる、その光のことなのだ。

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■昭和30年代~40年代にかけて日本は飛躍的な高度経済成長を遂げた。

その驚異的成長を支えた世代というのがあって、私の父や祖父の世代のことなのだけれども、彼らは不屈の精神をもって不可能を可能とする奇跡を生み出した、火の玉のように熱い世代なのである。

■何故、彼らはそこまで熱くなれたのか。

平成を生きる我々と何故、かくも違うのか。

高度経済成長のまわりにきらめく、こういったロマンチシズムを何故我々は失ってしまったのか。

それは年に3万人を超える自殺者を生み出し、うつに倒れる社会人が続発する今の時代背景と無縁ではあるまい。

少なくとも言えることは、われわれの心を満たす幸福度、といったものが低下してしまっているということだ。

■生きていく上での生活レベルは特にその底辺において確実に高くなり、完全週休二日制が当たり前になった現在では、過酷な長時間労働もまだあるにしても、公私の区別なく遮二無二働いたあの時代よりも厳しい、ということはないだろう。

先代が苦労して育てた果実をたらふく食べて何不自由なく育った我々の世代は、やはり甘っちょろいということなのか。

■父や祖父たちが血の汗を流しながら獲得したこの豊かさは、我々にとっては既得権益でしかなく、水や空気と同じ、当たり前のものになっている。

むしろ、その当たり前の豊かさ=既得権益が侵されたと感じたとき、怒りの感情と共に不幸が覆いかぶさってくる。

モンスターペアレントを嗤うのはいいが、彼らは実は極端な例に過ぎないのであって、「当たり前の権利」が否定されるとき、我々ひとりひとりのなかに多少なりともその萌芽があるという現実、そこに薄々感づいているのではなかろうか。

それを甘っちょろいというならば、それはきっとそうなのだろう。

けれど、そこにある苦しみは確かなもので、そのひと個人の責任にすべてをおっかぶせるのも違うと思うし、同じひとが昭和30年に生きていたならばそれなりの生き方をしたに違いなく、その逆もまた真なりで、そのひとの在り方は、当たり前のことながら、その時代の空気と切り離すことは出来ない。

■幸福は、それを獲得する予感に包まれたときに最大の効果を発揮する。

豊かさの絶対値は問題ではなく、今、に対してこれからどう変わっていく予感があるのか、それが幸福の尺度なのではないだろうか。

そういうふうに見てみれば、昭和30年代のカラダの底から溢れ出るような笑みの不思議が分かるような気がするのだ。

絶対的な豊かさで言えば到底いまの我々が許容できるレベルではないのだけれど、そこには将来に対する予感、いや確信があって、それがあの時代に生きる人たちを猛烈に突き動かしたエネルギー源なのではないか、ということである。

■これからの日本は敗戦のどん底から這い上がって絶対に「幸せ」をつかむのだ、

という確信には根拠も確証もなかったに違いないのだけれども、それが昭和30年代から40年代にかけて父や祖父たちの誰もが疑うことのない時代の空気だったのだろう。

■ダム工事を指揮した滝山薫平(小林 薫)が、自分の娘が白血病であることを知り、その絶望を難攻不落の破砕帯と重ね合わせ、絶対に通す、通さなければダメなんだ!と一歩たりとも退かない覚悟で攻略法を考える。

  
コンクリートで塗り固めてはどうだろうか。

冷凍法はどうだろうか。

  
■それに対して技術者の木塚一利(ユースケ・サンタマリア)が冷静に、正直言って、あまり賢い考えじゃないと思うんですが、と答えるのだが、滝山はそれに激昂する。

  
かしこぶった言い方は止めてくれないか。

なりふり構ってる時じゃなんだよ、今は。

人間が頭で考えて破砕帯に勝てるのかね。

知恵じゃ、もうとっくに負けてるじゃないか。

今はどんな非常手段を使ってでも破砕帯を強行突破しなけりゃならないんだ。

どんなことがあっても諦めない。

どんなことがあってもやり遂げる。

その人間の心が問われるときなんだよ。

■これは理屈に合わない精神論なのだろうか。

  
人のこころでは、

願うだけでは、どうにもならないことだってありますよ。

どんなに頑張ったって、・・・。

  
と苦しむ木塚は正しい。そこで、

 
君は、破砕帯に屈するのかね、

負けを認めて白旗をあげてしまうのか!

 
と、木塚を追い込む滝山は明らかに理不尽だ。

■だが最後には、絶対に不可能と思われた破砕帯の突破を彼らは成し遂げてしてしまうのだ。

失敗してもいい、効果がうまく出なくてもいい、絶対に掘り抜くという強い意志をもって、考えつくあらゆる手段を全部やりつくす。

その上で、トンネル工の親方、倉松仁志(香取慎吾)がその可能性に希望を託した冬期の地下水脈凍結、という感が当たり、破砕帯を抜けることができたのだ。

その「女神の微笑み」は決して偶然ではなく、必然だ。

何故かならば、女神が微笑むまで彼らは諦めなかったからなのである。

■確かにトンネルを貫通させれば娘は助かる、という滝山の願いは叶えられなかった。     

はじめからそんなことは分かっていた。

けれど、そう願わずには、そう信じずにはいられなかったのだ。

娘が助からないと聞いて、なるほどそれは理屈だ、と納得できるはずがない。

どうにもならない、と諦めた瞬間にすべては終わってしまうのだから。

■苦しかったはずの昭和中期の人たちの目がきらきらと輝いて見えるのは何故か。

といったときに、平成に入って我々の社会に蔓延してきた合理主義や成果主義、それに伴う個人主義と自己責任に還元していく見方がある。

私自身もそう思う。

けれど、それが分かったところで当時の’世界で一番理想的な社会主義体制’に戻れるわけもない。

「時代」は生まれてくるものであって、作られるものではないのだ。

■だからそれは、この平成の時代に生きる’わたし’の問題なのである。

’わたし’の意志の問題なのである。

受け入れがたい現実に対して時代の問題として「仕方がない」と悟りきってしまうのではなく、絶対に受け入れない、という強い意志を持つかどうかの問題なのである。

トンネルの向こうに絶対に光があると「予感」し、「確信」するのは他ならぬ’わたし’なのであって、それを可能にするのはその存在を信じ抜く’わたし’の強い意志なのである。

