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2008年5月25日 (日)

■【書評】『ウルトラマンの東京』 実相寺昭雄。そこに在り続ける風景。

第一期ウルトラシリーズが撮影された1960年代後半。

異色の演出でファンの記憶に深く残る作品を何本も生み出した故・実相寺昭雄監督が現代の東京の街を歩きながら当時の風景を語る、なんとも味わい深い本である。

Photo ウルトラマンの東京 (ちくま文庫)

■多摩川、赤坂、新宿副都心・・・。

実相寺監督がウルトラマン、ウルトラセブンのロケで使った場所に立ち、ほとんど消え去ってしまった当時の面影が、絶妙な語り口と「絵てがみ」のような味わい深いイラストで描き出されていく。

「ウルトラの時代」について語る実相寺さんの本は何冊も出ているけれども、その中でも監督としての生の実相寺さんに触れる、何か人間的な温かさのような、そういう得がたさを感じさせる本である。

■ロケ地の空気がそうさせるのか、気分はすっかり当時の撮影現場になっているようで、バックの風景だとか、太陽の加減だとか、フィルムの残量だとか、ともすると話は具体的でテクニカルな部分へと入っていく。

「周辺」が具体的にクッキリと描かれていることが当時の空気を再生し、かえって生の実相寺さんそのものを浮き上がらせる効果を生んでいるのかもしれない。

■この本が書かれたのは1993年。

バブル時代の急激な変貌が1960年代の風景をすっかり塗り替えてしまった時期である。

けれどもその人の大切な風景は、たとえ無表情なコンクリートに塗り固められてしまったとしても、その向こうに変わらぬ姿で在り続けるのだと思う。

それはその人が生き続ける限り、消え去ることは無い。

そしてその人がこの世を去ったとしても、その人のことを、或いはその人が残した作品を覚えている人がいる限り、その面影の向こうに何らかの形で残っていくものである。

■実相寺さんが亡くなって、はや一年半。

けれど、テレスドンが闊歩する赤坂の夜のビル街やメトロン星人が幻覚タバコを自販機に仕込んだ向ヶ丘遊園の駅前といった、かつてテレビの画面で体験した風景は、おぼろげな印象ではあるけれども確かに私のなかで生きている。

映像作品を見るということは作家の人生の一部をその胸に刻み付けるという行為なのかもしれない。

その意味で60年代後半の風景は私のなかに色濃く生き続け、たぶん消え去ることはないだろう。

                          <2008.05.24 記>

■文庫 『ウルトラマンの東京』 実相寺昭雄・著
    

■DVD 『怪獣のあけぼの』
■円谷プロの怪獣倉庫が無くなる前に記録に残しておかねば、という思いで実相寺さんが企画したドキュメンタリー。
ウルトラ怪獣のぬいぐるみ造形を手掛けた高山良策の生涯を軸に、その類まれなる高度な怪獣造形を戦前の美術史という新たな視点で照らし出す力作。
胃がんで亡くなる寸前まで映画監督であり続けた実相寺さんのウルトラへの熱い思いが込められています。
     

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