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2009年2月24日 (火)

■芸術とは作り手と受け手のそれぞれの胸の中で湧き上がる現象のことなのだ。『爆笑問題のニッポンの教養』 美術解剖学、布施英利。

今回のテーマは、美術解剖学。

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■ 爆問学問『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE062:「芸術は“カラダ”だ」 2008.2.17放送
東京藝術大学 美術学部 准教授 美術解剖学、布施英利。

■何故、人体の構造を知ることが美術につながるのか?

布施先生はそれを「モナリザ」の読み解きで伝えてくれる。

「モナリザ」の表情の持つ不思議さ、それはモナリザの顔の部分部分が別々の角度から描かれたものから成り立っていて、写実的な肖像画のように見えて実はピカソの描く肖像画のようなコラージュ的技法で描かれているというのだ。

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■『モナ・リザ』(部分) レオナルド・ダ・ヴィンチ (1503 - 1506)

■顔の全体は斜めに向いているのだけれども、右のアゴの骨は正面を向いていて、上唇は右に、下唇は左方向に向いている。また、左の瞳は左方向、右の瞳は正面と違う方向に向けられていて、どの方向からこの絵を見てもモナリザの視線を感じるように描かれている。

何となく変だな、というモナリザの不思議な印象の正体はそこにあるのだ。

■ダ・ヴィンチ自身、徹底的に人体を解剖し、観察し、デッサンし尽くした。

それは対象を正確に描くためではなく、人体の構造や動きを理解した、そのことによって対象のなかから浮かび上がってくる’何か’を捉える力、その「認識パターン」を自らの内に獲得するための努力なのである。

■芸術の面白さにはふたつあると思う。

ひとつは作家が作品を作り上げる過程で生まれてくる’何か’、ふたつめは作品と観る者との間に生まれてくる’何か’。

■目の前にある風景を見るとき、見る者が捉えるのはその全てではない。網膜から視神経を伝って大脳の視覚野に到達した信号の全てをその人が認識するわけではない。

認識とは、見る者の内側に既に作り上げられている認識パターンの重ね合わせであって、例えば人体の構造と動きについて知っている、認識パターンを持っている人のみが感じ取ることが出来る景色がある、ということだ。

■対象を「カタチ」として画用紙に描き出す行為、木の塊りをノミで削り落としていく行為、粘土を捏ね上げていく行為。

作家は試行錯誤しながら目の前にある’感動’を自らの内にある認識パターンの組み合わせとして探り、捉え、カタチにしていく。

その格闘のなかで身体感覚でしかなかった’感動’が、想像もしなかったカタチでみるみると姿をあらわしてくる、その瞬間のエクスタシーに作家は酔うのである。

それが、ひとつ。

■出来上がった作品はその時点で作家の手を離れ、自立した存在として在る。

その作品に観る者が対峙する、そこにもうひとつの面白さが生まれてくるのであって、それが受け手自身の認識パターンと共鳴することで初めて生じるものであるがゆえに、作家のなかで生じた感動とは由来を異にするものなのだ。

ふたつめの面白さは、観る者の極めて個人的な現象なのである。

■布施先生が究めようとしているのは、芸術作品を生み出す認識パターンという名のノミを研ぎ澄ますことであり、また、芸術作品と対峙する観客ひとりひとりの胸の内に感動を見出すための受け皿を用意することなのだと思う。

テレビというメディアが刹那的で、すぐに消え去ってしまうものだ、と布施先生が太田を挑発するのは、先生が取り組む「認識パターン」の依って立つところが人体というとても生々しいものであることに因るのだろう。

骨格の機能だとかそれをつなぐ腱の緊張感といったもの、それを伝えるにはテレビはあまりにも希薄な手段である。

■けれど太田の言うように、テレビの強みはその拡がりの大きさにあって、テレビの向こう側(お茶の間)に伝わる刺激そのものは希薄であったとしても、千人に一人、一万人に一人、その「パターン」に対してアンテナの敏感な人がいて、確かにその電波をキャッチする。

そういう可能性は否定できず、だからこそ太田はテレビというメディアを諦めない。

太田の’ひとつめ’の感動が、私の受け取る’ふたつめ’の感動とは似て非なるものだとしても、そこに何かが生まれるのであれば、それは伝わった、ということなのだと思う。

そして願わくば、私がこのブログを書くなかで生まれた何かが、インターネットという媒体をとおして誰かのなかに新しい化学変化を起こしている、そうあって欲しいものである。

                            <2009.02.23 記>

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■ 布施 英利 著 筑摩書房 (2008/06)

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コメント

電気羊さんブログは触媒作用のよう。。。
感動や楽しさはより大きく感じることができ、
怒りや憤りはより鮮明に時に冷静に受け止めることができます。

soko-tama.からのメッセージが、日々心地よい刺激となって
「化学反応」確かに起きてます!

投稿: 臨床検査技師 | 2009年2月25日 (水) 09時22分

臨床検査技師さん、こんにちは。

お褒めのことば、どうもありがとうございます。
表現者の端くれとして、最高にうれしいお言葉です。

かなり照れくさいですが・・・(汗;)。

投稿: 電気羊 | 2009年2月25日 (水) 10時43分

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