   
いま必要とされているのは「悩む力」ではなく、

暗闇を乗り越えて光を灯す「意志の力」であり、

意志を支える生きる力、「勇気」なのだ。
     

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                                                 <2009.03.24 記>

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■【原作】
Photo ■黒部の太陽 木本正次 著 新潮社新装版(2009/02)
   

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■関連記事■
■ドラマ 黒部の太陽、前編。いやー、迫力ですねー。

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■STAFF■
原作 : 木本正次 「黒部の太陽」
演出 : 河毛俊作
脚本 : 大森寿美男
  
音楽 : 岩代太郎
ヴァイオリン独奏 :竹澤恭子
美術デザイン: 根元研二
美術進行  : 藤野栄治 宮崎淳一
撮影     : 加藤文也、佐々木 肇
  
特撮監督  : 尾上克郎
撮影     : 中根伸治
照明     : 鈴木 静
美術     : 三池敏夫
操演     : 関山和昭
VFX     : ツジノミナミ、田中貴志

製作統括  : 大多 亮
企画     : 和田 行
製作     : フジテレビ

  
■CAST■
●熊谷組倉松班
倉松仁志(親方)      : 香取慎吾

沢井甚太           : 勝地 涼
島崎哲蔵           : 火野正平
石川信也(ノブ)       :  趙 珉和
山崎 護(マモル)     : 木村 昇
沢井甚五郎         : 國村 準

 
●熊谷組
大牧治郎(専務)      : 津川雅彦
船田克巳(作業所所長)  : 伊武雅刀
木塚一利(工事課長)    : ユースケ・サンタマリア 

●関西電力
滝山薫平  (黒四建設事務所次長) : 小林 薫
太田垣士郎 (関西電力社長)     : 中村敦夫
林 昭太郎 (関西電力副社長)    : 竜 雷太
芦田正章  (関西電力常務)      : 平泉 成

平岡榮太郎 (黒四建設事務所所長) : 小野武彦
根岸弘泰  (黒四建設庶務課副長)  : 柳葉敏郎
  

●その他、家族等
滝山ふじ江 (薫平の妻)  : 風吹 ジュン
滝山幸江  (長女)     : 綾瀬はるか
滝山響子  (次女)     : 末永 遥
滝山光子  (三女)     : 志田未来
   
北島 香 (光子の主治医) : 浅野ゆうこ

倉松ツル (仁志の母)    : 泉 ピン子
川口文子(沢井甚太の恋人) : 深田恭子
遠山博士(地質学者)     : 古谷一行
源吉   (地元の地主)    : 田中邦衛
   

ナレーション            : 三上博史 
  

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■過去記事■
■TVドラマ雑感・バックナンバー

■フジテレビ開局50周年記念ドラマ 黒部の太陽 番組HP

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2009年3月22日 (日)

■ドラマ 黒部の太陽、前編。いやー、迫力ですねー。

ドラマでここまでやるか、ってくらい本格的。

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■特にトンネルの掘削現場のリアルさ。

もちろんセットなんだろうけれど、馬鹿でかい掘削機械に男たちが取り付いて岩盤に穴を開けていく迫力がもの凄い。

さらには前編ラストで大規模な破砕帯にぶつかって土砂崩れに襲われるシーンは圧巻。特撮は最小限に抑えられている感じで、いや、撮影で怪我人が出てもおかしくない、それくらいの迫力であった。

■俳優陣も超・豪華キャスト。

しかもそのなかで慎吾ちゃんが負けていない。

現場で命を張ってトンネルと格闘する男どもをまとめる若き親方の役なのだけれど、精一杯気を張っているその姿が、この大作の主役を任された香取慎吾自身と重なって、いい男振りを見せている。

■尊い犠牲が無駄にならないためにも、日本の復興、発展の為に歯を食いしばって先に進もう。と、黒四建設現場のリーダーを演ずる小林薫が周りを鼓舞するシーン。

そこで、

   
お国のため・・・、じょうだんじゃねぇ!!

俺たちが求めてるのはトンネルを貫通させることだけだ!

岩盤に喰らいついて、そいつらをすべてぶち抜く。

その自分の意地と誇りのためだけに働いてるんですよ!

でなきゃトンネルに命張れねえでしょうが!

尊い犠牲の精神だとか、この国の礎だとかの理屈は、

あんたらが勝手に考えてくれりゃいい。

ただし!

そんなもんで俺たちを煽ることだけはやめてくれ!!

俺たちはトンネルを抜くためにここに来てるんだ。

これは俺たちの仕事なんだ!

国家だろうが、未来だろうが、

なんの犠牲にもなるつもりはねぇ。

俺と一緒に働く者に、

犠牲なんて言葉は使わねえでもらいてえ。
  

この慎吾ちゃんの啖呵、カッコよかったなあ。

このあたりからラストまで完全にドラマに入り込んでしまってた。

■さて、あと1時間で後半が始まります。

なんか、ドキドキしますな。

  

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                                                <2009.03.22 記>

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■【原作】
Photo ■黒部の太陽 木本正次 著 新潮社新装版(2009/02)
   

Photo ■【DVD】 プロジェクトX シリーズ 黒四ダム
 

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■STAFF■
原作 : 木本正次 「黒部の太陽」
演出 : 河毛俊作
脚本 : 大森寿美男

  
■CAST■
香取慎吾
小林 薫
中村敦夫
田中邦衛
伊武雅刀
ユースケ・サンタマリア 他

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■後編の記事■
■ドラマ 黒部の太陽 後編。絶対にやり遂げる人間の強い意志と生きる力、勇気。

■過去記事■
■TVドラマ雑感・バックナンバー

■フジテレビ開局50周年記念ドラマ 黒部の太陽 番組HP

 

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2009年3月21日 (土)

■F-15SE(Silent Eagle)、ちょっと工夫でこのうまさ。

F-15SE(Silent Eagle)の試作機が公開された。

F_15se01
■2009/3/20 18:30 - ボーイングは17日、F-15戦闘機の新型機「F-15 SE(Silent Eagle)」の試作機を発表した。【Technobahnの記事へ】

■F-15Eの特徴に加えて、レーダー波吸収素材にコンフォーマルタンク型ウェポンベイ、V字型垂直尾翼を採用し、フロンタル・アスペクト・ステルス性能は輸出版のF-35並みなのだそうだ。

勉強不足で’フロンタル・アスペクト・ステルス性能’なる用語の意味と定義がよく分からないのだけれど素直に’前面ステルス性能’ととるならば、へぇ~という驚きを隠せない。

F_15se_wepon_bay_2

■でもちょっと待て。

コンフォーマルタンク型ウェポンベイっていうけれど、要するに格納式じゃないってことだよな。

それって・・・。

■と思いきや、ちゃんと格納式でした、ごめんなさい!!

