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2009年1月18日 (日)

■【書評】『航空機事故50年史』、加藤寛一郎。根っからの飛行機好きに向けたメッセージ。

飛行機好きのみならず、機械技術者には是非とも薦めたい本である。

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■【文庫】 航空機事故50年史 ―第一人者がはじめてすべてを明かす
■加藤 寛一郎 著 (2008/4/17 講談社+α文庫 )

■航空機事故研究の権威、加藤寛一郎先生が自ら選んだ特徴的な88件の飛行機事故をもって、旅客機50年の歴史を俯瞰する試みである。

88件の事故のひとつひとつは2ページほどの中で簡潔かつ丁寧に語られ、読む者はその怒涛のようなシャワーを浴びることになる。

それぞれの事例がまた興味深く、その要因も機体自体が抱える問題や乗員の操縦の問題、整備、管制、気象、人間関係にまで及ぶ多岐に渡るもので、ちょっとしたショート・ミステリーとして味わうことが出来る。

■旅客機の歴史は、1950年代半ばから80年代前半にかけての「前期」に信頼性が確立し、1980年代後半から90年代前半の「中期」に弱点が露呈し始め、1990年代後半から現在(2008年)に至る「後期」に完成期を迎える。

航空業界は、その50年の歴史を通して数多くの事故を経験し、その原因を取り除くことで空の安全を確立してきた訳だが、それでもなお事故は無くならない。

それは「予想もしない」ことが起きるからである。

■例えば、

燃料を補給するときにキロ・グラムとポンドを間違えて、本来の半分程度の燃料で出発してしまい、1万メートルの上空で燃料切れになってしまった(1983年 B-767 カナダ)とか、

事故が起きても翼内の燃料タンクに突き刺さらないように設計されたパイロンが疲労破壊してエンジンが脱落、安全の為の構造が逆に事故を引き起こした(1992年 B-747 オランダ)とか、

与圧機能が故障し、警報が鳴って酸素マスクが降りてきたにも関わらず、機長を初めとした乗員はそれが機内の減圧によるものだと考えず、結局、酸欠で意識不明になり墜落した(2005年 B-737 ギリシャ)とか。

■加藤先生は「まさかの事故」は起こるけれども心配し過ぎることはない、という。

航空機の年間平均死亡者数294名に対して、自動車は日本だけで年間約7000名が死亡している。

確率論で考えれば、航空機は「十分に安全な」乗り物だとうことである。

■そうは言っても、走行速度が低くなれば低くなるほど自動車の「曲がる」、「止まる」という操縦性、安定性は安全サイドに動いていく。

一方、航空機は一定以上の対気速度と姿勢を維持していないと空中に浮いていることが出来ない。

特に高度が取れていない離発着時でのトラブルは致命的なことになりかねない。

航空機はその根本において危険をはらんだ乗り物なのである。

■もちろん加藤先生もそんなことは百も承知である。

むしろ、だからこそ操縦の自動化による操縦、整備のブラックボックス化や航空従事者の増加、担当の再分化による人的「質」の低下が進む現状を憂い、航空機を全体として捉えることの出来る「飛行機が好きで好きでしょうがない」人に是非ともこれからの航空業界を背負っていってもらいたい、という想いが溢れているのである。

加藤先生は根っからの飛行機好きなのだ。
    

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                          <2009.01.18 記>

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■【文庫】 航空機事故50年史 ―第一人者がはじめてすべてを明かす
■加藤 寛一郎 著 (2008/4/17 講談社+α文庫 )

     

Photo_4 ■ 飛行のはなし
■加藤 寛一郎 著 技報堂出版 (1986/10)
■零戦のエース・坂井三郎の必殺、左ひねりこみを航空力学で解明する!

  
   

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