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2008年4月 7日 (月)

■シーラカンスが指し示す「スローな生き方」は幸せか?

昨日NHKでシーラカンスの話をやっていた。

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■NHK ダーウィンが来た!生きもの新伝説 
第96回 「大接近!シーラカンス」(2008.04.06放送)より

■深海200メートルに生息するシーラカンスをリモコン潜水カメラで捉えた貴重な映像にドキドキする。

深海とか人間を寄せ付けない環境を探索していく番組っていうのは実に興奮するものである。

「知らない世界」はいつもわれわれを惹きつけてやまない。

■シーラカンスは逆立ちして泳ぐ。

という話をどこかで聞いことがあったのだけれども、やっぱりヤツは「逆立ち」をしていた。

海底にアタマを向けて逆さになって、ひらひらと太い腕のようなヒレで姿勢を保ちながら同じところにじーっと漂っている。

で、小魚が近づいてきたことをアタマに埋め込まれた電波レーダーでキャッチするや、バクッという早業で一気に飲み込む。

エサの少ない深海では出来るだけエネルギーを使わずに何とかやっていくしかあんめい、ということなのだ。

■シーラカンスが『生きた化石』といわれるのは、実に4億年前とほとんど同じ形態を保ったまま生き残っていることによる。

3億6000万年前に多くの海生生物が滅びたデヴォン紀後期の大量絶滅、三葉虫をはじめ地球上の生物の95%が絶滅したといわれる2億5000万年前のペルム紀末の大量絶滅、そして恐竜が滅びた6500万年前、白亜紀末の大量絶滅。

こうした大量絶滅を引き起こす気候の大変動を乗り切ることが出来た非主流派の生物が新たな時代を作り上げ、進化の物語を受け継いでいく。

そんななかで、太陽の光も届かない暗い深みへと沈んでゆき、変動のない静かな深海で4億年のゆるやかな流れにただよいながらシーラカンスは生きてきた。

■現代という時代も、実は地質学的観点からすると大量絶滅の時代だと考える学者もいるようだ。

生命誕生からの40億年に対して、われわれ人類という「種」は1万年というあまりにも短い時間のなかで『肉体』ではなく文化、技術というものによって激変する環境の変化に対応してきた。

シーラカンスとは対極にある「生き方」である。

そして今、加速度を増して進化してきたわれわれの文明は極限に達し、「肉体」はそのスピードに追いつくことができずに悲鳴を上げはじめているようにも思える。

そう考えたとき、われわれが「生き物」として生存していくための戦略として、『シーラカンス』は一体どういう道を指し示しているのだろうか。

■よく「スローライフ」なんていうコトバを目にするけれど、そういう生き方で人類の未来を切り開くことが出来ると本当に信じているひとがいるならば、それは「幸福」なひとである。

冷静に考えて、ここまで加速のついた文明が全体として安定(「スロー」)に向かうとは思えない。「『乱雑さ(エントロピー)』は必ず増大する」という熱力学第二法則に反するからである。

もし「スローライフ」なるものが現実にあるとするならばそれは、ひとりのスローな生活を支えるために99人の犠牲を必要とする「搾取」型の構造に他ならない。

そのひとが個人的に「スローライフ」を味わうことは可能なのかもしれないが、いま現実に苦しい生活を送っている「ネカフェ難民」にとって「スローライフ」というコトバが持つ意味について、真摯に想像力をはたらかせるべきであろう。

■「種」としてのシーラカンスが選んだ道は「エネルギー」を極限にまで低下させて「変化(乱雑さ)」を抑え込む道であり、「何も起こらない」、静かな冥界へと堕ちていく道である。

その暗闇に「幸せ」があるとはとても思えない。

■少なくとも自分のむすめには、20年後、30年後に生まれてくる自分の孫たちには、光の中を歩んで欲しい。

そのためには「スロー」ではない、何か根本的な「変化」が必要だ。

その道は探して見つかる性質のものではなく、「進化」の歴史を教師としてみるならば、あらゆる可能性に希望を抱いてさまざまな夢を実現しようとする社会のエネルギーと、その結果生まれてくる多様性から現れてくるものなのだと思う。

われわれがシーラカンスになってしまわない為にも多様性を育てる道を閉ざしてはならない。断じてひとつの価値観で世界を括りあげようとしてはいけない。

                         <2008.04.07 記>

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コメント

ブログ村から来ました。
朝刊一面下部のコラムのような、リズムの良い文章に引き込まれました。また来ます。

投稿: ftrain | 2008年4月 8日 (火) 15時02分

ftrainさん、はじめまして。

弱ったな、そんな誉め方をされると照れちゃいますよ。

ftrainさんのブログをちょっとだけ拝見させていただきました。
タイにいらっしゃるんですね。面白そうなので改めてじっくり眺めさせていただこうと思います。
こういう出会いがネットの醍醐味。
気兼ねなく、また遊びに来てください。
では。

投稿: 電気羊 | 2008年4月 8日 (火) 18時51分

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