これならバッチグーです。スゴイ、スゴイ!!

【↓ ウエポンベイへの格納の動画】

Video: Boeing unveils the "stealthy" F-15 Silent Eagle

さぁーて、F-X選定どうなりますかね。

これはちょっと面白くなってまいりました!

                     <2009.03.21 記/03.23改>

■関連ニュース■
シュワルツ米空軍参謀総長、改造版のF-22であれば日濠への輸出は可能
(Technobahn 2009/2/18)
気が付かなかったけど、こんなニュースも。

 
■過去の記事■ 飛行機、宇宙の話など  
    

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2009年3月20日 (金)

■ロボット少女HRP-4C。ちょっと不気味なカワイ子ちゃん(死語か?)。

いやー、これは不気味です。

Photo
■独立行政法人 産業技術総合研究所 知能システム研究部門
   ヒューマノイド研究グループ・2009年3月16日 プレスリリース

人間に近い外観と動作性能を備えたロボットの開発に成功
-エンターテインメント分野への応用を期待-

■独立行政法人 産業技術総合研究所がヒューマノイドロボット(サイバネティックヒューマン、「HRP-4C」)を公開した。

HRP-4Cの特徴は、以下の3点。

●人間に近い外観・形態を持つ

●人間に極めて近い歩行や動作ができる

●人間の音声を認識し、コミュニケーションできる

身長158cm、体重(?)43kg、関節の位置や寸法は日本人青年女性の平均値を参考にし、ホンダの2足歩行制御技術に加え、CGアニメーションで多く採用されているモーションキャプチャー技術を使ってリアルな動きを実現した、見た目も動作も人間そっくりのロボットというわけである。

■というのだけど、頭がリアルすぎて少し引き気味。

サイトにある動画を見たらさらに不気味(笑)。

公的機関が大真面目に取り組んでいる研究であるだけに、そのギャップが面白い。

■この技術の適用先としては、展覧会やファッションショーなどのイベントや介護予防リハビリ体操のインストラクター補助が考えられているようだ。

3K職場の労働力は人間そっくりである必要は無いし、筑波大学のHAL(パワードスーツ)のようなものはまた別物であるから、どうしてもそういう「見世物」的位置づけになってしまうのだろう。

ヒューマノイドロボットの産業化を疎外する要因として、値段が高い、転ぶと壊れる(!)、と並んで「歩行するだけでは商品価値が乏しい」が挙げられているが、「人間そっくりであること」の商品価値はどうなのか。

■つい、セクサロイド(by 松本零士)が思い浮かんでしまう品性下劣な自分が恥ずかしいのだが、いやそこはお行儀良く、介護ロボットとかメイドロボットなんかはどうかといっても、それもちょっと違うのではないかな、と思うのだ。

だって不気味なんだもん。

■ロボットはロボットらしいから安心できるのだ。

HRP-4Cの愛らしさはロボットの愛らしさではない。

それは「人形」の愛らしさであって、それがリアルであればリアルであるほど不気味な感覚を覚えるのである。

もしかして、これは命を持っているのではないか。

という、その錯覚から励起される恐怖であり、その瞳の奥にのぞく「何か」に慄くのである。

それが人間そっくりの動きを見せてしゃべり始めた日にゃ、そりゃもうおしっこをチビってしまうどころの騒ぎではないだろう。

将来寝たきり老人になって「彼女」と二人きりで取り残される。

そんな悪夢は是非とも遠慮させて頂きたいものである。

                          <2009.03.20 記>

Photo_3 
■アンドロイドサイエンス 人間を知るためのロボット研究
■石黒 浩 著 毎日コミュニケーションズ(2007/9/29)
 

■関連記事■
■ アンドロイドは人間になれるのか。『爆笑問題のニッポンの教養』 知能ロボット学教授 石黒浩。

Photo_2
■【動画あり】独立行政法人 産業技術総合研究所 プレスリリース
人間に近い外観と動作性能を備えたロボットの開発に成功

   

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’大石英司の代替空港’ の「機械人間はイマココ状態」
 

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■早合点。

あったかい日が続いたからか、桜が満開になっていました。

200903192

って、思ったらサクラではなくベニスモモなのだそうです。

いやー、早合点。

よく見りゃ、紅色の葉っぱも出てるし。

でも、まあキレイでしたよ。

本番は来週末くらいかな。

                       <2009.03.20 記>

  
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2009年3月18日 (水)

■昇っていく光の軌跡。STS-119(15A)ディスカバリー打ち上げ。

米国東部夏時間 3月15日午後7時43分(日本時間 16日午前8時43分)、若田さんを含む7名の宇宙飛行士を乗せたスペースシャトル・ディスカバリー号の打ち上げは無事成功した。

Photo
■少し、ニュース的には遅い記事なのだけれど、夕暮れの中を飛び立っていく光の軌跡があまりにも美しかったのでアップしました。

液体水素注入中のリークが見つかって打ち上げ延期、原因が特定されないまま打ち上げるというので少しドキドキしていたのだけれど、無事で何より。

■本日、「ラジオ体操の歌」(♪あたらしい朝が来た、希望の朝だ、かな?)のウェイクアップコールで目覚めた若田さんは、ドッキングした国際宇宙ステーション・ISSに移り、これから3ヶ月半の長期滞在に入ります。

何だか日本人にとっての宇宙も、リアリティを持ち始めましたね。

私が生きているうちに、日本人が月の大地を踏みしめるシーンを拝めるといいのですが。

1
■【動画】打ち上げシーン<YOMIURI>

■15A(STS-119)飛行1日目ハイライト(打上げ)<JAXA/NASA>
  

                             <2009.03.18 記> 

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2009年3月16日 (月)

