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2008年12月 9日 (火)

■【書評】『日本語の歴史』。生きていることば。生きている文章への手がかり。

一見、題名はぶっきらぼうでチョット難しそうな感じなのだけれども、著者の人柄によるものなのか、とても分かりやすく、楽しめる本である。

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■『日本語の歴史』 山口 仲美 著

■だいたいにおいて、高校時代に勉強した「古文」、「漢文」なるものは苦手であった。

意味のよく分からないひらがなだらけのもじのられつと、これまた意味の良くわからない漢字ばかりの文字の羅列。

部分的に分かりそうで結局分からない、そのフラストレーションが嫌だったのである。

■けれども、この本を読んでいくと、移りゆく日本の時代の流れに沿って「ことば」が展開していく様子が、その時代の現在進行形として、しみじみと伝わってくる。

といって、「古文」、「漢文」が読めるようになるわけではないのだけれども、少なくとも、そこに生きた人たちに興味が湧いてくるということは、決して悪いことではないだろう。

その意味で、高校一年生くらいのときに、この本を読んでいればなあ、という勿体無さを感じた次第である。

■記録として「やまとことば」に漢字を割り当てた奈良時代、ゆるりとした平安貴族文化を匂わせる’かな’の時代、論理と簡潔さを重んじた鎌倉以降の武家言葉、近代のことばがほぼ形作られた江戸のことば。

歴史を学ぶ、ということは、今の我々が生きている「現代」を歴史に連なるものとして理解したときに、今という時代が、完了し確定されたものなんかじゃなく、その文脈の上に新しい歴史を展開している真っ最中なのだという、そこに気付くことなのだと思う。

過去に生きた人々の想いが、我々の「今」のなかに断片的に残っていて、そこに気持ちを向けてやれば、まだそれが生きていることに気がつくことが出来る。

今の言葉もまた、500年後の読み手に感じさせる何かを残しているに違いない、

その感動なのである。

  
■それはそれとして、もうひとつ感じたことがある。

はじめの方で、著者が

時間軸にそって展開していく「ことば」というものは、「絵画」とは別の表現手段なのである。

という意味のことを語っている部分があるのだけれど、

これに、ドン、と突かれたのだ。

■絵画は、そこに描かれたこころの動きを、見るもののペースで探っていき、感じることが出来る。

それに対して、ことばの表現というものは、「語り」であれ、「文章」であれ、それ自体のテンポというものがあって、聞くもの、読むものはそのペースに合わせることで、やっとその意味にたどり着くことが出来る。

■いや、確かに文章を読むことについていえば、途中で止まることも、戻ることも可能なのだけれども、それは書き手が本来意図した「こころの動き」が展開していくのを疎外するもので、たとえばDVDで映画を見るときに分からないからといって一旦停止や巻き戻しをすることで失われるものが確実にあるのと同じことである。

理解すること、と 味わうこと、は違うのだ。

■「書き言葉」と「はなしことば」の言文一致を目指した明治時代以降の苦闘の部分が、その難しさを強調している。

日本語のややこしいところは、表音文字と表意文字が組み合わさった「漢字かなまじり」であるところにあって、「はなしことば」に合わせて「ひらがな」で書けばよろしい、とした時に失われる情報、ニュアンスがあって、それは絶望的なまでに本質に関わる部分なのである。

■「はなしことば」を発するとき、それを聞き取るとき、「漢字」があって初めて、生きたことばになる。

落語の語り口を文章に起こしたときに、「ひらがな」ばっかりじゃあ格好がつかないし、調子が悪い。

その漢字も含めた広い意味でのリズム感が大切で、それが’すべて’といっても過言ではないだろう。

理屈では説明できないのだけれど、活きのいい文章を生み出すコツのその手がかりが、ちょっと見えたような気がして、それだけでも大満足な本なのであった。
   

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                           <2008.12.09 記>

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■『日本語の歴史』 山口 仲美 著 岩波新書(2006/05)
  

   

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■日本語は時代の空気を映し出して変化する「生きもの」なのだ。『爆笑問題のニッポンの教養』 日本語学、山口仲美。

           

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コメント

以前、子供たちが中学校でお世話になったアメリカ人の英語助手の先生に「漢字・ひらがな・かたかな等の何種類もの文字(表現方法)がどうして日本にはあるの(残ったの)?」って聞かれ、
答えられなかった経験がありました^^;
その答えが見つかりそうな1冊ですね。

投稿: 臨床検査技師 | 2008年12月10日 (水) 17時28分

臨床検査技師さん、こんばんは。

その辺の話はバッチリ書いてあります。
漢字を取り入れたときにその音を日本語の発音に当てはめた音読みと、漢字と同じ意味のことばに当てはめた訓読みの2通りの読み方を持ったことが、日本語が複雑になった原因だという話です。
外国人にしてみれば、めんどくせえ、なんでしょうけどね。

投稿: 電気羊 | 2008年12月11日 (木) 20時46分

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