■NHK土曜ドラマ 『トップセールス』 寡黙な戦中派の優しい目線。
夏川結衣の24歳というのは大いに無理があるのだけれど、なんだか引き込まれてしまうドラマなのである。
■昭和49年。仕事に達成感を求めたいのに「とうの立ち過ぎた」売れ残りOLとしてしか扱われない老舗繊維メーカーを飛び出して自動車ディーラーの世界に飛び込んだ24歳。
女にクルマが売れるわけが無いという常識を吹き飛ばしトップセールスマンとして外車ディーラーの社長にまで登りつめる女性の一代記である。
■このドラマのモデルになったのは林文子さんという実在の女性。
VWファーレン東京、BMW Japanの社長を歴任し、2005年にはそのマネジメント能力を買われてダイエーを再建すべくCEOに就任、アメリカの経済誌「フォーブス」の「世界で最も影響力のある女性100人」で66位、「フォーチュン」の「米国外のビジネス界『最強の女性』」で10位に選ばれるなど世界的にその能力を認められた方である。
■で、ドラマの方はどうかというと、あの時代は良かった的な「昭和懐古」調とは一線を画し、三菱重工爆破事件、自動車公害などの時代の暗部も語りつつ、疾走する時代を上手く描いていると思う。(といってもこの頃、小生はまだ6歳で記憶は定かではないのだが)
さらに「クルマを売ることは、乗る人の未来を一緒につくること」をキーワードに、主人公「久子」の成長を通して「働くとはどういうことか」という主題を語っていく。
■けれどそれが、いわゆるマネジメント本みたいな小難しさに陥らないのがこのドラマの魅力で、物語の鍵となるであろう父親(石橋蓮司)との最後のドライブ、久子の高校時代の友人たちとの関係を描いた人間ドラマといった横軸がしっかりしているからこそ「社会派」が活きるのである。
■現在、全8話のうち第2話が終わり、久子が「はじめの一台」を売る感動を味わったところ。
最前線の整備員上がりの凄腕ディーラー所長を演じる蟹江敬三と、陰ながら久子を応援する事務員を演じる梅沢昌代がいい味を出している。
これからドラマの進行とともに時代を動かしていく久子の世代に対して、その親の世代がここでしっかり描かれていることが後々効いてくるに違いない。
■団塊の世代の声を聞くことは多いが、本当につらい時代を生き抜き、日本の高度成長の基礎となる土台を築き上げた戦中世代は黙してあまり多くは語らない。鶴田浩二の世界である。
そんな寡黙な世代が団塊の世代に注ぐ優しい目線にも、しっかりと光があたっているところがドラマとして心を惹く、ひとつの理由なのかもしれない。
<2008.04.20 記>
■追記■
報道によると、林 文子さんは5月1日付けで暫定的に日産自動車の執行役員に就任、6月末の株主総会を経て東京日産自動車販売の社長に就任するそうです。日産本体の営業担当役員になるのではなくて、あくまでも「現場の指揮官」にこだわる、というところがミソなんだろうな。楽しくはっちゃけて欲しいもんです。
<2008.04.26 記>
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★★★★☆(32) ★★★★★(18) ★★★★ (8)
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■STAFF■
■作 ・・・山本むつみ
■演出 ・・・吉村芳之
■エグゼクティブ・プロデューサー ・・・岩谷可奈子
■音楽 ・・・栗山和樹
■主題歌 ・・・平原綾香 「孤独の向こう」
■CAST■
夏川結衣、椎名桔平、石田ひかり、山口馬木也、大沢健、
十朱幸代、石橋蓮司、蟹江敬三、ほか
●第2話での蟹江敬三のセリフ、「御用聞き・・・いい言葉だねぇ。御用聞き、か。」というのはちょっとメモしておこうとおもう。「売る」よりももっと前にやるべきことがあるっていうことだよな。なかなか沁みる考え方です。
●第5話「別れ」。蟹江敬三、最後までいい演技してたなあ。「セールスは『狩り』だと思われがちだが実は『農業』だ。刈り取るためにはしっかり耕さなきゃいけない。刈り取るばかりじゃいつか終わってしまう。」なんて台詞が決して浮わつかない。味があるんだよね・・・。
金属バット少年を抱きしめて、「君は望まれて生まれてきたんだ。大丈夫、大丈夫だよ。」っていうシーン、泣けました。蟹江敬三の所長を見られなくなるのはホント、さびしいです。
■過去記事■
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■おまけ■
■少年ジェットは正義の味方。「ウー、ヤー、ター!」の掛け声で悪い奴らをやっつける。
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