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2008年6月24日 (火)

■ドラマ 『ラスト・フレンズ』 最終回。美知留、あんたホントにそれでいいのか!

ちょっと遅ればせながらラストフレンズ最終回。

拍子抜け、というのはこのことか。

Photo

■テレビドラマで一番盛り上がるのは最終回のちょっと前。

ラスト・フレンズもそれに違わず「やりすぎ感」が漂うくらいに濃密であった。

9話『君の命』でのタケル(瑛太)と瑠可(上野樹里)に牙を剥く宗佑(錦戸亮)の暴走、10話『最終章・愛と死』で秘密を世間に曝されてしまう瑠可の苦しみと、抜け殻になった美知留(長澤まさみ)を見てやっと気づいた宗佑の絶望・・・。

さて、それをどうまとめるのか。

オープニングで語られていた妊娠した美知留の独白と、どうつながるのか。

死んだのはやっぱり宗佑なのか、それとも!

■最後の数話で十分盛り上げた後に、

そうか、そうだったのか!!

というタネ明かしがあって、今まで気づかれぬように抑えられていたであろう、その登場人物の感情に想いを馳せて、ぐっ、と感動が胸に込みあげる。

最終回とはそうしたものだ。

しかしながら、脚本家・浅野妙子はそれをことごとく裏切ってみせたのである。

■宗佑の自殺によって解放されるどころか一生その重荷を背負うことになってしまった美知留。

抜け殻になったまま、かつて親子で暮らしていた銚子の町へと、ひとり流れつく。

やがてそのお腹には宗佑の子供が宿っていることが分かり、美知留は「ふたりで生きていこう」と心を決める。

■一方、瑠可はモトクロスの選手権で優勝し、その記者会見でカミングアウトとも取れる発言で自らに決着をつけ、いつも煮え切らないオグリン(山崎樹範)は一世一代の大決断でエリ(水川あさみ)にプロポーズ。

気になるところがポン、ポン、と順調に解決していく。

ここまでは、いい。

■オグリンとエリが結婚してシェアハウスを出て行ったことで、ふたりぼっちになる瑠可とタケル。

そこでタケルが突如として血迷うのだ。

美知留を迎えに行こう、きっと僕らを待っているに違いない。

■美知留が臨月ってことは宗佑の自死から10ヶ月近く経っているってことだろ?

なんで突然そうなるの?

キッカケになる出来事があるでしょ、ふつう。

いや、まだ癒されぬタケルの想いをおさめるタメのふたり旅。細かいことは気にしないでおこうじゃないか。

■瑠可を後ろに乗せて、かつて美知留が暮らしていたという銚子へとバイクを走らせるタケル。

美知留が見つからぬまま、やがて夜になり、浜辺にテントを張る二人。

静かな夜空を見ながら、タケルは問わず語りに自分のつらい過去と自らの秘密を瑠可に告げる。

いい感じだ。

タケルの気持ちになるならば、

時よ止まれ。

というところだろう。

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■問題はここから先である。

美知留が、とある旅館に住み込みで働いていると知った二人はそこへとバイクを走らせる。

旅館で皿を洗っている美知留。

走り出すダンプの唐突なカット。

そのカットを交互に繰り返す。

こんなベタな演出、久しぶりに見たワイ。今どき昼メロでもやらんだろう(笑)。

■で、ああ、ここで瑠可が死んでしまうのか!!

と、思ったらただのかすり傷で、検診に病院へ来た美知留とバッタリ出くわす為の振りだったなんて、ありえるか?

そんでもって美知留の部屋で三者会談。

友達とも恋人ともいえない3人で、出来ればいつまでも生きていこう。

って何?

■美知留!

あんたは宗佑の人生を抱えて、その子と二人で強く生きていく決心をしたんじゃないんかい!

それじゃ、死んだ宗佑も浮かばれない。

どこまでフラフラするつもりなんだ、一体!

と怒鳴りたくもなる、ラスト・フレンズなのであった。

3

■優柔不断でまわりをハラハラさせる美知留の性格は最後まで変わらず、いや、ひとはそう変わるものでもないし、急に強くなれるものでもない。

ありのままの自分でいられる人と認め合いながら生きていく、そういう彼らの「ゆるい」生き方が今の時代をあらわしている。

なんていう「分かった風の」解釈もできるだろう。

■けどね、ひとりでは生きていけないというのはその通りなのだけれど、ひとりで立とうとしない人間がまわりを幸せにすることなんて出来ないんじゃないだろうか。

宗佑が気づいたのは、まさにその点であって、

ボクの美知留への「愛」は、瑠可やタケルのように美知留を幸せにすることは決して出来ないのだ、

と気づいた瞬間に、自己の存在自体を否定する漆黒の絶望が彼を包み込んでいったのだ。

■だからこそ美知留には、瑠可やタケルによって「笑顔になる」受身な自分から決別し、強く立とうとする意思が生まれる「必然」がある。

新しい自分として、瑠可とタケルの前に立つ「義務」がある。

だが、この最終回の中で美知留がそこに至ったとは到底思えない。

見るものの予想を裏切るハッピーエンドもいいのだけれど、

「必要」なところを描ききれないドラマは見るものに決して感動を与えることは出来ない。

上野樹里をはじめとした役者の演技が抜群に輝いていただけに、非常に残念な最終回であった。

                            <2008.06.24 記>

■追記■
次回26日(木)22:00~23:24は
『ラスト・フレンズ アンコール特別編』。
   
<『ラスト・フレンズ』の衝撃シーン&名シーンに、本編には登場しなかったその後の美知留たちのエピソードを追加したファン必見のスペシャルバージョンです!>
   
なのだそうです。
・・・結局、見ちゃうんだろうな(苦笑)。     <2008.06.24 記>

      

Photo_5 ■単行本 ラスト・フレンズ

Prisoner_of_love
■宇多田 ヒカル Prisoner Of Love(CD+DVD)

      
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■■■ ラストフレンズ ■■■

■STAFF■
■脚本      浅野 妙子 『ラブジェネレーション』、『神様、もう少しだけ』、
                  『大奥』ほか
■演出      加藤 裕将 『白線流し』、『プロポーズ大作戦』、『ライフ』ほか
    
       西坂 瑞城 『ガリレオ』『薔薇のない花屋』ほか
■プロデュース  中野利幸(フジテレビ)
■音 楽         井筒 昭雄 ・ S.E.N.S.
■主題歌  :    宇多田 ヒカル「Prisoner Of Love」(EMI ミュージック・ジャパン)

 
■CAST■

長澤まさみ、上野樹里、瑛太、水川あさみ、
山崎樹範、西原亜希、倍賞美津子、錦戸 亮

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コメント

ダンプとの衝突事故で、記憶喪失になる瑠可。。。
な~んて、もっとベタな展開を想像して苦笑いしちゃいました

投稿: 臨床検査技師 | 2008年6月24日 (火) 23時21分

臨床検査技師さん、こんばんは。

>ダンプとの衝突事故で、記憶喪失になる瑠可。。。
↑そこまでやってくれれば、それはそれで面白いですね。
次週から新章へ。『続・ラストフレンズ』に乞うご期待!
って(笑)。

投稿: 電気羊 | 2008年6月24日 (火) 23時59分

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