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2008年8月21日 (木)

■NHKスペシャル『果てなき消耗戦 証言記録・レイテ決戦』。苦しむのはいつだって「個人」なのだ。

終戦記念日の夜、心に突き刺さる特集を見た。

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■NHKスペシャル『果てなき消耗戦 証言記録・レイテ決戦』
<2008.08.15放映 8.29(金)深夜・
再放送予定>

■大東亜戦争における日本軍の「失敗」について語られることは非常に多い。

制海権、制空権を抑えられ補給路が確保できないまま8万もの将兵を送り込み、実にその97パーセントを「犬死」させたフィリピン・レイテ島の戦いもその一つである。

しかし、そこで8万人の兵士が戦死したという記述には、そこで繰り広げられた地獄を伝える力はほとんど無い。

歴史書や教科書は、そこに生きた人間の気持ちを伝えるには余りに無力なのである。

■今回の特集は、そのレイテ島の戦いの地獄に巻き込まれた日本兵、米兵、フィリピンの現地人の古老たちに重たい口をひらいてもらい、思い出したくない過去について語ってもらう、というスタイルをとっていた。

その「個人」に立脚したスタイルには心を揺さぶる強い力があった。

■アメリカの軍艦からの容赦ない艦砲射撃。圧倒的な米軍の戦力に押し込められる日本軍。食料、弾薬が不足する中での理屈に合わない「陣地絶対死守」命令。弾薬が底を尽き、相手に射殺されることが分かっていながら突撃していく「バンザイ突撃」。

ジャングルに這う蟲を生で食らうことができずに飢え死にしていく戦友たち。そしてそれを食らった者に襲い掛かるアメーバ赤痢。

■狂気としか思えない「バンザイ・アタック」に怯えて塹壕のなかで震えて眠る米兵たち。

その狂気を振り払うように塹壕の中でうずくまる日本兵を焼き払う火炎放射器。

「何故、戦友を殺すのか!」

と怒りのままに米軍に突撃していく日本兵。

補給がない分は現地調達せよと無理をいう大本営の命に従ってレイテ島の原住民の食料を奪い取り、現地人たちの敵意を増幅させていく日本軍。

この戦争を動かしているマッカーサーや大本営とはまったく違った個人のレベルで、兵隊同士のあいだで黒く増殖していく悲劇的な憎しみ合いがそこにある。

■セブ島に逃れて生き残った900人の日本兵。

そのひとりである老人の言葉がこころに重くのしかかる。

「今まで、親兄弟にもレイテの話はしなかった。

戦争が終わって初めて涙を流しましたよ。」

■レイテに限らず、戦時中に苦労をした人は、なかなかその体験を語ろうとはしない。

けれど、「戦争」というものを知る上で、それを体験した人たちの声ほどその現実を強く伝えるものはない。

そんな体験者も80代半ばを過ぎようとしているわけで、あと10年もすれば語るものは居なくなってしまうであろう。

■テレビやネットの映像によって戦争がゲームのような無機質なものに変容してしまった現代において、その「生」の力を失うことは社会として絶望的なことを意味しているのかもしれない。

それは戦後63年という表現が消え去り、新たな「戦前」へと世の中が流れていく悪夢の始まりなのかもしれないのだ。

「世界の平和を維持する活動」に貢献する、という言葉がもつ心地良い響きには慎重に構えなければならない。「私」という個人を抜きにして考えてはいけない。

■戦争とは個人のレベルでいえば所詮殺し合いであり、平時の優しい人間性を容易にマヒさせる恐るべき「状況」なのだ。

番組の終わりの方で、当時16歳の少女であったフィリピン人の女性が語った話に心を締め付けられた。

瀕死の状態でふらふらと山から降りてきた日本兵は、出くわした彼女に対してポケットから写真を取り出し、これを日本に送って欲しいと懇願した。

その写真には二人の子供を抱えて妻とにっこり笑う、その兵士が写っていた。

その笑顔と今、目の前にいる痩せ細った無残な日本兵の姿のギャップが激しくて、強く記憶に残っているのだという。

レイテの密林で亡くなっていった8万人の将兵ひとりひとりに、そういった物語があったに違いない。

死の淵に立って、戦闘の高揚からふと我に返ったとき、悔しかっただろう、悲しかっただろうその気持ちを想像するに、もう言葉さえ浮かばないやるせなさに沈み込む。

■民族だとか、宗教だとか、経済だとか、そんな社会的なことの前に、「個人の感覚」を大切にしたい。

女子高生的センチメンタリズムと嗤われても構わない。

それが大局の事象であったとしても、結局、苦しむのは個人なのだから。

                           <2008.08.20 記>

■NHKスペシャル 番組HP
『果てなき消耗戦 証言記録・レイテ決戦』
   

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コメント

小説「レイテ戦記」の作者、大岡昇平さんの「歩哨の目」という短編が、確か中学の国語の教科書に載っていた記憶があります。
夜の闇の静けさの中での極限の緊張感や、はりつめた恐怖を感じ、無性に怖かった事を覚えています。
戦争の悲劇は、どんな形でも、自分達なりに確かに伝え続けていかなければならないのだと、あらためて思います。

投稿: 臨床検査技師 | 2008年8月22日 (金) 00時09分

臨床検査技師さん、こんにちは。

涙をこらえながら訥々と語る体験者の映像が
顧みられなくなったとしても、
せめて一兵卒、一市民の戦争体験を語った小説くらいは
語り継いでいきたいものです。

投稿: 電気羊 | 2008年8月22日 (金) 09時50分

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