■太田的空想と科学的空想に境目はあるのか。『爆笑問題のニッポンの教養』 X線天文学、小山勝二。
今回のテーマは、X線天文学。
■『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE051:「宇宙を駆けるX」 2008.10.21放送
京都大学大学院理学研究科教授、
宇宙総合学研究ユニット長、X線天文学 小山勝二。
■今年の3月、京大での公開討論会。
いつだって若い奴らの「空想」が従来の考えを打ち破ってきたのだろうとする太田の論に、現実的な論議じゃないと対立した天文学の大御所、小山勝二さんが今回の先生である。
■小山先生はX線天文学のオーソリティで、銀河の中心には巨大なブラックホールがあるのではないか?という仮説を裏付ける観測をおこなってそれを実証するなど、大きな成果をあげてきた方なのである。
で、ばりばりの実証主義者かというと、どうも少し様子が違う。
■先生が爆笑問題の二人を出迎えたのは平安時代の陰陽師、安倍晴明を祭った晴明神社。
今、研究者たちがX線でその姿を調査している超新星爆発残骸(AN1006)は、はるか1000年前に安倍晴明の次男が観測した超新星爆発(スーパーノバ)のその後の姿なのである。
こういうあたり、ロマンチストであることを隠せない小山先生なのだ。
■宇宙が生命だったら、とか、誰かの脳みそだったら、なんていう空想を繰り出す太田に対して
「理性的になって欲しい」という割に、
先生は、太田の説は「直感」的におかしい、という。
自然は人間の想像力など遥かに超えて豊かかもしれない
という、師匠のブルーノ・ロッシの言葉をあげたあたりで、先生自体も実は「空想好き」であることが遂に明らかになる。
■では、太田の空想と小山先生の空想との違いは何か。
小山先生自身は、「勝算のある空想にしか興味が無い」
という。
直感的に、こうじゃないかな、と思った宇宙の姿を観測によって実証する、それが小山先生の喜びなのである。
■たぶん、その前に「これは面白い、どうなってるんだろう?」という強烈な好奇心が先行しているのではないだろか、とおもうのである。
超新星の爆発の後の暗闇には何かがあるに違いない。
そういった「実際の現象に対する好奇心」が起点になって、空想を働かせ、観測し、実証する。
そこには確かに自然・現実との「対話」がある。
そこが太田の空想との決定的な違いなのだと思う。
■宇宙が生命だったら、とか、誰かの脳みそだったら、というイメージは決してつまらないものではなくて、それは手塚治虫が火の鳥で見せてくれた目くるめくファンタジーと同質のものである。
だが、そこには現実の自然とのあいだの会話があるわけではない。
それは、自然から受けた印象を脳という「自己の宇宙」の中で成長させ、拡げていったモノローグなのである。
空を見上げて、その雲のカタチから物語を紡ぎ出す詩人のこころなのである。
■だから小山先生の空想も太田の空想も、ともに感動的なものになりうるのだけれど、かたや現実世界との繋がりを重要視し、かたや現実世界からの跳躍を重要視する。
その意味で、両者は決定的に異なる性質をもっているのであって、話がかみ合わないのも当たり前のことなのだ。
■惑星の不可思議な動きを好奇心の起点としてコペルニクスの地動説が誕生し、光の速度が不変であるという観測結果に好奇心を抱いたアインシュタインによって相対性理論が誕生した。
というところからすると、科学における「発想の跳躍」は単なる空想から生まれるものではなく、現実における不思議な現象に対する好奇心から出発するもののようにも見える。
■ここから先の時代の「跳躍」において、太田流の詩人的脳内空想が切り札になる日が来ないとは言い切れない。
けれど、まあ、そんなに大上段に振りかぶらずとも、
その空想は科学ではないが芸術である。
それでいいんじゃないかと思うのだが、如何?
<2008.10.28 記>
■宇宙の事典―140億光年のすべてが見えてくる
■買っちゃいました。
写真だけでなく、きれいなイラストが満載でとても美しい本です。
小学生の頃に学級文庫で読んだ「うちゅうのなぞ99」みたいな本の時代から随分と進化してしまった最新の宇宙の姿に驚いた。自然は人間の想像力など遥かに超えて豊かもしれない、というブルーノ・ロッシの言葉には強くうなづけます。
■JAXA宇宙研・X線天文グループ・記事
■藤原定家の超新星残骸は、宇宙線加速の実験室(2008.06.05)
■1000年前に安倍晴明の次男が観測した史上最も明るかった超新星爆発(スーパーノバ)、その超新星爆発残骸(SN1006)の観測についての記事です。
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