■ハドソン川の奇跡。エアバスA320、離陸上昇時バードストライクによるエンジン損傷からの生還。
15日午後3時半ごろ、ニューヨーク市のラガーディア空港を離陸直後のUSエアウェイズのエアバスA320型国内線旅客機(乗客150人、乗員5人)が、マンハッタン西側を流れるハドソン川に不時着水した。機体は川に浮いた状態となり、ニューヨーク市消防当局や沿岸警備隊が救助船を派遣。USエアウェイズ社は約1時間20分後、乗客乗員全員が救助されたと発表した。<yomiuri記事より抜粋>
■これは凄い。神技である。拍手喝采である。
現時点での報道によると、A320は離陸30秒後くらいに鳥の群れに遭遇しエンジンを2発とも損傷、ほぼ出力が出ない状態に陥ったようだ。
離陸時は急角度で上昇する為、この時点での急な出力低下は致命的。高度も取れていないので失速から回復する余裕も無く、中途半端な対応は即、墜落につながってしまう。
■ドン、という衝撃を受けた時にバードストライク(鳥との衝突)によるエンジン損傷だと機長がすぐに理解できていたかどうかは分からない。
けれども、即座に上昇を中止し失速に入るのを防いだ、もしくはすぐに回復させた(たぶん無意識的な)対応がまず一点。
そのときの高度と位置と機体の向きから、どこに機体を降ろすかを瞬時に決意して、同時にキャビンにいる乗客乗員に対ショック体勢をとることを指示した冷静さが一点。
そして実際に、この馬鹿でかくて重い機体をハドソン川に対して滑らかに着水させた超人的な技量が一点。
そのどれが欠けたとしても乗員・乗客155名を無傷で生還させる奇跡を起こすことは出来なかったであろうことは確かである。
■エンジンの破損が進行せずに機体や操縦系統の損傷に至らなかったこと、すぐそばに長い直線が取れ、かつ水面が安定した大きな川があったこと、船や橋などの障害物がなかったこと、周りの状況が良く分かる日中であったこと。
こういった「幸運」に恵まれたのも確かだけれど、何よりもかによりもベテラン機長の資質と能力と経験があったればこその奇跡なのである。
■着水後、氷点下6度を下回る外気温のもと、機体が沈没する前に救助を完了させた沿岸警備隊や消防局の迅速な対応も素晴らしい。
また、周辺にいた遊覧船なんかも救助に参加したようで、四の五の言わずにすぐ助けに入るところは、9.11でニューヨーク市民が体験したことがまだ生きているのかもしれない。
■離陸上昇中のジェット旅客機はものすごい勢いで空気を吸い込んでいるので、海鳥の群れに遭遇したときには、これも吸い込みやすいのも理屈である。
実際にバードストライクはかなりの頻度で発生しているようだ。
かつては1975年ケネディ国際空港でのDC-10のエンジン破壊、脱落事故のようなものもあったが、現在では鳥を吸い込んだ時の基準も確立され、大きな墜落事故はなかったように記憶している。
世界中で一日に何千回もの離発着があって、この事故一件だけで急に怖がる必要は無いけれども、致命的な事故が発生する確率がゼロではないということだ。
今回の事故を教訓に「その時」の対応について航空各社で共有し、操縦士の技量向上に活かしてもらいたいところである。
<2009.01.17 記>
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■ちょうどこの本を読み終えたところだった。共時性ってやつだろうか。
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