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2008年7月18日 (金)

■【書評】『栞と紙魚子の百物語』 諸星大二郎。物の怪が当たり前のように日常に居る楽しさ。

栞と紙魚子の新作である。

胃の頭町全体を巻き込む壮大なスケール(笑)で展開した前作、

『何かが街にやって来る』でてっきりおしまいと思っていたのだけれども、これはうれしい誤算であった。

Photo ■栞と紙魚子の百物語

■今回からまた新しく珍妙なメンバーが登場する。

・妖怪に変化した古本を集めて回る妖怪「司書」、キイチ。
(本名は、十口木一=古本、というやる気のないネーミング)

・実は露出狂なんじゃないかという疑いの晴れない弁天様。

・クダギツネ使いの’イケメン’転校生、管正一。

■とはいえ中身は相変わらずの栞と紙魚子で、安心して読み進めることが出来るのだけれども、全体を通してみると、なんか少し今までの「栞と紙魚子」とは違う味わいを感じる。

今までの「栞と紙魚子」は、日常の片隅にある何の変哲も無い扉から「異界」にさ迷い込むとか、日常の中に「ワケの分からないもの」が発生して混乱を巻き起こす、そういうパターンが多かったように思う。

けれど、今回はごく当たり前に「もののけ」があって、その前提の上に物語が組み上げられている感じがするのだ。

まぁ、これだけ変なことが起きる胃の頭町が正常な日常を維持できるわけもないのだけれど(笑)。

■話は7編。

■「妖怪司書」。

子鬼のキイチ登場のはなし。妖怪化した古本や妖怪が擬態した本を捕まえるのが妖怪司書の仕事で、もちろん怪しげな古本がしこたまうなる宇論堂がはなしの舞台。栞と紙魚子がキイチを捕まえようとしかけるベタな罠と、それに引っかかるベタなキイチが面白い。

■「栞と紙魚子物怪(もののけ)録」。

二百年前、連日のように現れる妖怪をものともしなかった豪胆な青年、平太郎の絵巻物世界に引き込まれ、胃の頭町もののけ代表として平太郎を嚇かさなければならなくなった栞と紙魚子のはなし。

オチがみえみえなんだけれど、そのページを開いたときの満足感は期待以上。

この絵は諸星大二郎しか描けないわな。

■「弁財天怒る!」。

弁財天のお堂を守る神様用の’強そうな’結界。・・・なのだけれども、「でも、あの隅の方のはよそ見してるわよ」となんなくすり抜けられてしまう、その間抜けさが好きだ。

■「モモタローの逆襲」。

川をどんぶらこと流れてくるものを迂闊に拾わないこと。

キイチの叔父さんの本物の「鬼」が結構怖い。

■「百物語」。

怪談ひとつ終わるごとにロウソクの火を消していく、いわゆる百物語なのだが、そのメンバーが問題。

何を間違えたか段先生の奥さんは先生との出会いのノロケ話を開陳する。

悪魔召喚の話は数あれど、召喚される側から描いた話は初めてじゃなかろうか(笑)。

さらに、奥さんを召喚した魔導師の使った本が「根暗なミカン」(爆)。

その情けない表紙のイラストが最高におかしい。

※根暗なミカン→ネクラナミカンの何が面白いのかサッパリ分からなくて気持ちの悪い方は下の「ネクロノミコン」を参照してください。

■「クダ騒動」。

使い魔の一種、クダギツネをあやつる謎の転校生、管正一の話。

久しぶりに猫のボリスが活躍。

■最後は3話にわたる中篇、「天気雨」。

忘れ去られたような胃の頭稲荷の小さな祠から「宝物」が盗まれた。

お稲荷さまから犯人探しを頼まれた栞と紙魚子、さらに管くんとクダギツネたちを巻き込んで大捜索が展開する!

お稲荷様の俗物ぶりと、紙魚子の策略にまんまとはまる間抜けな神様が楽しい。

■栞と紙魚子の次回作まで、また2、3年待つことになるのだろう。

それも待ち遠しいのだけれど、

本家の幻想・伝奇マンガの新作はまだなのか。

このままだと怪奇ギャグ漫画作家って言われちゃいますよ、

諸星センセイ!

                           <2008.07.18 記>

Photo  
■栞と紙魚子の百物語 諸星大二郎・著(2008.06.30刊)
    

Photo_3■ネクロノミコン 大瀧 啓裕 訳
■ク・リトル・リトル神話体系/クトゥルー神話に嵌ったのは高校生の頃だから、かれこれ20数年前のことになる。いまさら触れてはならないこの本を開こうにも、その前に記憶があやふやで楽しめる自信は無い。もちろんこれを機にラブクラフトを再読しようなんていう気力・体力ともに全然無い。
でも、本棚の飾りとしてならあっていい本かもしれない。その背表紙を見るだけで気分はボストン近郊のアーカム、ミスカトニック大学付属図書館になるのだから。
ところで、この本の出版社が学研というのには一番驚いた。
普通、国書刊行会か青土社でしょ。時代も変わったものである。

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■栞と紙魚子シリーズ■既刊■【眠れぬ夜の奇妙な話コミックス・ネムキ】
※書評をご覧いただくため、既に絶版になった初版にリンクを張っています。

アマゾンで購入する場合は’栞と紙魚子’で検索して’新版’をご購入下さい。
9609 9805_2 0001
■生首事件 (96年9月) ■青い馬(98年5月) ■殺戮詩集 (00年1月) 

0108 0402
■栞と紙魚子と夜の魚 (01年08月) ■何かが街にやって来る (04年02月)

■過去記事■
■【書評】ひつじの本棚 <バックナンバー>

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’パパと娘のオタ日記’ さんの「栞と紙魚子の百物語」

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