■ドラマ・銭ゲバ、最終回。テレビドラマという虚構の世界を突き破る試み。

いい意味で期待を裏切ってくれる最終回であった。

Photo_5

■前回の第8話で、あちゃー、と思ったのが正直なところ。

予想もしなかった茜の自殺で何かがぽっかりと抜け落ちていく、そのダメージによって今まで求めてきたものはいったい何だったのか、という疑念が風太郎のなかにうまれてくる。

■そんな不安定な風太郎に追い討ちをかけるように多額の借金を前にして豹変する定食屋一家。

銭だけが力を持つと信じて生きてきた気持ちの奥底で、愛を求め、人の優しさを求め、そうじゃないと否定してくれるものを求めていた、その大切なものが風太郎の両手のうちからすっ、と消えていってしまったのだ。

■で、絶望の淵に立たされた風太郎はダイナマイト自殺を果たすべく、見届け人として緑さんを助手席に乗せ、故郷のつらい思い出がつまった廃屋へと向かう。

その打ち捨てられた漁師小屋の柱には、かつて最初の殺人を犯した幼い風太郎が世間に対する怨嗟の気持ちをこめて彫り込んだ、銭をつかんで幸福になってやる、という決意が刻まれている。

彼の原点がそこにある。

風太郎は身動きが出来ないように自分を椅子に縛り上げ、その幸福の二文字を見つめながら導火線に火をつけるのであった。

と、いうのが前回のお話。

■って、そうじゃないだろう、岡田惠和!

貧乏であるが故に、金さえあれば死ぬことのなかった母親の命を奪い去られた絶望、それが漁師小屋の柱に刻まれた決意ではなかったのか。

その決意とは、金を持たなければ人として生きていくことすら許されない、そんな不条理と欺瞞に充ちたこの世の中に対する復讐ではなかったのか。

愛だとか、優しさだとかがすべて枯れ果ててしまった、金が無ければそういったものはあっさりと逃げていく、幼い瞳に焼き付けられたその真実の残酷さ、それ故の殺人ではなかったのか。

■それを、何をいまさら。

もし、この世に銭金に左右されない真実の愛、真実の優しさがあるのだったら、あのときの風太郎を救ってやれよ、ということだ。

しかも、鬼畜生の類であったはずの父親が、風太郎くん、お金がいっぱいありすぎるのも虚しいもんだね、なんて10億円を返しに来て、悟りきったような口を利くに及んでは、もうあきれ果てるしかない。

■我々が信じて疑わない愛や優しさというものは、実は絶対的なものではないのだ、と常識を覆してみせる、それだけが風太郎に残された道であったはずなのに、それだから風太郎も人であることを捨てて鬼畜の道を選んだはずなのに、その孤立無援の決死の革命を放棄して何の銭ゲバか。

だから、最終回はもうダメだろう、と初めからタカを括っていたのである。

■前置きが少々長すぎた。

さて、最終回である。

導火線につけられた火がどんどん近づいてくる恐怖に次第に耐えられなくなって泣き喚く風太郎。

こんな情けない風太郎をみても、もう驚きやしない。

■そこでCMが入って、ああ、爆発の場面を通りこして後日談に入るのだなという予測はピタリと当たって、

と思っていたら何だかどうも様子がおかしい。

風太郎の人生の回想シーンのようなのだけれども、そこに赤貧のどん底は無く、つつましやかではあるけれど平凡で、それゆえに幸せに充ちた「もし」の世界が語られていく。

そこに鉈の一振りのごとく、実際の忌まわしい過去がザクリと残酷に差し挟まれ、その悪夢が短くなっていく導火線と重なりあって、身動きのとれない風太郎をさらに追い込んでいく。

■これにはやられた。

何しろ第9話、最終回60分のすべてが、この風太郎を追い込む演出に投入されるのだ。

凄い、さすが岡田惠和。

この圧倒的な緊張感を前にして、先にくどくど述べた御託は跡形も無く吹き飛んでしまった。

ああ、ドラマは理屈じゃないな、としみじみ思う。

■極限まで追い込まれた風太郎の救いを求める願いも空しく、漁師小屋は炸裂したダイナマイトによって木っ端微塵に砕かれる。

燃え上がる紅蓮の炎が、それを見届けようとする緑の瞳にゆらゆらと映し出され、まるで本編のような美しさを醸し出す。

蒲郡風太郎という反逆者が確かにこの世に存在したのだと、その事実を胸に刻んで生きていく三國 緑という語り部がいて、そこに観る者は心を重ね、何かを感じ取るのである。

■それだけに最後のセリフを風太郎自身に語らせるラストが残念でならない。

本来そのセリフは蒲郡風太郎という存在を見届けた緑のセリフのはずなのだ。

そこがどうもクドくて後味の悪さが残ってしまう。

墓参りをする緑のシーンで、残されていた風太郎の遺書というカタチでそれを語らせればもう少しすっきりしたのにな、とも思う。

■フィルムの逆回しで爆死直前の風太郎のシーンに戻るアイデアは斬新で素晴らしい。

実際、見ていて意表を突かれ、また一本とられたな、という感じだ。

そこで風太郎に御託を並べさせるのではなく、極限まで追い込まれた風太郎が’一線’を越えて高笑いする、その松山ケンイチの超絶演技に期待する。

そういった語り過ぎない終わらせ方もあったのじゃないか、

ということだ。

■もし岡田惠和の狙いが、テレビドラマという虚構の世界を突き破り、現実に生きる我々に向けて風太郎が直接挑戦状を叩きつける、そこにあったとするならば、この後味の悪さこそが実はその成功の証しなのかもしれない。

いずれにしても、いろいろ考えさせられるへヴィーな最終回であった。

   

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                            <2009.03.15 記>

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■ 銭ゲバ DVD-BOX

      
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■ かりゆし58 さよなら (初回限定盤)(DVD付)
   

■【原作】

Photo ■ 銭ゲバ 上   ジョージ秋山 著 幻冬舎文庫(上/下)
  

     
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■STAFF■
原作 : ジョージ秋山『銭ゲバ』(幻冬舎文庫)
脚本 : 岡田惠和
演出 : 大谷太郎、狩山俊輔
   
