■ドラマ『鹿男あをによし』。ゴージャスな馬鹿バカしさが「グーっ!」なのだ。
木曜10時。『鹿男あをによし』にハマってしまった。
■『鹿男あをによし』・・・なんのこっちゃ?
という疑問をもった時点で既に「ヤツら」の術中にはまっている。
ポンポンと予測不可能な跳躍を繰り返し、いちいち想定外の展開をしてみせる。
よっしゃ、意地でもついていってやろうじゃないか。
なんて思う余裕すら与えられずに否応なく巻き込まれてしまう。
■第1話のオープニングシーン。
深海にふかくふかく潜っていくカメラ。
そこを横切るリュウグウノツカイ。
さらに深く進んでいくと、岩の下でなにやら蠢いている気配。
ナニモノかに、「あとを頼む」と告げる巫女。
突如として場面は切り替わり、総理大臣執務室。大きな地震。
隣接する大会議室では富士山噴火の兆候と大地震の発生について対策会議が始まっている。
■いったい何のドラマだか、さっぱり分からん。
こりゃ、ガメラとかゴジラとかいった怪獣映画のたぐいの始まり方である。
と、場面は再び一閃跳躍、
主人公と思われる男(玉木 宏)が、自分が如何に『ついていない男』であるかを、これでもかこれでもかと畳み掛けるように語りだす。
その一人称の「ぼやき」が玉木 宏のイメージにピタリとはまり、いつのまにやら、ぐいぐいと引き込まれていく。
■気付けば、大学の研究室を体良く追い出され、奈良の駅の改札で夕日をあびて佇んでいる。
この「巻き込まれ感」が素晴らしい。
玉木 宏の「一人称」によって見ている方もすっかり「俺」に入り込んでしまい、一緒に巻き込まれていることにすら気付かせない。
やっと、この駅前の夕暮れの場面で「水」を差し、ノンストップで来た展開がストンと停止する。
上手い。
■この前半部分で十分おなか一杯なのだけれども、まだまだ許してはもらえない。
男は、奈良の女子高の講師に着任することになるのだが、下宿にいる面々が一癖二癖。特にこのあとコンビを組むことになる日本史の教師(綾瀬はるか)がまた、イッてしまっている。
会話の脈絡は一切無視で、話がポンポン飛び跳ねる。すっかり振り回されたと思ったら、いつのまにやら話がもとのところにつながっている。
まるで目の前で手品を見せられているようだ。
■「奈良女学館」の教師たちも個性派ぞろいで、受け持ったクラスの生徒の中にも不思議ちゃん。
ああ、俺はどうなっちゃうのか。
と、奈良公園でうなだれていると唐突に鹿から声をかけられる。
「さぁ、神無月だ。出番だよ、先生」。
■ここまでが第1話。
鹿(山寺宏一)がしゃべって、え!?というところで、
「大河ドラマかっ」、
というくらい壮大な音楽とともに駆けていく鹿の群れ!
見事なエンディング・・・。
完全にやられてしまいました。降参です。
■こんな調子で、2話、3話ときて、「今、この国が襲われようとしている大きな災厄とは何か」、そして迫りくる災厄からこの国を救うため、男に与えられた「使命」が遂に明かされる。
その壮大な使命を、「奈良、京都、大阪にある姉妹校のあいだの剣道大会」という極めてローカルで狭くマイナーなところに収斂させるところが実に「グーっ!」なのである。
■視聴率、第1話13.0%、第2話11.4%、第3話9.6%。
話についてこれなかった、
或いはついていこうと思わなかった人が3.4%(笑)。
万人ウケを狙わないところがまた、素敵なのである。
■なにしろ脚本・演出がいい。
「スピード」と「タメ」の絶妙なバランス。
それが超絶的跳躍と急停止という、ものすごく高い次元で成り立っているのだから感服してしまうし、そのあとの「余韻」というか「残心」というか、そういった「間」が見事なのだ。
また、カメラワークも映画本編みたいでカッコイイ。
特に、下宿やら校舎の中で玉木 宏の動きを追いかけるフォロートラック。閉ざされた狭い空間をダイナミックに見せていて、もう惚れ惚れしてしまう。
静的場面でも、バストショットでちょっと重心を外して背景に意味をもたせる塩梅がツボにグッとくる。
■児玉清(教頭)はもちろんのこと、佐々木蔵之介(美術講師)、鷲尾真知子(下宿兼料亭の女将)、溝口昭夫(学年主任)といった役者たちのアクの強さも素晴らしい。
綾瀬はるかは変幻自在の演技で魅せる。
「真っ直ぐなんだけど曲がってる」というトリッキーで難しい役どころを、今のところ、上手くこなしている。玉木 宏とのコンビのせいか、時折「のだめ」チックになるのはご愛嬌だ。
忘れちゃいけない『鹿』についても、「本物」、「CG」、「ロボット」と各種うまく使い分けられていて違和感無く(?)「好演」している。
■この作品は「バカバカしい話」に実力派スタッフが「本気」で全力投球しているところに素晴らしさがあるのだと思う。
「ここのところ『原作』ありのドラマばかり、というのは如何なものか」
と、嘆くひともいるけれど、それ以前の話としてドラマの質を決定付けるのは、あくまでも役者を含めた「作り手」の作品への思い入れなのだ、としみじみ思う。
<2008.02.01 記>
■原作 『鹿男あをによし』
■万城目 学■
■★★★★ (54件のレヴュー)
■『鹿男あをによし』 オリジナルサウンドトラック
■音楽 佐橋俊彦■
■テレビドラマと思えないスケールの大きなかっこよさ!
★★★★★(8件のレヴュー)
■DVD 『鹿男あをによし』(出演 玉木宏、綾瀬はるか)
■★★★★★(7件のレヴュー)
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