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2009年1月20日 (火)

■ドラマ『銭ゲバ』。貧しいって悔しいね、同じ人間なのにね。

期待以上。こりゃ、本物だわ。

__2

カネのためなら、なんでもするズラ。

という風太郎にしてしまったその幼少期の出来事と、平成大不況の閉塞を生きる日雇い派遣の現在がオーバーラップしながら進行する。

見るものをぐいぐいと引きずり込む力みなぎる第一話であった。

そのやりきれなさは、「銭ゲバ」が今の時代に対して非常にタイムリーな作品であることを再確認させる。

■毎朝のロッカールームで今日、解雇を言い渡されるのは自分なのではないかとびくびくしながらも、それに気付かぬように黙々と着替える日雇い派遣の男たち。

仲間意識があるように見えて、カネを貸してくれという話になるとスッと離れていく孤独感。

多少の脚色はあるにしても、現場の空気が生々しく活きている。

■お前らはいくらでも代わりが利くんだ、人間だと思っちゃいねーんだよ、という石丸兼二郎の現場監督はちょっとやりすぎかもしれないが、

貧しいって悔しいね、

何が違うんだろうね、あの家の人たちと。

同じ人間なのにね。

と、つぶやく風太郎の母の回想シーンと共鳴して、暗く湿った重たいものが心に沈みこんでいくのだ。

カネが無いからお母さんは死んでしまった。

風太郎の左目の傷に深く刻み込まれたその怨嗟は、自分を弟のようにかわいがってくれた新聞屋の青年を撲殺し、そして今日、貯め込んだカネを持ち逃げしようとした男を撲殺する。

ただ、カネが無かった、たったそれだけのことで、これほどまでの地獄に堕ちてしまうものなのか。

■それとは対照的に三國造船のお嬢様として何不自由なく育った緑(ミムラ)。

一見、わけへだてない優しいこころをもったお嬢様に見えるのだが、その正義感は、出された菓子をランドセルにつめて母親のためにもって帰ろうとする「窃盗行為」を断じて許さない、その幼少期の出来事で語られるように、彼女は極めて自分本位で、その本質は自己満足を得るための偽善に過ぎないのである。

だから、風太郎は緑を許さない。

■さて、第一話で状況設定が出来て、早くも風太郎は緑に接近。

顔のあざにコンプレックスを抱いている緑の妹の茜(木南晴夏)も巻き込んで、ドラマはハイスピードで進行していく予感がする。

これは楽しみだ。

   

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                           <2009.01.19記>
■追記■
松山ケンイチ、変な役をやらせたら最高だね。やっぱ上手い。
森迫永依の天才ぶりも相変わらずだけれども、
それにも増して、風太郎の父親を演じた、椎名桔平!
あの最低最悪の「人でなし」っぷりは100点満点でしょう!
   

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■ かりゆし58 さよなら (初回限定盤)(DVD付)
■このテーマ曲、いいねぇ。ぐっとくるねぇ。

   
■【原作】

Photo ■ 銭ゲバ 上   ジョージ秋山 著 幻冬舎文庫(上/下)
■早速、読んだズラ。
ここまで突き抜けた物語を他に知らんズラ。
 
この作品が描かれてから40年も経つのに
世の中まったく変わってない、どころか
どろどろの中身はおんなじなのに、
表面上は’清潔’になっているように見せかけている分、
今のニッポンの世の中は性質が悪いズラ。

     
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■STAFF■
原作 : ジョージ秋山『銭ゲバ』(幻冬舎文庫)
脚本 : 岡田惠和
演出 : 大谷太郎、狩山俊輔
   
音楽 : 金子隆博
主題歌 : かりゆし58 「さよなら」
   
プロデューサー : 河野英裕、難波利昭
制作 : 日本テレビ


  
■CAST■
蒲郡風太郎     : 松山ケンイチ
             : 齋藤隆成(幼少期)
   
三國緑(三國家長女): ミムラ
             : 森迫永依(幼少期)
三國茜(三國家次女): 木南晴夏
三國譲次(三國造船社長): 山本圭
桑田春子(三國家の家政婦): 志保
   
荻野聡(刑事)    :  宮川大輔
菅田純(刑事)    :  鈴木裕樹
  
蒲郡桃子(風太郎の母): 奥貫薫
蒲郡健蔵(風太郎の父): 椎名桔平
  
野々村保彦(伊豆屋店主): 光石研
野々村祥子(保彦の妻) : りょう
野々村晴香(保彦の妹) : たくませいこ
野々村香(保彦の姪)  : 石橋杏奈

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コメント

今シーズン1番のお楽しみです。

松ケンの数ある変な役の中でも、私は「セクシーボイスアンドロボ」のロボ役が結構好きでした。

斎藤隆成君もたまりませ~ん「流星の絆」では二宮君、
「砂の器」では中居君それぞれの子供時代を見事に演じ
映画「博士の愛した数式」のルート君もとってもキュートでした

投稿: 臨床検査技師 | 2009年1月22日 (木) 13時27分

臨床検査技師さん、おはようございます。

実はあんまり期待してなかったんだけど、私も今シーズン一番のお気に入りになりました。

「セクシーボイスアンドロボ」、面白かったらしいと終了後に知りました。残念!
「博士の愛した数式」の原作は好きなんだけど、そういや映画もありましたね。
気になります。

投稿: 電気羊 | 2009年1月23日 (金) 06時14分

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