音楽 : 金子隆博
主題歌 : かりゆし58 「さよなら」
   
プロデューサー : 河野英裕、難波利昭
制作 : 日本テレビ

  
■CAST■
蒲郡風太郎     : 松山ケンイチ
             : 齋藤隆成(幼少期)
   
三國緑(三國家長女): ミムラ
             : 森迫永依(幼少期)
三國茜(三國家次女): 木南晴夏
三國譲次(三國造船社長): 山本圭
桑田春子(三國家の家政婦): 志保
   
荻野聡(刑事)    :  宮川大輔
菅田純(刑事)    :  鈴木裕樹
  
蒲郡桃子(風太郎の母): 奥貫薫
蒲郡健蔵(風太郎の父): 椎名桔平
  
野々村保彦(伊豆屋店主): 光石研
野々村祥子(保彦の妻) : りょう
野々村晴香(保彦の妹) : たくませいこ
野々村香(保彦の姪)  : 石橋杏奈

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■過去記事■
■TVドラマ雑感・バックナンバー

■ 銭ゲバ 番組HP

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’まぁ、お茶でも’ さんの「《銭ゲバ》★09」
 

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2009年3月15日 (日)

■金曜ナイトドラマ・歌のおにいさん、最終回。やっぱり素直な分かりやすさって強いやね!

番組最後の公開ライブ。

ステージから子供たちに語りかける健太の一人台詞から主題歌の「曇りのち、快晴」に入っていくシーンがあって、不覚にもそこで感動してしまった。

Photo_2

■第一話、歌のおにいさんのオーディションで、子供は好きか?と聞かれて、

  
こんな世の中に生まれた今の子供たちが可哀想だ。

  
とつぶやいた矢野健太。

■うまくいかない人生に落ち込んで、あきらめて、投げだして、何もかもやんなって、やってらんね、という気持ちで生きていた矢野健太。その矢野健太が全8話のドラマを通してどう変わっていったのか。

そのテーマに対して脚本はためらわず、剛速球をど真ん中にまっすぐ投げ込んできた。

こんな素晴らしく気持ちのいい最終回は久しぶりだ。

■お前ら、こんな時代を生きなきゃなんなくて、

正直、俺は損してるって思ってた。

こんな時代に生まれてお前らが可哀想だと思ってた。

  
まちがってるよな。

  
こんな時代だからこそ、

今を変えていかなきゃなんねえんだよな。

まだまだちっちゃいガキかもしんねえけどさ、

お前らにはそのチカラがある、今を変えていく力が必ずある。

   
だから負けんな!

迷ったときは思い切って飛び越えろ!

そうすれば必ず違う明日がやってくる。

流れが変わるときは必ずくる。
  

もしまた、皆に会えるとき来たら、そんときは、

『最強の歌のお兄さん』になってやっかんな!!
   

■そのとき、

黄色いマフラーをなびかせる歌のおにいさん、矢野健太が

正義のヒーローに見えてきた。

カッコいいぞ!大野 智!!
  

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                        <2009.03.15 記>

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■【DVD】 歌のおにいさん

  
■Believe│曇りのち、快晴【初回限定盤2】
 1. 曇りのち、快晴/矢野健太 starring Satoshi Ohno
 2. Believe/嵐
  【DVD】「曇りのち、快晴」ビデオ・クリップ
  

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■STAFF■
脚本 : 永田優子
演出 : 長江俊和、髙橋伸之、梶山貴弘
音楽 : 辻陽
主題歌 : 曇りのち、快晴/矢野健太(大野 智)
制作 : テレビ朝日、泉放送制作

  
■CAST■
矢野健太  (主人公)          : 大野智(嵐)
美月うらら (歌のおねえさん)     : 片瀬那奈
氷室洋一 (ベテランおにいさん)    : 戸次重幸
斉藤守   (新人兄さん、健太の同期) : 丸山隆平(関ジャニ∞)
    
真鍋杏子 (番組プロデューサー) : 木村佳乃
住吉一博 (番組ディレクター)   : 前田健
中村洋子 (製作スタッフ)     : 永池南津子
清水さやか(メイクさん)        : 滝沢沙織
     
水野明音 (健太の元カノ、元ジゼル)  : 千紗(GIRL NEXT DOOR)
安斉遼二 (明音についたプロデューサー?) : 吹越満
   
矢野光雄 (健太の父)        : 小野武彦
矢野さくら (健太の姉)        : 須藤理彩
小山克己 (健太の理解者)      : 金児憲史
   
黒柳徹子               : 黒柳徹子(本人)

Photo_3

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■過去記事■
■金曜ナイトドラマ 『歌のおにいさん』。こんな時代に生まれた可哀想な子供たちへ。

■TVドラマ雑感・バックナンバー

■歌のおにいさん 番組HP

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2009年3月14日 (土)

■春がちらほら。(その2)

おとといの続き。

二日しか経ってないのに また別の花が咲き始めてる。

2009031204
■オドリコソウ(踊り子草) シソ科オドリコソウ属
花期:3~6月 

花のカタチが笠をかぶった踊り子にみえることから
その名が付いたといわれる。

2009031203_2
■ぐっと近くによって見ると、踊り子というよりは、

エイリアンか恐竜のようです(笑)。

  

2009031201
■カタバミ(酢漿草、傍食) カタバミ科カタバミ属
花期:4~7月 花径:7mm 
ちょっと気の早い花が一輪だけ咲いていた。

夜になると葉がたたまれて半分しか無いように見える
ところから、この名前がついたそうだ。

葉は食べると酸っぱいらしい。試してないけど。

  

2009031201_2
■ノゲシ(野芥子・春の野芥子) キク科ノゲシ属
花期: 3~10月 花径: ~2cm

名前は葉が芥子に似ているからという説明をみたのだけれど、うーん、タンポポの方が近いとおもうのだけれどなあ。むしろツボミの方がケシの花が散った後のカタチに似ている気がする。

いずれにしてもケシ科ではなく、タンポポと同じキク科の植物。

  

2009031201_3
■最後は、前回も取り上げたオオイヌノフグリ。

名前の由来は、実が犬のふぐりに似てるから、
とあったのだけれど・・・。

2009031203_3
■これがウワサのオオイヌノフグリの実。

確かにふたつのタマのまわりに短い産毛が生えていて・・・
うーん納得。なのである。

                         <2009.03.14 記>

  
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■嵐のあとの一服。

夜半から雨と風が激しくて 

ベランダでタバコを吸うのに苦労した。

台風みたいだったな。

20090316

                            <2009.03.14 記>

 
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2009年3月13日 (金)

