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2008年4月 3日 (木)

■【書評】『チャンスと人を引き寄せる話し方』。「相手」あってこその「話し」であり、「私」なのだ。

「相手に伝わる話し方」というフレーズはよく聞くけれども、さらに一歩踏み込んで、相手から影響を受け、相手に影響を与える、そういった「教科書的」でない実践の場面で活きる本である。

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■ チャンスと人を引き寄せる話し方
■稲垣文子 著■
NHKを経て、現在フリーアナウンサーとして活躍中。

■とても読みやすく、すっとアタマに入ってくる。

語りかけるような文体がいい。

20年近いアナウンサーとしてのキャリアの成せるワザか、文章の向こう側から著者の人柄をも含んだやわらかな声とその表情が実際に伝わってくるようだ。

■本書は大きく四つの章立てで構成されている。

・第一章 プロの話し方は、ココが違う

・第二章 初対面から好印象を与える「聞き方」

・第三章 スピーチを100%成功させるテクニック

・第四章 シチュエーション別・上手な話し方

■こうして並べてみると、技巧に走った「いかにも」なイメージがするけれども、実際、内容自体はその通りだったりもする。

けれどもその「いかにも」が、不思議とイヤ味に感じない。

それは、その「テクニック」について御講釈を垂れるのではなく、読者の横に座り、同じ先生の方を向いて学んでいる。

そういう真摯なスタンスが親近感をわかせるからなのだろう。

実際、著者の失敗談を追体験することで読者が著者と同じ目線で学ぶ、という構図が多く、幾多の「現場」をこなしてきたプロフェッショナルの「あ、どうしよう」の部分を共有できるが故に、構えず、すんなりとその内容を受け入れることができるのだ。

■一方、肝心の「テクニック」の方もNHK仕込みの折り紙つき。

口の開き方、声の出し方といった発声の基本から、表情、視線、いろいろなシチュエーションでの対応の仕方まで極めて具体的かつ実践的だ。

「べたべたする話し方にならないようにするには口を縦にあけること」とか、「第一声は上ずりがちだから意識して低めに出す」とか、へぇーと思わせる「技」が消化不良にならない程度にいい塩梅でちりばめられている。

読んでいて、おっ、と思ったところに付箋をつけていたのだけれど、気がついたらポストイットが30枚も減っていた。

多過ぎず、少な過ぎず。まさに、いい塩梅。

■少し引いた目線で眺めてみると、この本自体が「伝わる話し方」そのもののような気もしてくる。

いかにタメになる「30の珠玉の知識」が並んでいたところで、なかなか、こちらにしみじみ伝わってくるものではない。

この本の底流に、著者の読者に対する意識がつよく感じられる。

一貫して乱れることのない「語りかけられている」というイメージはそこから生まれてくるのだろう。

ノウハウ本の「語りかけ口調」というのは珍しくないが、本当に語りかけてくる本に出会うことは稀である。

■よく考えてみれば、相手に話しかける「私」というものは絶対的な存在ではなく、まわりの環境、すなわち、いま目の前にいる、或いはアタマの中で想像する「他者」の影響を強く受けた存在である。

「私」は絶えずゆらぎ、「相手」に合わせて変化する。

その「私」と「相手」の間に生じるダイナミックな動き、それ自体が「伝える」という行為の本質であって、それは決して口から発する音声のみで成り立つものではない。

■だから、「伝えよう」といくら技巧の粋を尽くしても入念なパワーポイントを用意しても伝わらないものは伝わらない。

「伝えよう」、と思うその前にまず、目の前にいる相手の存在を認め、しっかりとそのままの相手を受けとめること。それをしっかりと味わうこと。

そこから生じる「私」の中の「変化」こそが、「相手に伝える」という行為の源であり、「理解」という相手の変化を生み出す原動力なのである。

■相手に対するこころの深いところでの尊重。

押し流されるような日頃の忙しさの中で「効率的に伝えよう」と早口でまくしたてるとき、つい忘れてしまいがちなことなのだけれど、そこで、ふー、と一息ついて相手に軽く「こんにちは」、と会釈をする。

コミュニケーションにおけるそういった些細な気遣いの大切さを、改めてしみじみ噛みしめた。

                            <2008.04.03 記>

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■ チャンスと人を引き寄せる話し方
  
■稲垣文子 さんのプロフィール■
http://www.sigma7.co.jp/profile/w_54.html
  

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■【書評】ひつじの本棚 <バックナンバー>
   

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