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2008年11月23日 (日)

■「トンボの世界」と「ヒトの世界」をつなぐ進化の仕組み。『爆笑問題のニッポンの教養』 航空工学、東 昭。

今回のテーマは、航空工学。

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■ 爆問学問 『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE055:「『飛行少年』と呼ばれて」 2008.11.18放送
東京大学名誉教授・静岡文化芸術大学客員教授
航空工学 東昭(あずま あきら)。

■日本を代表する航空力学の権威といえば、

故・木村秀政先生、東昭先生、加藤 寛一郎先生。

思い浮かぶのはこの御三方。大御所中の大御所である。

■そうですか東先生、81歳になられましたか。

今は静岡のトンボの楽園の近くにいらっしゃるようで、ああ、こういう年の取り方をしたいなあ、ととてもうらやましい限りです。

爆笑問題とのトークの話題も、航空力学というより「飛ぶことそのもの」に重点がおかれて、「トンボになりたかった少年」らしい番組でありました。

■中でも印象的だったのは、死ぬと分かっていながらオホーツクを目指すウスバキトンボの話。

ウスバキトンボは赤トンボに似たちょっとくすんだ黄色っぽい胴体をしたトンボである。

Photo
■ウスバキトンボ

このトンボは南国で生まれた後に北上を続け、北海道の北の大地で寒さの為に死んでいく。

住み心地のいい南国に留まっていればいいものを、何故北を目指すのか。

■東先生は、いつかオホーツクが棲みよいところになる日の為に、その一見虚しく見える挑戦を繰り返しているのだという。

それに対して個人の幸せが優先される「ヒト」ではそうはいかない、と寂しげに語る先生は、そこにひとつの美学をみているようである。

けれど、このあとに続く話の展開は、実はそうでもないのでは、という希望を抱かせる。

■月へ行きたい、と先生はいう。

行って還ってくるだけじゃなくって、月で子供を生む。

それが「月人」。

さらに火星へ行って生まれた子孫が「火星人」。

そうやって40億年後に太陽が赤色巨星になる前に、太陽系を飛び出して我々人類が「宇宙人」になる。

宇宙人は他所の星からやってくるものではなく、我々がなるものだ。

そういうビジョンを先生は語った。

■だとすれば、既に我々は100年の視点でみればウスバキトンボの果敢な挑戦と同じことをしているのではないか。

改めて月を目指そう、アポロ計画の先へ行こう、という動きは実際にNASAの月面基地計画として少しずつ現実のものになろうとしている。(2006年末の計画では、2020年着工、2024年完成予定)

ひとりの人生の中では見えてはこないけれども、「世代を繰り返していく歴史の中での挑戦者」という意味では、ウスバキトンボも我々人類も、生活圏を拡大していこうとする同じ特性を備えた兄弟なのである。

あらゆる生命共通の祖先、この地球にはじめて生まれた生命が備えた基本戦略。

それが、今、この地球にいる生きとし生けるすべての生命が受け継いでいると想像し、そこに深い宇宙に浮かぶ銀河系の姿を重ね合わせると、軽い目眩とともに不思議な感覚につつまれる。

■というところで、もう一度現実に戻ろう。

東先生の宝物。

高いところから落としてやると素晴らしくキレイに滑空する「空飛ぶ種」、アルソミトラ・マクロカルパの話も「自然」と「物理学」の関係性を考える上でとても面白い。

Alsomitra_macrocarpa
■全翼機のような形をしたアルソミトラ・マクロカルパの種
(滑空比 4 だそうです。)

