■拡張された感覚もまた自己なのだ。『爆笑問題のニッポンの教養』 ヒューマンインターフェース学、稲見昌彦。
今回のテーマは、ヒューマンインターフェース学。
■『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE052:「超能力お見せします」 2008.10.28放送
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
ヒューマンインターフェース学 稲見昌彦。
■人間の体内を透視する装置、高速で動くものがゆっくり動いて見えるメガネ、納豆を吸ったときの感覚を再現するストロー、水と油の境界面に手応えを与える装置・・・。
稲見先生はドラえもんのごとく次々と不思議な道具を見せてくれる。
先生の狙いはコンピューターの発達によって失われてしまった五感を取り戻すことなのだという。
技術の発展は人間が知覚出来ないことを捉えることが出来るようになった。
けれど、それはパソコンの中にあるデータに過ぎず、カラダの感覚としてそれを捉えることが出来ない。その疎外された感覚をデータと結びつけるインターフェース。それが稲見先生が取り組んでいるテーマなのである。
■けれどそこで太田が切り込む。
それは「ウソ」じゃないの?
実際に水と油の間に手応えがないのが現実で、そこに「感覚」を与えることが果たして能力の拡張ということになるのか、むしろ感じ取ることが出来ないものを想像する自由を失わせてしまうものなのじゃないか。
■その通りだとおもう。
稲見先生がやっていることは「リアル」ではない。
けれども意味が無いかというと全くそんなことはなく、それにもかかわらず、人間の知覚能力を大幅に拡大させるというその意味は大きい。
■われわれはごく普通のこととして自動車に乗って一般道を時速60kmで走行する。
「いいクルマ」に乗ると、アクセルを踏み込んでいくときに右足に受ける感覚、ハンドルを切るときに受ける手応え、ブレーキの踏み応え、
こういった感覚とクルマの挙動やカラダに感じる加速度の変化がしっくりと連動する。
それがクルマとの一体感、というやつであり、そのときドライバーの「自我」は60km/hで走行する自動車全体に「拡大」しているのだ。
■だが、実際に動物としてのわれわれ自身は60km/hで走ることは不可能で、その感覚はクルマに乗ることによってはじめて得られる「ニセ」の感覚だ。
けれどもその感覚は確かなリアリティをもって感じることが出来る。
それこそが「人間の知覚能力の拡大」なのではないだろうか。
■例えば、患者から遠く離れたところでロボットとシミュレーターを介して行われる遠隔手術。
1mmの幅の中で行われる微妙な作業に対して、バーチャルの世界で10mm幅に拡大して、そこに人工的な「手応え」を与えてやる。
そうすれば、どんな超微細な難手術でも、そんな技術を持たない普通の外科医の能力の範囲内で対応することが可能になる、なんてことが実現するかもしれない。
その時、普通の外科医の能力はブラックジャック並みにまで「拡大」する。そしてその拡大された感覚を受ける「自己」もまた拡大し、ブラックジャックが見ている領域を覗き込むことが可能になるのだ。
■だから「ウソ」でもいいのである。
1mm幅の世界を10mmに拡大して知覚することができるとすれば、それは立派な「知覚能力の拡大」である。
その意味は、ロボット手術には可能な0.1mm幅の正確な制御に追いつけない人間の感覚を、その高みにまで引き上げることにある。
それが人間を置き去りにして発展する技術と生身の人間をつなぐ「インターフェース」の意味であり役割なのである。
一見、はて?と思わせる稲見先生のびっくり道具ではあるのだけれども、突っ走る技術とのギャップに悩む場面は至るところで発生しているに違いなく、そこに潜在する可能性はとてつもなく大きいのではないだろうか。
<2008.11.03 記>
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コメント
>1mm幅の世界を10mmに拡大・・・
がかかせないお年頃?には
実験室では、もはや中近両用
今すぐ欲しいびっくり道具です。
1mm単位のカッティングなど手作りの多い実験室では
以前にも増して、人間の限界を感じる今日この頃です(汗)
投稿: 臨床検査技師 | 2008年11月 4日 (火) 16時46分
臨床検査技師さん、こんばんは。
最近、小さなものを目の前に持ってきても
焦点が合わないのですが、
これって老眼!?
ですよね・・・。
投稿: 電気羊 | 2008年11月 4日 (火) 18時56分