■春にけぶる。

朝の濃密な空気に 太陽がけぶっていた。

Photo

 
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2009年3月11日 (水)

■カーネル・サンダースさん、24年ぶりに無事救出。

いや、これは食いつくよ。

Photo
■救出されるカーネル・サンダースさん。

■カーネル・サンダースさんが発見された。

1985年10月16日、阪神がヤクルトと追いつ追われつの接戦の末、引き分けに持ち込み21年ぶりのリーグ優勝を果たしたその日、「ランディー・バースに似てるから」という、冷静に考えればそれほどでも無いなあとも思える理不尽な理由で、熱狂する阪神ファンたちによって胴上げされた末に道頓堀川に投げ込まれ、行方不明になっていた、あのカーネル・サンダースさんである。(ふー、長かった。)

Photo_2
■満面の笑みで記者会見にのぞむカーネル・サンダースさん。

■24年ぶりに帰還された今のお気持ちは?

という記者の質問に対し、サンダースさんは、

「あと12年がんばったら3ダースだったのに・・・。」

と、意味不明のつまらないアメリカン・ジョークを飛ばす余裕を見せた(ウソ)。

■まあ、何にせよ、春から縁起のいい話ではある。

ケンタッキー、記念セールとかやらんかな。

Photo_3
■若かりし日のカーネル・サンダースさん。

                           <2009.03.11 記>

追記。

↓画像を探してたら、こんなのありました。

■ドナドナ
http://cbhk.jugem.cc/?eid=267

シュールだね~(爆)。

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■春がちらほら。

道端に、ちらほら小さな花が咲き出した。

久しぶりに天気が良かったので

散歩がてら、歩きながら撮影してみた。

2009031005
■ナズナ(ぺんぺん草) アブラナ科ナズナ属 花期:2~6月 
名の意味は、’撫で慈しむ菜’という説が有力らしい。
    

2009031001_2
■ミチタネツケバナ(路種漬花) アブラナ科タネツケバナ属
花期:4~6月 名は、道端に咲くタネツケバナという意味。
   
ちなみにタネツケバナは水田で見られる草で、この花が咲くと
種籾を水に漬けて田植えに備えた、というのが名前の由来。
   

20090310
■キュウリグサ(胡瓜草) ムラサキ科キュウリグサ属 
花期:3~5月 花径2~3mm
名は、葉をもむとキュウリの匂いがするところから。
   

2009031002
■オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢) 
ゴマノハクサ科ノコギリソウ属 花期:2~5月
名は実のカタチから(笑)。
   

2009031001
■トキワハゼ(常盤ハゼ)  ゴマノハグサ科サギゴケ属
花期:4~11月

花期が長いので’常盤’。’ハゼ’は実が爆ぜるところから。
   

20090310_2
■ヤハズエンドウ(矢筈エンドウ) マメ科ソラマメ属
別名カラスノエンドウ 花期:3~5月 
 
名は、葉の先の凹みが矢の尻:筈(はず、弦に番えるところ)
に似ているところから。
   

2009031003

■ ツメクサ(爪草) ナデシコ科 ツメクサ属 
花期:3~7月 花径:約4mm
名の由来は、とがった葉が鳥の爪に似ているところから。
   

2009031002_2
■コハコベ(小繁縷) ナデシコ科ハコベ属
花期:3~9月 花径:5~7mm
 

2009031004
■ミドリハコベ(緑繁縷) ナデシコ科ハコベ属
花期:3~9月 花径:5~7mm

コハコベとミドリハコベはパッと見がそっくりで、
一般に’ハコベ’というときには区別は無いようだ。

茎の色がコハコベは赤紫、ミドリハコベが緑色で区別できる。

他に似た花でウシハコベがあるが、
コハコベ/ミドリハコベの雌しべ先端は3つに分かれ、
ウシハコベは5つに分かれている。
   

  
■■■ 花の写真 ■■■  
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                          <2009.03.10 記>

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2009年3月 8日 (日)

■意識と水と複雑系。『爆笑問題のニッポンの教養』 脳神経学、中田力。

今回のテーマは、脳神経学。

2
■ 爆問学問『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE064:「こころは水でつくられる!?」 2009.3.03放送
新潟大学教授 脳神経学 中田力(なかだつとむ)。

■「こころ」とか「意識」とかを解明した先生だなんていうもんだから、そりゃもうびっくりして引き込まれたわけである。

理解できたことをまとめると、

●「意識」や「こころ」は大脳構造によって作られるもので、哺乳類のネズミにはあるがサカナには無い。

●人間を人間たらしめているのは前頭葉によるものであり、それによって自らが体験していない情報をも処理する(想像する)ことが出来るようになった。

●「意識」とはテレビの受像機のようなものであり、ボーっとしている(チャンネルを合わせない)時にはランダムな「砂の嵐」のような状態で、何かに意識を向けると(チャンネルを合わせると)意味のある「像」があらわれる。

といったところで、

まあそうかな、とすんなり受け入れられる内容である。

■けれども、中田先生の中田先生たる所以は「水分子」にあるようなのだけれど、それについては番組の内容を見ていても、どうもぼんやりしてハッキリしない。

意識はニューロンのネットワークによって発生するのではなく、水分子が大きな役割を果たしていて、その駆動力は熱エネルギーである。

って、なんのこっちゃ分からない。

■で、少しだけ調べてみた。

中田先生のオリジナリティは、ノーベル賞化学者で、高校のときに習った「電気陰性度」を考え出したライナス・ポーリング博士の全身麻酔に関する論文につきあたったことで生まれたもののようである。

■実は全身麻酔が効く仕組みは未だに解明されていないのだそうで、不活性ガスである(要するに化学反応しにくい)キセノンも麻酔作用をもっているらしいから、何となくその「分からなさ具合」が想像できる。

中田先生が出合ったそのポーリング博士の論文は、麻酔物質のまわりには水分子のかたまりができやすく、その仕組みによって意識が喪失する、というものであった。(キセノンは電気陰性度、つまり電子を引き付ける強さが比較的大きく、ナルホドな、というわけである。)