■このアルソミトラ・マクロカルパの種の位置が不思議で、全体のカタチを飛行機と見立てたときに常に航空力学的に最適な位置に重心がくるような位置にある。

私は神様は信じないけれども、どの種を取ってみても最適な位置に種がある不思議をみると神様は航空力学を知っていたんじゃないかと考えてしまう、と東先生をうならせる。

■けれど複雑系の視点で考えると、その「神様は航空力学を知っていた」というのもあながち間違っているわけではないのかもしれない。

航空力学は流体を扱うがゆえに複雑で難しい学問だ。

だから風洞実験で実際の空気の動きを確認しながら最適値を探っていく。

実際の進化もそれと同じことをしているのだろう。

■神がランダムにサイコロを振って最適値を生み出す可能性なんて、サルをタイプライターを打たせて、そこからシェークスピアの物語が出てくるくらい確率的にあり得ない。

それはキリンの首は何故長いのか、といったとき、「長い首」を支える「強い心臓」も同時に進化する可能性はあまりにも低く、突然変異と自然淘汰ではとても説明できない、というのと同じ議論である。

■けれど、その時われわれは2つの点を見逃している。

ひとつは、①「神は何度でもサイコロを振ることが出来る」ということ。

もうひとつは、②「生存する上で『意味』のあるの目の組み合わせ(意味のある系・システム)が出たときに、その組み合わせが生む『意味』は生き残り、その『意味』を保存しながらその延長線上で最も安定したカタチに収斂していくだろう、ということだ。

■アルソミトラ・マクロカルパの種で言えば、

その祖先に当たる生物学的に「安定した」品種(システム)があって、全体のカタチを決める「変数A」と種の位置という「変数B」の組み合わせについてランダムに突然変異(サイコロを振る)が発生する。

数千年、数万年、サイコロを振るうちに、たまたま種を遠くに飛ばすのに具合がいい組み合わせ(『意味』のある組み合わせ、系、システム)が生まれてくる(上記①)。

数万年に渉る挑戦者たちの死屍累々を背後にして、その一つの種は発芽し、生き残る。

今度は、生き残った種の変数Aと変数Bの組み合わせ(新たなシステム)を維持しながら、その前提条件の範囲の中でサイコロを振ることが出来る。

俯瞰して眺めてみれば、その繰り返しによる進化の姿は、あたかも「航空力学的最適値」を自律的に探し当てていくように見えるだろう(上記②)。

■キリンの首の話でいえば、変数A「首の長さ」と変数B「心臓の強さ」がちょうどいい組み合わせで少しだけ首の長いシカ(?)が突然変異で生まれてきたとする。たまたま木の枝の高いところの葉っぱを食べる競合者がいなくて生き残る(上記①)。

その変数A、Bの「組み合わせ」、「関係性」、つまり「首の長さ」と「心臓の強さ」のバランス(系)を維持しながら、進化の流れからすると極めて短い時間の中でいろいろな首の長さの「キリン」が突然変異として誕生していく。

それに対して、そこに生えている樹の高さと、重力に対する骨格強度的な限界という条件のもと、最適な「首の長さ」、「心臓の強さ」に収斂し、そこに安定する。

それが今われわれが見る「キリン」の姿だ、という考え方。

■そこで、その進化のモデルを「『群』としての生命の進化」と重ね合わせることはできないだろうか。

「北へ」へと挑戦し続けるウスバキトンボと、「月へ」と挑戦しようとする人類。

たとえ無駄だと思える挑戦であっても、いつか来る新しい状況の為に維持すべき方向性がある。

我々の胸に埋め込まれた「何か」がそれを突き動かす。

それがこの世界を律するものであり、

「神」、なのではないだろうか。

                       <2008.11.22 記>              

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■ トンボになりたかった少年 (ポプラ・ノンフィクション)
■1984年に放映されたNHK特集『トンボになりたかった少年』の書籍化。(残念ながら絶版のようです)
日本有数のトンボ生息地として有名な静岡県桶ケ谷沼の話と、古代の大型トンボ(メガネウラ?)の模型を実際の羽ばたき方を再現させて飛ばせて見ようという話について、東昭先生を中心に語った番組だったように記憶しています。(ん~、メガネウラの模型は別の話だったかな?24年も前だから流石にごっちゃになってます。)

     

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■自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則
■スチュアート カウフマン 著 ちくま学芸文庫 2008/2月

      
■【書評】
『自己組織化と進化の論理』 S・カウフマン。今、生きていることは偶然ではないのだ。

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