■「現在」は「過去における未来」の延長にあるのだ。『爆笑問題のニッポンの教養』 古生物学、真鍋真。
今回のテーマは、恐竜。
■『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE041:「恐竜は生きている?」 2008.6.17放送
国立科学博物館地学研究部生命進化研究グループ研究主幹
古生物学 真鍋真(まなべまこと)。
■真鍋先生が始めに言ったことば、
「現状だけ見て判断するのは偏った見方になってしまう恐れがあって、今に至るまでの環境プロセスを見つめることで、やっと見えてくることもある。」
というのが今回の本質的な部分を既に語っていたように思う。
■真鍋先生は恐竜の専門家。
「羽毛恐竜」という言葉も最近知ったのだけれども、恐竜ってのはワニとかトカゲとか今いる爬虫類の連中の祖先ではあっても「爬虫類」そのものじゃない、とか子供の頃には知らなかったようなことが、ここ10数年くらいでずいぶんと分かってきたようだ。
なかでも、もっともメジャーな大型肉食恐竜ティラノサウルス・レックス(7000万年前)の祖先が、1億3000万年前のニッポンに、それもかなりちっこいサイズの羽毛恐竜として生きていた、という話には思わず食いついた。
■何しろ子供の頃には、なんで日本には首長竜とかそういう地味な恐竜しかいないのかなぁ、などと非常に残念な気持ちでいたので、
ティラノサウルスの祖先はニッポンにいたんだぜ!
というのは、自分にも日本人にも全く関係ない話であるにも関わらず、とても誇りに思う気持ちを抑えることが出来ないのである。
■いやー、恐竜は大好きだったんですよね、と恐竜の化石に眼を輝かす田中は、標準的なニッポン男児の反応であって、やっぱり恐竜は自分の中の「男の子」の部分を激しくくすぐるのだ。
と、その横で、太田はじっと何かを考えている。
ちょっと視点が普通と違う、いつもの太田である。
■「ペンギンが鳥である」というのは、ずいぶんと横暴な話だと思いませんか?
ときた。興味は恐竜から「進化」へと移っていたのだ。
あの黒くてすべすべした感じとか、どう考えたって「鳥」というのは不自然で、アシカとかイルカとか、そういう奴らの仲間だと思うのが普通じゃないですか。
■そこで、何をバカなことを。
で終わらないのがこの番組の面白いところだ。
真鍋先生は真面目に答える。
化けの皮を剥いだ下にある骨格を見れば「鳥」なんです。
魚が進化して陸に上がったあとに再び海中の生活に適応した生物はいくつかある。
アシカ、イルカといった哺乳類のほかに、かつては「魚竜」といわれる爬虫類もいた。
同じように鳥類の「ペンギン」もいるわけだけれども、アシカや魚竜が体をくねらせて海中を進むのに対して「ペンギン」にはそれが出来ない。
進化の枝分かれの中で鳥類は胸の周りの骨格を固めてしまい「体をくねらせる」ということが構造的に出来なくなってしまったというのだ。
■ここに「進化」の重要なポイントがあるように思える。
これから新しい環境に適応していこうとしたときに、進化の道のりを歩んできた自らの過去に縛られる、そこから自由ではない。ということだ。
「アシカとかイルカが既にいる(存在できる)からペンギンみたいなものもいる(進化できる)んじゃないか」
という太田イメージのように「目指すところ」があって進化がすすんでいく、というふうに生命は展開していくのではなく、
各々の過去の進化の歩みを背負いながら、それぞれの生命は展開していくということだ。
■それは生命の進化だけにあてはまるものではなく、日々変わりゆく環境の中で次第にその人らしく成長(複雑に変化)していく「人生」というものにもあてはまるものだと思う。
今、思い立ったぞ!俺は映画監督になるんだ!
と、40過ぎのオヤジが突然の決意表明をしたとして、それは別に否定されるものではない。
けれど絶対にいえるのは、その人には彼が歩んできた「人生そのもの」が深く刻み込まれていて、いくら「黒澤明になりたい」と思っても、彼はその人なりの映画監督にしかなり得ないということだ。
■「現在」の状況だけを見て最高の選択をしよう、というのは「最適」な行動ではない。
その「選択」をしようとする「主体」が進んできた歴史の影響からは絶対に逃れられないからだ。
だから「今」だけを見てはいけない。
「過去」とは、「かつての自分」が踏み出した「未来」の連なりである。
今、踏み出そうとする道は突然として現れるものではなく、自分が歩んできた、それ故に自分だけにしか歩むことの出来ない
その人固有の道なのだ。
■そうやって自分の人生を俯瞰してみると、いま自分のとなりにいる人にとっての最適な道筋というものが、自分にとってのそれとは異なるものだ、ということが腑に落ちてくる。
それぞれが、それぞれに、その人だけの道があるのだ。
正解は無い。
<2008.06.26 記>
*********************************************
■「真鍋真」さん、という名前をみて、上から読んでも下から読んでもという面白さと同時にどことなく懐かしい感じを受けたのだけれども、実は真鍋 博さんの息子さんだったんですね。
「古びることの無い’かつての未来’」という雰囲気の絵柄が、今回のテーマともピタリとはまって不思議な感じでした。
*********************************************
■過去記事■ [バックナンバー]の 一覧
■爆笑問題のニッポンの教養■
■関連サイト■
■『爆笑問題のニッポンの教養』番組HP
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■
■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■
| 固定リンク
« ■ドラマ 『ラスト・フレンズ』 最終回。美知留、あんたホントにそれでいいのか! | トップページ | ■『プロポーズ大作戦 スペシャル』。決して裏切ることの無いその一生懸命な優しさにあてられて幸せな気分に浸るのであった。 »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
群馬の南西部、神流町にある「恐竜王国中里」では、


日本で初めて確認された恐竜の足跡を見ることができます。
ご家族と歩まれる道筋に、思い出の足跡を残しに、
お出かけになってみてはいかがでしょう
投稿: 臨床検査技師 | 2008年6月27日 (金) 17時31分
臨床検査技師さん、こんにちは。
足跡の化石ってのも考えてみると凄いことですね。
そんなものが消えずに何千万年も残っているんですから。
自分でも気づかずに、どこかで化石になるような足跡を残していたりするのでしょうか。
投稿: 電気羊 | 2008年7月 2日 (水) 12時25分