■新春ドラマ 『のだめカンタービレ in ヨーロッパ』、帰ってきた「ぎゃぽー!」。
録っておいた『のだめカンタービレ in ヨーロッパ』前後編(合わせて5時間!)を見た。
小気味良いテンポの良さで、まったく時間を感じさせない。
ああ、「のだめ」が帰ってきたのだ。
■のだめ(上野樹里)のハイテンションも、千秋(玉木宏)の微妙に間の抜けたところも、そのまんま。
舞台がヨーロッパに移っても変わるどころか、むしろパワーアップしている感じ。
真澄ちゃん(小出 恵介)や峰龍太郎(瑛太)の代りに、派手好きなロシア人ピアノ留学生・ターニャ(ベッキー)と「プリごろ太」好きの変なフランス人音楽学生・フランク(ウエンツ瑛士)がいい味を出している。
■前編の見せ場は千秋が挑むプラティニ国際指揮コンクール。
月9のときもそうだったけれど、オーケストラと指揮者のつながりが音楽の盛り上がりとともに心を振るわせる。
その見せ方がとても上手い。
今回は「観客の気持ちとの連動」がさらにその感情を盛り上がらせた。
■それはテレビドラマならではの感動である。
原作漫画を読んでも、「その曲」がこころの中に鳴り響かなければ、そのシーンでの本当の感動を味わうことはできない。
そして、華麗なCGと繊細で地道なフレームワークによる映像、そしてタイミングのいいセリフのかぶせ方によって、その「テレビドラマならでは」の部分を最大限に活かした最高の演出なのである。
■「あたたかく、やさしい」ジャンの音楽と、
「毅然として理想を語る」千秋の音楽。
片平(石井正則)が見せた『ジャンプ』も、原作のイメージを損なうことなく、いい感じであった。
■後編は、のだめの苦闘が描かれる。
上野樹里は本当に演技が上手い。
いや、「上手い」というのは少しニュアンスが違う。
心に、すーっと「のだめ」の感情が入ってくるのだ。
■ピアノの師匠・オクレールさんは、のだめに問う。
「ベーベちゃんはココに何をしに来たの?
何のためにピアノを弾くの?」
それはシュトレーゼマン(竹中直人)が、のだめに言った
「のだァめちゃ~ん。このままではア、千秋と一緒に居られナーイ。」
というコトバが含む本質的な問いである。
「実存を賭けた苦しみ。」といえば難しくなるのだけれど、のだめモードの上野樹里の手にかかったとたん、その「苦しみ」は脳みそをショートカットして、見るもののこころにダイレクトに伝わってくる。
■そして、その苦悶が昇華され、「モーツァルトの気持ち」のそばに
寄り添ってキラキラ星を弾く のだめ。
演奏の始まりに叩く、「ピーン」という一音。
その瞬間、”上野樹里、全体”から湧き上がる”感じ”で、
「あー、これは凄い!」と直感的にわかって
ワクワクした気分が一気に盛り上がる。
■上野樹里は、「『ぎゃぽー』的ハイテンション体当たり演技」だけが素晴らしいのではない。実は、そういった理屈を越えた部分の「感情」の演技こそが「のだめモード・上野樹里」の真骨頂なのである。
その演技の両面性は、「千秋に襲い掛かる”のだめ”」のシーンにおいて核融合を引き起こし、「その中に一瞬の狂気を感じさせる、恐怖を含んだ『笑い』」という超絶技巧的演出効果に大きく貢献している。
■いやー、ともかく素直に面白かった。
涙があふれるような感動を引き出しておきながら、照れ隠しのようにその「感動」を裏切ってみせる。
そういう微妙なさじ加減にこだわる演出が、上野樹里をはじめとする役者達の素晴らしい演技を引き出しているのだろう。
■演出は、連ドラ版から続投の武内英樹さん。
今まであまり意識していなかったけれど、上手いというか、「ツボ」にくる演出家だなァと思ったら、「電車男」もこの人だったのか。
妙に納得。
何しろ、5時間に及ぶ感動体験を「変態の森へようこそ!」でシメるのだから、見ているこっちも「ぎゃぽー!」なのである。
実に、面白い人だ。
<2008.01.07 記>
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■CD 「のだめオーケストラLIVE!」
演奏:のだめオーケストラ (2006/11/15)
<Amazon評価>★★★★☆(レヴュー数 54件)
■「のだめ」を見ると「クラッシクもいいかな」と思ってしまう。何だか勢いで買ってしまいそう。
■CD 「のだめカンタービレ スペシャルBEST!」
演奏:のだめオーケストラ (2006/11/15)
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■のだめ新春スペシャル版。OP/ED曲などは残しつつも、9割が新録曲で構成された「のだめオーケストラ LIVE!」の続編。「もじゃもじゃ組曲」より第1曲「もじゃもじゃの森」も収録!
■原作・のだめカンタービレ (19)
二ノ宮知子 著 講談社コミックスKiss (2007/11/13)
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■女房が借りてきたのを16巻まで読みました。いい歳のオッサンが「のだめ」を読むというのも、我ながら少しどうかと思うのだが・・・。
■DVD-BOX 「のだめカンタービレ」(6枚組)
フジテレビ 2006年10月~12月放映
<Amazon評価>★★★★★(レヴュー数 89件)
■関連記事■
■【書評】『オーケストラ指揮法』。皆はなぜ、私のいうことを聞かないのか。
・「千秋」というキャラクターの「ネタ本」ではないかと思うほど重なるところがあって驚いた記憶があります。
■映画 『亀は意外と速く泳ぐ』。優しさにあふれたクスクス笑い。
・【主演】上野樹里 【監督】三木聡(ドラマ『時効警察』)、不思議系映画です。
■スタッフ■
原作 「のだめカンタービレ」(二ノ宮知子 講談社刊)
脚本 衛藤 凜
演出 武内英樹
制作 フジテレビドラマ制作センター
■CAST■
野田 恵 … 上野樹里
千秋真一 … 玉木 宏
・
峰 龍太郎 … 瑛太
三木清良 … 水川あさみ
奥山真澄 … 小出恵介
大河内 守 … 遠藤雄弥
・
フランク … ウエンツ瑛士
ターニャ … ベッキー
並木ゆうこ … 山口紗弥加
孫Rui … 山田 優
片平 元 … 石井正則(アリtoキリギリス)
・
黒木泰則 … 福士誠治
エリーゼ … 吉瀬美智子
峰 龍見 … 伊武雅刀
シュトレーゼマン(ミルヒー)… 竹中直人
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