■語座、霜月会。対面と、同化と、考える’わたし’。
「霜月会」と題した、語座の勉強会を観させてもらった。
■場所は井の頭線、駒場東大前の閑静な住宅街。ふつうの高級住宅っぽいお宅の地下に作られた超ミニ・コンサートホール「ムジク・ピアフォーヌ」。面白い空間でした。
■勉強会とはいっても、木戸銭1,000円也のミニ公演といった試みで、内輪の勉強会から外に飛び出して是非とも一般の人に聞いてもらいたい、という主旨のようである。
読み手は4人。
小さなステージに置かれたスタンドに本を開き、それぞれ15分ほどの短い物語を「読み」、「語る」。
それぞれの語りを聞いて素直に感じたことを短く書きとめておこう。
■『ストーカー』 作・森江 賢二 語人・宮垣 静佳
しつこくつきまとわれていると相談に現れた女が、その状況を語るうちに・・・。という話なのだけれども、世界が入れ替わる場面がきれいに展開された。
それだけに転調の後の余韻に不安定さが残ってしまう。
そのあたり、ひどく難しい題材であったようにも思える。
■『父の手』 作・石田 衣良 語人・西田 貴史
仕事をやめる決意をこころに帰郷した男と、それを迎える父親の深い思いの人情話。
目を閉じて聞いていると情景が自然と湧き上がり、男を追いかけてきた女の、そのまた違った色調のあたたかさが彩りを添える。
響きのいい、けれど少しクセのある声色が印象的であった。
■『ボディチェックが終わらない』
作・高松 永佐 語人・稲垣 文子
旅行先で病気に倒れた妻を迎えにいく、という父親をひとりで行かせるのが心配で付き添った世話焼きの娘を待ち受ける悪夢の話。
母親が待っている旅先というイメージをポンとおいていながら、一向に前に進まない。
というか、あっちこっちに引きずり回されて、いったいどこに流れていくのか分からない居心地の悪さ。
あ、この不安な感覚を伝えたかったのか、と気付いたときに
いつの間にやら落ち着くところに納まってしまう。
予測不可能の不安感と、その落ち着きどころの感情の質的ギャップをしかと味あわせて頂いた。
間の取り方も、予測を半歩ずらされた感じで効果的であった。
■『旅する本』 作・角田 光代 語人・栗田 圭
古本屋で売り払った本にまつわる不思議な話。
手放した本が10年、20年の時間をおいて異国の古本屋で待ち構えているなんていう、とてもアリエナイ話なのだけれど、そこを上手く引き込む手錬である。
語り手は、聞いている’わたし’に対面して何かを伝えようというのではなく、語り手と’わたし’が同じ方向を向いて歩んでいる。
その感覚が心地いい。
■さて、締めて4つのお話を聞き終えた。
と思ったら、今回の案内人・語座 座長、槇 大輔さん自ら、読み語りを聞かせてくれた。
いわゆる「取り」、というヤツでしょうか。
■『車坂』 作・宮部みゆき 語人・槇 大輔
「芸」っていうのはこういうものなのか。
語り手はありありとそこに在るのだけれど、感じない。
考える’わたし’は最早そこには無く、物語の世界に漂っている。
「落ち」の瞬間に、ふと我に返る。この爽快感。
いや、もうこれ以上 語れません。
ごちそうさまでした。
<2008.12.03 記>

ミステリー傑作選・特別編〈6〉自選ショート・ミステリー(2) (講談社文庫)
宮部みゆき 「車坂」収録
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