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2009年2月13日 (金)

■【映画評】 『チェンジリング』、クリント・イーストウッド監督。空白のときを取り戻す瞬間に。

ココログ主催の試写会に行ってきた。

チェンジリング、といっても昔のホラー映画ではありません、

念のため・・・。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.23  『 チェンジリング
          原題: Changeling 全米公開:2008年10月 (日本:2009年2月)
          監督: クリント・イーストウッド
      出演: アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコビッチ 他

※ ’チェンジリング(取替えっ子)’とは、妖精が子供をさらってかわりに醜い妖精の子を置いていくという北ヨーロッパ各地に伝わる伝説。

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■ストーリー■
1928年、ロサンゼルス。電話交換局で働くシングルマザー、クリスティン・コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)の息子が、ある日とつぜん姿を消す。そして5ヶ月後、イリノイ州で発見されたといって警察が連れてきた少年は別人だった。
自分は息子だと言い張る少年、クリスティンの必死の訴えにまったく耳を傾けない警察。一体ウォルターに何が起こったのか?
驚くべき実話にもとづく感動の物語。
(映画チラシより抜粋、編集)

 
■あっという間の2時間22分。

えっ!

という意外な展開が二重奏、三重奏となって重なり合いながら併走していく。

いったいこの物語はどこを目指して流れているのかという不安に駆られながら迎えたラストシーンに、

ああ、とタメ息がもれた。
   

■■■ 以下、本筋に入ります。ネタバレ注意 ■■■

■この映画は80年前に実際に起きた事件をもとにしているのだそうだけれど、そのあまりに現実離れした話に正直少し乗り切れなかった部分もある。

一体どこの世界に行方不明の5ヶ月の間に肉体的変化(?)が起きて背丈が7センチも小さくなった、なんていう与太話を本気で信じるヤツがいるんだろうか。

けれどアンジェリーナ・ジョリーの必死の訴えにも関わらず、ロサンゼルス市警察の担当警部は人違いであったことを頑として認めようとしないのだ。

1928年といえば昭和3年なわけで、特高警察ににらまれた思想犯の話なんかからすると、当時の官憲の理不尽は洋の東西を問わない、ってことなんだろうけれど、その後の展開も含めたあまりの人道無視に、怒りに震える、というよりも、ちょっと引いてしまう、という感じだろうか。

■中盤、警察の非道を暴こうとする教会の神父(ジョン・マルコビッチ)や、偶然のめぐり合わせによってウォルター失踪の手がかりとなる凶悪事件に突き当たる刑事(マイケル・ケリー)、口封じの為に放り込まれた精神病院の閉鎖病棟でジョリーの味方になってくれる女(キャロル・デクスター)といった、強い個性と明確な役割りを持った人物の登場によって、物語は前進させていく力を取り戻していく。

明日、きっと映画を見に行こうという約束をしたまま、不気味な取替えっ子をあてがわれ、悪夢のような体験に押し流されていくクリスティン。

彼女にとっては、警察や精神病院の理不尽さはもちろんとして、味方についてくれる神父も、無給で支援してくれる敏腕弁護士にしても、本当の思いに応えてくれる存在ではない。

ただ、ただ、ウォルターをその手に取り戻したい、

彼女の願いは、それだけなのだ。

■ゆっくりと進む路面電車の窓の外を流れていく風景。

ロサンゼルスの中心街を抜けていくT型フォード。

電話交換手のあいだをローラースケートで駆けまわるクリスティン。

どうもこの映画は、動く、流れるシーンが多くて落ち着きが無い。

また、主人公のクリスティンを捉える場面も、鏡や窓に映し出された虚像に焦点をあてたシーンが多かったように思える。

■クリント・イーストウッド監督にそういう意図があったかどうかはわからないけれども、結果として、不安定で落ち着かないクリスティンの心の状態に観る者を引き込んでいく、そういう効果はあったと思う。

そう、クリスティンは常に、

違う、これじゃない!

という思いに囚われていて、出口が見えない状態にさらされているのだ。

■事件から数年のときが過ぎ去り、新しい生活に歩みだそうとしていたその矢先、彼女のもとにある知らせが届く。

そこから続くラストシーンで、クリスティンの目の前にリアリティのある確かなものが拡がっていく。

あした映画を見に行こう、といった約束を果たせないまま、その痕跡にすら触れることの出来なかった息子・ウォルターが、その後にも確かに生きていたのだという証しを胸に、彼女は空を仰ぐ。

その表情の素晴らしさ。

妖精によってもたらされた’チェンジリング(取替えっ子)’という悪夢から解き放たれる、その一瞬に、この映画の2時間22分のすべてがあったのだと思う。

もし、アンジェリーナ・ジョリーがこの映画でオスカーをとるならば、間違いなく、このラストシーンによるものだろう。

                          <2009.02.13 記>

■映画 『チェンジリング』 公式サイト
●アカデミー賞 主演女優賞、撮影賞、美術賞ノミネート
●2009年2月20日(金)より全国ロードショー

   

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■STAFF■
監督・製作: クリント・イーストウッド
脚本 : J・マイケル・ストラジンスキー
製作 : ブライアン・グレイザー、ロン・ハワード、ロバート・ロレンツ
撮影監督:  トム・スターン
音楽 : クリント・イーストウッド
プロダクション・デザイン: ジェイムズ・J・ムラカミ
衣装 : デボラ・ホッパー



■CAST■
クリスティン・コリンズ     : アンジェリーナ・ジョリー
ウォルター・コリンズ     : ガトリン・グリフィス
グスタヴ・ブリーグレブ牧師 : ジョン・マルコヴィッチ
 
デイヴィス警察本部長    : コルム・フィオール
J・J・ジョーンズ警部     : ジェフリー・ドノヴァン
レスター・ヤバラ刑事     : マイケル・ケリー
 
ゴードン・ノースコット     : ジェイソン・バトラー・ハーナー
キャロル・デクスター     : エイミー・ライアン
S・S・ハーン弁護士     : ジェフリー・ビアソン
サンフォード・クラーク     : エディ・オルダーソン
  

    
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コメント

重いけど、見ごたえのある作品でしたね。

投稿: kemukemu | 2009年2月25日 (水) 21時19分

kemukemuさん、コメントありがとうございます。

>重いけど、
確かに観終わった後までズシンと後を引きずる映画でしたね・・・。
 
kemukemuさんの記事も読ませていただきました。
>ある儀式をすると、
>妖精がおいていった取替えっ子が消えて、
>本当の子を返してくれるという。
 
そういう話もあったんですね。
なるほど、そう考えてみるとさらに深みが増してきます。
どうもありがとうございました。
 
追記)そちらの記事にトラックバックさせていただきました!

投稿: 電気羊 | 2009年2月26日 (木) 22時08分

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