■麻酔物質によって水分子が整然と並ぶことで消失する「意識」。

中田先生はそのイメージから、意識とは水分子がつくる「渦」によって成り立っているのだ、という結論に至ったようだ。

■先生の最近の著作、「脳の中の水分子」のアマゾンの書評を見てみると、ちょっと眉唾じゃないのっていう評価があるのだけれど、むしろ、そのことが「本物」らしさを醸し出している。

細分化されて石アタマになってしまった専門家にすんなり受け入れられるものであるならば、「意識」なんてとっくに解明されているだろう。

何しろ、誰もが疑問をもつ問題なのだ。

■社会とか、経済だとか、気候だとか、生命だとか、

今までのニュートン的アプローチでは「解析」できない問題があって、いろいろな分野の最高の知恵があつまって、そういった問題に取り組もうと20世紀末に生まれた「複雑系」なる学問がある。

多少の誤解は覚悟で簡単にいうと、それら「複雑系」のシステムは、今までの還元主義的科学の視点で説明できる仕組みではなく、個々の小さな単位(人間、大気中の分子、いろいろな有機物)が多様に組み合わさって影響しあうことで生まれ、維持される系であって、完全な無秩序(カオス)と秩序(ニュートン力学で説明できる世界)の狭間にゆらぐものなのだ。

■うーん、簡単じゃないな。

それは鳴門の渦潮のようなもので、確かに存在するのだけれど、「これ!」とつかみだすことが出来ないもの、といえばいいだろうか。

■要するに、水分子だとか、熱だとか、渦だとか、中田先生の意識の理論の周辺にあるキーワードがとても「複雑系」的で、意識、というつかみどころの無いものを捉えるのには絶好のアプローチなのではなかろうか、と思うのである。

まあ、ともかく読んでみようと思う。

面白そうな本と出会えて、番組に感謝なのだ。

                        <2009.03.08 記>

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■脳のなかの水分子―意識が創られるとき
中田 力 著 紀伊國屋書店 (2006/08)

■脳の方程式 ぷらす・あるふぁ 
中田 力 著 紀伊國屋書店 (2002/09)
■「渦理論(Vortex Theory)」を語るこっちが本丸なのかも。
  

■関連記事■
■【書評】『自己組織化と進化の論理』 S・カウフマン。今、生きていることは偶然ではないのだ。
  

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2009年3月 7日 (土)

■映画 『ワルキューレ』 トム・クルーズ主演、ブライアン・シンガー監督。久々の戦争活劇が楽しみなのだ。

戦争スペクタクル巨編、なんてのは久しぶりじゃなかろうか。

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■映画 ワルキューレ 公式HP 2009. 3.20公開

■最近の戦争映画といえば、悲劇的な人間ドラマばかりだったような気がするのだけれども、娯楽映画としての戦争映画というのも、それはそれとして、ありだと思う。

トム・クルーズ主演、という段階でサスペンス娯楽活劇的香りが漂うのであるが、この映画のタイトルでもある’ミッション’が実際にドイツ軍内部によって計画されたアドルフ・ヒトラー暗殺作戦だというのだから、これは期待も高まるというものである。

■監督は「ユージュアル・サスペクツ」(’95)のブライアン・シンガー。最近は「X-メン/X-MEN2」(’00/’03)、「スーパーマン・リターンズ」(’06)といった娯楽活劇の人である。

製作・脚本はブライアン・シンガーと旧知の仲のクリストファー・マッカリー。「ユージュアル・サスペクツ」の脚本でアカデミー賞・オリジナル脚本賞を受賞した実力派である。

■実は、先日、試写会のチケットを持っていながら急な都合で行けなくなってしまった悔しさがあって、その地団駄を踏む思いを忘れないようにという意味でこの記事をUPするわけである。

もちろん、せっかくのチケットを受け取っておきながら試写会の記事をUP出来ない申し訳なさがあって、少なからず宣伝めいた記事になってしまったのであるが、それを差っ引いても久々に思い切り楽しめそうな作品であることは確かである。

是非とも、劇場の大画面で堪能すべし、なのである。

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                          <2009.03.06 記>
    

って、たまには提灯記事もいいでしょう(笑)。

↑ こういうのを蛇足っていうんだろうな・・・。
   

    
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2009年3月 6日 (金)

■NHKドラマスペシャル、白洲次郎。極上のレシピと、素材と、料理人。

白洲次郎。

戦後政治の中枢にいて貿易立国としての日本の青写真を描き、それを通産省(現:経済産業省)として結実させた実力者。

その一方で「粋(いき)」という言葉を調べると、必ずといっていいほど妻の正子とともに凛と立ち上がってくる伝説的なその名前。

ただ単に、カッコいい、というだけでなく、自信とヴィジョンを失って漂うばかりの今の日本において、まさしく最も着目すべき男なのである。

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■とはいっても、イメージとしての「白洲次郎」というのは強くあるのだけれど、己の不勉強は置いておくとしても、その実像はぼんやりとしてハッキリとした形を結ばない。

だから、こういうドラマ仕立てで「白洲次郎」に迫る試みはとても意味のあることなのだと思うし、実際、かなりの勢いで好奇心をくすぐるのである。

■また、ドラマという枠を大きくはみ出す演出が「白洲次郎」というカリスマに負けない力を発揮している。

俯瞰、あおり、大きな余白、

といった思い切ったカットにアザとさがなくて、しっかりとその場面での心情が伝わってくる。

■自分の頭で考え、やるべきことを実行する、Gentlemanとしてのprinciple(原理原則/信条)をケンブリッジの教授から叩き込まれるシーンがあって、おお、と思うまもなく、その後の英国での日々がモノクロームの写真と歌で語られ、学生戦没者慰霊碑と向き合う次郎で終わる。

何よりも、このシーンにヤラレテしまった。

いや、手法としてはどこかに既にあるのかもしれないけれど、その地で白洲次郎が胸に刻んだであろう、そして彼のこれからの人生の骨格になっていくであろうものが、観る者の中に深く構築される。

