■金曜ナイトドラマ 『未来講師めぐる』 最終回。「見える」未来より、いま信じる未来。
クドカンは笑わせるのがうまいのだけれども、そのおふざけのなかで唐突に「いい話」をやりだすのがいい塩梅で、「あたたかくて、ちょっと変な」クドカン節を最後まで安心して楽しむことができた金曜の夜なのであった。
■最終回(第10話)のハイライトはやっぱり「拡声器で深め合う家族の会話」だろう。
「あなたのやるべきことは何ですか?」と塾講師としての誇りをもってめぐるから突きつけられた父の’はまる’は、そこで父親としてやっと目覚め、義理の弟・永作がめぐるのおじいちゃん・中吉と永作自身の息子・シンゴを人質に立てこもる「丸顔食堂」へと向かう。
「身内でなんとかしよう」とめぐると相談していたにもかかわらず、やることなすことどうしてもゴージャスになってしまう’はまる’は、拡声器(笑)を使って義弟・永作に投降を求める。
ところが話しかける相手が途中からおじいちゃんに切り替わり、いままですみませんでした。一緒に暮らしましょう、お義父さん!と長年避け続けてきたわだかまりを乗り越え、思い切って正面から語りかける。
言っている内容はすごくしみじみくる真面目なものなのだけれども、拡声器を通したとたんに不思議なおかしさが込み上げてくる。
クドカンはやっぱり上手い。
実はその時おじいちゃんは「ぢい散歩」に出たあと、いつものクセで自宅に戻り、縁側で何事も無かったかのようにお茶をすすっているというオチがつくわけで、決して単純には終わらせてくれないのである。
この二の矢、三の矢とつづく連続攻撃もまたクドカンらしい。
■前にも書いたけれども、連続ボケの後に必ず癒しがくるところがクドカンの一番クドカンらしいところであると思う。
第9話の最後の方で、「20年後のユーキくん」にそっくりな刑事(田口浩正)がめぐるに語りかけるセリフが実にいい。
■似てる人じゃダメだよ。本人じゃなきゃ。
目に見えたら、たとえ「未来」でも現実だ。
でも「見えない未来」には希望がある。
その希望の象徴が20年後のユーキ君であり、私なんですよ。
言ってること、分かりますか?
だが、「私」は現実だ。
現在ここにこうして存在している私は、あなたに希望を与えることはできない。
分かりますね。
未来のユーキ君に会う楽しみは「未来」にとっておくべきじゃないのかな。
それが生きるってことだと思いますよ。
■ここまで「かっこいいユーキくん」の20年後の’ぶよぶよのずるむけ’に甘んじていた田口浩正、一世一代の見せ場である。
こういうところに脚本家としての宮藤官九郎のやさしさがにじむ。
ドラマ終盤で「異物」として現れる’めぐる’の叔父・永作。
予知能力をもたないくせに予言者として新興宗教の教祖に収まっている永作は、’めぐる’の能力を狙うのだけれども、そんな最低、最悪の役柄にも「ちょっといい話」を配することを怠らない。
■「丸顔食堂」主人のおふくろさんがガンの末期症状で医師に見放されるような状態であったのに対して、「大丈夫、絶対良くなる。」と断言する。月に一度ほどふらりと現れては「大丈夫。」と断言して帰っていく。
それが、タダ飯にありつく為だったとしても、さらには未来を見通す超能力なんかまったく持っていないと分かっていても、その「大丈夫。」の一言が「丸顔食堂」主人とおふくろさんにとっては生きていく支えであって、実際に病気が治ってしまう。
■クドカンは、そのこころを’おじいちゃん’の口を借りてこう語る。
見えればいいってもんじゃない。
ウソも百回ついたら本当になる。
そして、「わしの20年後はどうみえる?」と息子である永作に聞いてみる。未来が「見える」’おじいちゃん’は自分が20年後には死んでいることが分かっているのに敢えて聞く。
永作は少し困って、「元気なんじゃねーの。散歩とかしてるし。」と決まり悪そうにそっぽを向きながら答える。根は素直でいいやつなのだ。
「見える」未来より、いま信じる未来。
「今」の思いが未来を決める。未来は「在る」ものではないのだ。
