■映画 『300<スリーハンドレッド>』。いくぜ、野郎ども!
何もかもが、良い意味で大仰なのである。
No.16 『 300 <スリーハンドレッド>』
監督: ザック・スナイダー 公開:2007年6月
出演: ジェラルド・バトラー レナ・ヘディ 他
■物語が陳腐だとか、CGがイマイチうそ臭いとか、そういうことはどうでもよくて、
禍々しき異界ペルシア100万の軍勢を迎え撃つ、スパルタ300人の精鋭たちの闘い、それ自体がこの映画のすべてである、といっても過言ではない。
■ストーリー■
紀元前480年、スパルタ王レオニダス(ジェラルド・バトラー)は、ペルシアの大王クセルクセス(ロドリゴ・サントロ)から服従の証を立てるよう迫られる。そこで、レオニダス王が取った選択肢は一つ。ペルシアからの使者を葬り去り、わずか300人の精鋭たちとともにパルシアの大群に立ち向かうことだった。(シネマトゥデイ)
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■
■そんなアホな!
と思ったのだが、現実は空想より奇なりで、ヘロドトスの「歴史」第7巻に「テルモピュライの戦い」として収められた史実なのだそうだ。
100万対300人隊というのは少し大げさで、実際にはペルシア遠征軍10万対スパルタ重装歩兵300人と他の都市の兵1~2000人。
とはいえ2桁も違うわけで、恐るべき兵力差である(出典:Wikipediaにつき注意方)。
それでペルシャ軍を3日間に渡って食い止めたというのだから、そりゃあ『伝説』になっても当然といえよう。
■物語はスパルタの王、幼いレオニダスが「スパルタ式」で鍛え抜かれ、立派な兵士に成長したことを認められて王位に付くところから始まる。
このあたりの「むかし話」的語り口には、ぐいぐいと引き込むチカラを持っている。
けれど、そこから先の物語の展開が歯抜けの紙芝居的というのか中途半端な印象は拭えず、正直少しだれるのだけれど、ここは我慢して通り過ぎるべし。
服従を迫るペルシャの使者を井戸に叩き落し、さて戦争じゃ!となるのだけれど、
祭りの最中の出兵はイカン、という神官のお告げにより全軍でペルシャ軍に当たることは禁じられ、やむなくレオニダスは手勢の精鋭300人と共に出陣する。
海岸線に峻険な山が迫って進路が狭く地理的に優位なテルモピュライに陣を敷き、大軍勢の数的優位を鉄壁の防御で凌ぐという作戦である。
■さて、ここからが見せ場の連続。
津波のように押し寄せるペルシア軍をファランクスの密集隊形で受け止め、押し返し、槍で突き、海へと突き落とす。
接近戦は分が悪いと見るや、ペルシャ軍は弓矢を一斉に放ち、レオニダスたちの上に天を黒く染めるような矢の雨が降り注ぐ。
そんでもって、仮面を付けた不死部隊やら、雲突くような大男やら、サイやら、ゾウやらと次々に奇怪な新手がスパルタ軍に襲い掛かる。
この「どこまで行くの!?」
的な畳み掛けるような展開が最高にいい!
迫力を通りこして、もう、お笑いの世界に踏み込んでいるのだ。
■不死部隊(影の軍団にあらず)
■凶暴な大男
■サイを仕留めるシーンが最高にカッコいい。
■そんでもって次々と襲い掛かるペルシャ軍を跳ね除けるスパルタ兵士も素晴らしい。
その鍛え抜かれたマッチョな肉体を見せつけて、バッタばったと敵をなぎ倒していく(あれ、重装歩兵の甲冑は?)。
「マトリックス」的高速度撮影(スローモーション)の連発なのだけれども、そのスピードを変幻自在に操ることで、敵の刃がアタマの上をかすめていくような、生の「感覚」をえぐる感じ。
ちょっとクドイ気がしないでもないが、ここまで畳み掛けられては降参せざるを得ないだろう。
■空を黒く埋めて襲い掛かる大量の弓矢にしろ、サイやらゾウやらの波状攻撃にしろ、クド過ぎるスローモーションにしろ、何しろすべてにおいて大袈裟なのだ。
ペルシャの王様クセルクセスも、悲しき傴僂男エフィアルテスも、
すべてが過剰、すべてが大袈裟。
けれどそのマンガっぽい大袈裟な分かりやすさは、古代ギリシャという神話と歴史が渾然と入り混じった世界を描くには最適な手法であったようにも思える。
そこに求められるのは、感情の機微をなぞる「物語り」ではなく、躍動する原初的な生の「感情」そのものなのである。
■ラストシーン。
300人隊の唯一の生き残りであるディリオスがあげる雄叫びは、
レオニダスが何故、無意味とも思える無謀な戦いを挑んだのか、という「真意」を理解するためのものではなく、
見るものの体の中に密かに埋め込まれたスパルタ的誇りを呼び起こし、その血を燃えたぎらせるためにあるのだ。
ああ、カッコいい!!
<2008.05.24 記>
■DVD ドーン・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット プレミアム・エディション
■ザック・スナイダー監督って、あの「ゾンビ」のリメイク『 ドーン・オブ・ザ・デッド 』がデビュー作で、『300』が2作目なのだそうです。
映像の「えげつなさ」は前作ゆずりですな(笑)。
けれど、『 ドーン・オブ・ザ・デッド 』は徹底した主人公の一人称視点とか、映像で見せる心理描写とか、映画として質の高い作品だと思います。
ラスト・シーンの後味の悪さだけはどうにもならないんだけど・・・。
■STAFF■
監督 :ザック・スナイダー
製作総指揮 :フランク・ミラー、デボラ・スナイダー
原作 :フランク・ミラー
脚本 :ザック・スナイダー
マイケル・E・ゴードン、カート・ジョンスタッド
音楽 :タイラー・ベイツ
撮影 :ラリー・フォン
VFX監修 :クリス・ワッツ
SFX監修 :ショーン・スミス、マーク・ラバポート
美術 :ジェイムズ・ビッセル
衣装 :マイケル・ウィルキンソン
編集 :ウィリアム・フェイ
配給 :ワーナー・ブラザーズ
■CAST■
スパルタ王 レオニダス :ジェラルド・バトラー
王妃ゴルゴ :レナ・ヘディ
スパルタ軍隊長 アルテミス :ヴィンセント・リーガン
隊長の息子 アスティノス :トム・ウィズダム
屈強のスパルタ兵 ディリオス :デビッド・ウェナム
若きスパルタ兵 ステリオス :ミヒャエル・ファスベンダー
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アルカディア軍隊長 ダクソス :アンドリュー・プレヴィン
傴僂男 エフィアルテス :アンドリュー・ティアナン
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スパルタの評議員 セロン :ドミニク・ウェスト
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ペルシア王 クセルクセス :ロドリゴ・サントロ
■300<スリー・ハンドレッド> 公式サイト■
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