説明を一切省く思い切り、

その効果にしびれるのである。

■さて、その白洲次郎を演ずるのは伊勢谷友介。

ファッションモデルで、映画俳優で、東京藝大の院まで出てて、異母兄弟に山本寛斎がいるなんていう経歴は、今、ググッて調べたんだけども、それ以前に白洲次郎を張るだけの目ヂカラと面構えがあって役柄に決して負けていないのが素晴らしい。

あとは、近衛文麿を演ずる岸辺一徳の味わい深さも良かったのだけれども、吉田茂が良かったなあ。

■始めは誰だか分からなかったんだけど、しゃべり方をよく聞いてみれば、なんと原田芳雄さんじゃないですか。

いつものボサボサ頭じゃないから気付かなかったけど、いや、これほど真に迫った吉田茂は見たことが無い(もちろん本物と面識があったわけじゃないけれど(笑))。

■一つのところに止まると書いて、正しい、

なんて気の利いたセリフも多くて存分に楽しめた第一話なんだけれども、次回から核心の敗戦直後の政治の世界に入っていくようで、ますます面白くなっていくだろう。

何しろ、レシピも素材も料理人も一級品。

これは名作になる雰囲気がプンプンと漂っているのである。

    

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                             <2009.03.06 記>

■追記■
第3話って8月放送予定なんだそうな。

え?なんで!?と調べたら
原田芳雄さんが11月に大腸がんの手術を受けていたんだそうで、知らんかったなぁ。
でも、早期の大腸がんで術後も順調に回復して12月末には撮影に復帰されたようで何よりである。

もともと年始に放映する予定が3月にずれ込んだのはそれが理由のようだけど、第3話の撮影が4月から開始ってのは、ちと解せない。

実は予算をオーバーしちまったっていうウワサもあって、第1話の完成度を見る限り、さもありなんなわけだけれども、

まー、ちょっと気が長いハナシですな。

そういう「伝説」らしきところも含めて、

「名作」としての資格十分ってことだろうか。
   

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■ プリンシプルのない日本 (新潮文庫) 白洲次郎 著

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■STAFF■
原案: 北康利 「白洲次郎 占領を背負った男 (講談社文庫) 」、
     牧山桂子 「 次郎と正子―娘が語る素顔の白洲家
制作統括  : 鈴木圭
脚本・演出  : 大友啓史 
音楽          : 大友良英
美術          : 都築雄二
スチル        : 若木信吾

  
■CAST■
白洲次郎     : 伊勢谷友介(少年:高良健吾 晩年:神山繁)
白洲正子 (妻)  : 中谷美紀
白洲文平 (父)  : 奥田瑛二
白洲芳子 (母)  : 原田美枝子
ミヨシ (白洲家宮大工): 塩見三省
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吉田茂      : 原田芳雄
近衞文麿          : 岸部一徳
広田弘毅     : 世古陽丸
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マッカーサー    :ティモシー・ハリス
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牛場友彦 (幼馴染)  : 石丸幹二
辰巳栄一 (駐英武官) : 高橋克実
河上徹太郎 (文芸・音楽評論家) : 田中哲司
青山二郎 (骨董の目利き)     : 市川亀治郎
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ロビン (留学時代の親友):ED SPELEERS

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2009年3月 2日 (月)

■ゴキブリに意志はあるか?『爆笑問題のニッポンの教養』 ロボット工学、三浦宏文。

今回のテーマは、ロボット工学。

File063
■ 爆問学問『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE063:「ロボットの虫」 2009.2.24放送
工学院大学学長 機械システム工学科教授
ロボット工学 三浦宏文。

■ゴキブリ・ハイブリッドロボには魂消ました。

ボール紙の胴体にゴキブリの足をくっつけて、その神経に電気刺激をあたえるとノコノコ動き出す。

うーん、これってサイボーグ??

■三浦先生はNASAでアポロ計画に参画したほどの人なのだけれど、何故かそのキャリアを放り出してロボット工学の世界へ。しかも、当時黎明期を迎えていた産業用ロボットには見向きもせずに2足歩行ロボットにのめりこんだ。

へそ曲がり、というかきっと好奇心の人なんだろう。

で、2足歩行ロボットの基礎を作り上げてしまうと、

何だ、ロボットったって人間の打ち込んだコマンドの通りに動くだけじゃん、と見切ってしまう。

そんなとき、エサにありつこうとコソコソしているゴキちゃんと目があって、そこに「意志」を感じて「コレだ!」とひらめいた。

というのがゴキブリ・ロボットに至った切っ掛けなのだそうだ。

■けれど、そこで先生は断言する。

結局、ゴキブリに「意志」は無かった。

■人が現れるとコソコソッと素早く逃げるその仕組みは、おしりにあるセンサーが微妙な空気流れの変化を捉えて、走れ!というコマンドを励起する自律機械的なものであり、こちらの様子を伺いながらスリッパを構えた瞬間にササッと逃げる、そこにゴキちゃんの主体的「意志」は存在しないのだ。

太田も言うように、どうしても我々は対象を理解しようとしたときに、動物やら昆虫にまでも擬人化をしてしまうクセがある。

でも実際にそこにあるのは主体的意図のない自律反応なわけで、意志の虚像を生み出すのは常に我々の意識の方なのである。

■と、すると我々の「意志」も実は虚像なのであって、神の目で俯瞰してみれば我々もやはりタダの自律機械に過ぎない、という仮説も浮かんでくるだろう。

ダーウィン以降、人間だけが特別な理由なんてどこにも無くなってしまったのだ。

現在、「ヒトの意識」と等価であることを示すチューリングテストをパスするような機械は出現していないし、

またそれが生まれる予兆も無い。

けれども、三浦先生が作りだす自律機械の延長線上に、もしかするとネクサス6(*1)があるのでは、という気もしてくる。

それは同時に「人間の意識とは何か」という永遠の問いに一つの結論を与えることになるに違いなく、

その日は意外に近いのかもしれない。

*1) P・K・ディックのSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(映画「ブレードランナー」の原作)に登場する自意識を持ったアンドロイド。ディックはこの小説の中で人間が人間である条件として共感能力を挙げている。

                                                        <2009.03.02 記>

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Photo ■ ロボット (岩波文庫) カレル・チャペック 著
    

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■ アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF) 
フィリップ・K・ディック 著
表紙が変わりましたね。何だか魔術書みたいです(笑)。

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