そういう大切なメッセージを「悪役」である永作に、しかも直接語らせずにその振る舞いへさらりと巧みに織り込むところがなんともニクい。
■ユーキ君の後ろで変なお辞儀をしているのが元焼肉屋のオヤジ。
■クドカンは自分の描く登場人物たちを愛しているのだとおもう。それはほんの端役に対しても変らぬもので、いやむしろ「変」な端役にこそ、愛を感じているのかもしれない。
陰気で、もたもたしてうっとおしい焼肉屋のオヤジ。
あのオヤジの「暗い」未来を見せるだけでなく、ユーキくんのホットドック屋台のバイトに雇い、多少は明るい未来を予感させる。しかもラストシーンにまで出てくるのだから、かなり気に入っているに違いない。
■そういった細かいところにまで光をあてるあたたかさがクドカンなんだよなぁ、と思う。久しぶりに堪能しました。ごちそうさま。
<2008.03.17 記>
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■DVD BOX 『 未来講師めぐる 』
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■キャスト■
吉田めぐる - 深田恭子 次は実写版「ヤッターマン」のドロンジョらしい(爆)
海老沢ユーキ - 勝地涼 「ハケンの品格」の新人ちゃん。
ユーキ 20年後 - 田口浩正 刑事役がかっこよかった。
* * * * * * * * * * * * * *
門伝大(塾長) - 武田真治 って・・・こういう人だったんだ。見直した。
高尾山 登(講師) - 正名僕蔵 クールな中にも熱い魂、青レンジャー(笑)。
江口ヒデオ(講師) - 星野 源 エロビデオってあだ名、スゴイよな。
木村みちる -黒川智花 「地獄さ落ちろ!」が板についてきたのが恐ろしい
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吉田はまる(父) - 船越英一郎 相変わらずですな。
吉田愛子(母) - 榊原郁恵 ちゅーる、ちゅーちゅちゅ。 夏・の・お嬢さんっ♪
吉田永作(叔父) - 橋本じゅん 「栞と紙魚子」でもメルヘンな叔父さんを怪演!
シンゴ(永作の息子)- 槇岡瞭介 ベビースター・ラーメン。
シンゴ 20年後 - 荒川良々 近々映画で主役を張るらしい。
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吉田中吉(祖父) - 地井武男 ぢい散歩。徘徊ともいうらしい。
■スタッフ■
脚本:宮藤官九郎 次回、映画 『カムイ外伝』! DVD:’宮藤官九郎’で検索
演出:唐木希浩 「雨と夢のあとに」「てるてるあした」
高橋伸之 「てるてるあした」「アンフェア」
音楽:野崎良太(JAZZTRONIC) CD:’野崎良太’で検索
■主題歌:やなわらばー 『サクラ』(初回限定盤)(DVD付)
■きれいな歌だよね。
■♪わたしたち、・・・、づらアカデミー、わたしたち、・・・、づらアカデミ~♪
・・・歌いにくい(笑)。でも、武田真治のハイテンションは最高だった!
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コメント
深キョンは、年齢が増すごとにキュートさ
増大かな?
武田真治さん「めちゃイケ・数とり団」でイメージ変わりました。
気になる役どころの荒川良々さん、今後も益々のご活躍ですね。
ちい散歩=徘徊。。。 つぼにはまった~
>いい塩梅のクドカン節 次も楽しみですね。
投稿: 臨床検査技師 | 2008年3月18日 (火) 09時15分
臨床検査技師さん、こんばんは。
問題は深キョンのドロンジョ様。
御々脚を大胆にさらして「やっておしまい!」
と大見得を切る深キョンは想像できないです。
来年春の公開というから、まだ先の話だけれどヒジョーに気になるのですよね。
あ、すいません。「ヤッターマン」の世代では無かったですね。
(↑重ね重ね失礼orz)
投稿: 電気羊 | 2008年3月19日 (水) 18時38分