■NHKスペシャル 女と男。人類は生命の仕組みを越えてゆくことが出来るのか?
やっと見たんだけど、結構深刻な話でした。
■NHKスペシャル 女と男~最新科学が読み解く性~
第3回 男が消える?人類も消える?2009.01.18放送
■人類存亡の危機が迫っているという。
①「男」を作り出すY染色体が滅びつつある。
②男性が作り出す精子の劣化が激しい。
この2点である。
■①滅びつつあるY染色体
一般の染色体やX染色体は、父母から受け継いだ2つの染色体を持つことによって、遺伝子の劣化や突然変異を修復可能になっている。
それに対して「男性」であることを決めるY染色体は対になる相手の染色体を持たない。
故に、Y染色体は父から息子へとコピーを繰り返すことによって遺伝子の劣化が積み重なってゆく。
それら意味を成さないエラーが失われていくことによって、今やY染色体が持つ遺伝子の数はX染色体の14分の1になってしまっているのだそうだ。
■Y染色体の消滅、つまり’男性’の消滅が500万年以内に起きる、それが明日起きたとしてもおかしくないという学者もいるらしい。
しかも哺乳類は男性の遺伝子にしか「胎盤」を作る遺伝子がなく、’男性’の消滅は即ち、人類が通常の方法では子供を作れなくなるということだ。
■まあ、ショッキングなことではあるけれど、「明日起きたとしてもおかしくない」のは、「Y染色体だけしか持たない子供」が生まれてくるということだろうから、それが急速に人類の主流を占めることは無かろうという意味で、まだまだ先の「危機」なのだ。
それよりも恐ろしいのは’精子の劣化’である。
■②急速に進行しつつある精子の劣化。
チンパンジーと人間の精子を比較した映像があったのだけれども、これが見事に様子が違う。
精子の濃度、元気度ともにチンパンジーの方が圧倒的に凄いのだ。もう、うじゃ~ってな感じで、さすがサル、精子の密度がケタ違いなのである。
■チンパンジーは発情期に乱交があって、いろいろなオスの精子同士の競争原理がはたらいて、濃くて元気のいい「選りすぐりの精鋭」が生き残っていく。
それに比べて一夫一婦制を選んでしまった人類は、他のオスの精子との競争が無い為に淡白でおっとりした精子の持ち主であっても、そこそこの’濃さ’があればオスとして生き残っていけるのである。
■やっぱしそのうち地球は「猿の惑星」になっちゃうのかね、
なんてお気楽なことを言っていられないのは、どうやら「一夫一婦制」説では説明のつかない事態が急速に進行しているからなのだ。
2001年のデンマークの調査によると、「1ml中の精子が2、000万個以下」という不妊相当の低濃度の男性が全体の2割、「4、000万個以下」の予備軍を含めると実に4割にも及ぶ。
全体の平均値も予備軍に極めて近い値にあり、日本での調査もそれと同等で、さらにフィンランドのデータでは1997年からの5年間に’必要な濃さ’の男性の割合が27%も減少したというのだ。
■その原因は未だ不明で、近い将来、我々が生きているうちに普通の妊娠が望めなくなってしまうことも十分にありえる話なのである。
とするなら、我々は生殖医療に頼っていかざるを得ないのかもしれない。
それは神の創り賜いし生命の仕組みに人間が本格的に介入していくということであり、同時に人類は新たなフェーズに入るということだろう。
■そこで思い出したのがリチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」である。
生命の本質は遺伝子であって、生物は遺伝子の乗り物であり、我々は遺伝子によって操られ、生かされている「もの」なのだ。
少し記憶はあいまいだけれども、こんな話だったように覚えている。
■けれども、ドーキンスはその締めくくりに「ミーム」という概念を提示し、我々に救いの余地を残している。
われわれ人間がその短い生涯の中で作り出した「もの」、そして人から人へと脈々と受け継がれていく「もの」。
ミームとは、人間が意識とコトバを手にすることによって可能になった、遺伝子に頼らずに、成長し、受け継がれ、進化する’文化’や’科学技術’という新しい生命のカタチなのである。
■つまり、進化したミームは遺伝子の支配に抵抗し、ついにそのくびきから逃れるところまで来たということだ。
そのとき、自らが生み出したミームに逆に支配されているというベタなオチにならないように、われわれは’意識’をしっかりもってミームを制御していかなければならない。
もし、手遅れでなければ。
<2008.01.30 記>
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■利己的な遺伝子 <増補新装版>
■ リチャード・ドーキンス 著 紀伊國屋書店; 増補新装版版 (2006/5/1)
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■’煩悩是道場’ さんの「NHKスペシャル「女と男」-Y染色体は消滅するらしいんだけど」
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コメント
精子の劣化が急速に進行しているのでせうか?~ヒトの精子の質が悪い(精子の80%以上に異常がある)のはずっと以前からかも?
射精のインターバルが短いと精子の濃度が薄くなるみたいです。何日かインターバルをおいてセックスしたほうが毎日セックスをするよりも精子の濃度が濃くなる訳です。
ヒトの精子の濃度が(短い期間で)薄くなっていると騒いでいたら、それは単に射精のインターバルが短くなっていただけの話だった場合には笑い事ではありません。
数十年という短い期間で(ヒトにとって)大きな環境の変化があったことは事実です。
そのような環境の変化が原因でヒトの精子の濃度が薄くなっている可能性もあります。でも、そのような環境の影響を受けているのが若い世代に限られているみたいな感じで~成人になってからも成長ホルモンは分泌されますし環境の変化が原因ならばオヤジ世代も同じように影響を受けている筈(?)。
フィンランドの、5年の間に精子の濃度が27%ダウンしたというのは19歳男子のデータ
みたいです。
番組は悪戯に危機感をあおり精子ビジネスをアジテートしているような感じがします。
投稿: bianism | 2009年1月31日 (土) 13時24分
bianismさん、コメントありがとうございます。
>19歳男子のデータ
へぇ、確かにどんな母集団なのか気にはなっていたんです。
もし本当なら深刻ですね。
でも仰るとおり危機感ばかり煽っても仕方ないですし、
それで儲けようっていう輩も気に食わない。
日本がアメリカみたいになるのだけは避けたいものです。
投稿: | 2009年1月31日 (土) 17時28分
倫理的な問題なので番組ではこのことに誰も言及していなかったみたいですが、ウシ(牛)は殆どが人工授精で繁殖していて日本には生きているうちに銅像がつくられたオスのウシがいます。
ヒトがこのように繁殖するのはどうか?というのは倫理の問題だから(技術屋その他諸々の専門外ではないから)関係ないという視点でないのは良いことだと思います。
投稿: bianism | 2009年1月31日 (土) 18時48分