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2008年1月31日 (木)

■【書評】『H5N1型ウイルス襲来』新型インフルエンザから家族を守れ!岡田 晴恵。今できることは何か。

【新型インフルエンザ】というものについて、分かっているようでいてまったく理解できていなかった。

やみくもに【人類の破滅的危機】を煽るのではなく、「今」、そして「その時」に何をすれば良いのかが具体的に語られているところに好感がもてる。

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■H5N1型ウイルス襲来―新型インフルエンザから家族を守れ!
■国立感染症研究所研究員 岡田晴恵■
★★★★☆(6件のレヴュー)

■いわゆるインフルエンザと「新型インフルエンザ」というのは病気として根本的に違うのだという。

一般的な、Aソ連型(H1型)、A香港型(H3型)などのインフルエンザは主に体力の無い幼児や老人において重症化、さらには死に至らしめることもあるが、健康な成人の場合は過去の感染による免疫記憶があるので感染しても発病しないか、発病しても比較的軽い症状で治まることもある。

とはいえ、普通のインフルエンザでも毎年日本人のうち1000万人程度が感染し、高齢者を中心に1万人前後の死亡者が出ているわけで、あまく見ることは出来ない。(なおB型、C型は突然変異を起こしにくいため免疫の効果が長く続く。)

■一方、「新型インフルエンザ」は鳥インフルエンザが突然変異やヒトインフルエンザと交雑することにより、ヒトのヒトのあいだで効率的に伝染する力を備えたウイルスであり、誰も免疫を持っていないから汚染されれば確実に感染する。

すると感染したヒトの中でウイルスが爆発的に増殖し、それがヒトからヒトへと伝染することで超ねずみ算的に社会に広がることになる。

これが世界的に拡がることを「パンデミック」という。

1918~20年に流行した「スペイン風邪(インフルエンザ)」が、それである。

この時の世界人口18億人のうち、5~10億人が感染し、4000~8000万人が死亡、日本でも45万人以上が亡くなった。

交通機関の発達も人口密度も比較にならないほど低かったあの時代にこの被害度である。

■しかも現在、新型インフルエンザへ変移する秒読み段階に入っているといわれる『H5N1型』は強毒性をもっており重症化しやすい。感染した場合の致死率は約60%にも及ぶらしい。

実際、昨日の読売新聞の記事によると、インドネシアでは05年に初めてH5N1型鳥インフルエンザの感染者を出して以来、死亡した人が累計100人に達したようだ。

06年の感染者55人のうち、死者は45人。実に80%の致死率である。

■こうして鳥インフルエンザが人間への感染を繰り返していくなかで、ヒトへの感染力が高い「新型インフルエンザ」に突然変異するウイルスがいつ発生してもおかしくはない。

そして、一度「新型インフルエンザ」が発生したならば、その患者が発症する前に「空気感染」を起すというその能力が故に、その囲い込みは非常に困難であり、確実に「パンデミック」に移行すると恐れられているのだ。

■29日、新型インフルエンザ対策チームが与党の中に発足したようだ。

「新型」発生時の社会的な対応の決定、症状を抑える「タミフル」の備蓄や、プレパンデミック・ワクチン(今、存在する鳥インフルエンザからつくられる代替品)の準備、そして発生から6ヵ月以上かかるといわれている新型インフルエンザ・ワクチンの開発期間短縮と大量生産の検討。

遅ればせながら、という感じもするが、「行動を起した」というそのこと自体はとても評価できるし、省庁間の垣根をぶち壊して、是非とも頑張っていただきたいものである。

■では、我々一般市民にできることは何か。

その点について、具体的に分かりやすく記述されていることが、この本の価値である。

以下に、備忘録として簡単にまとめておく。
【本書の内容を素人がまとめたものなので参考程度に。詳細は本書を参照してください。】

■新型インフルエンザが発生したら。

●感染しない為に。
①入念な手洗い、洗顔、イソジンでのうがい。
②外出しない。出歩く時はマスク、ゴーグル、手袋、コート。
 (口、鼻だけでなく、眼の粘膜からも感染する。)
③家に持ち込まない。コートは玄関、マスクは使い捨て。

●他人に感染させない為に。
④咳、くしゃみは、ハンカチやティッシュで押さえてする。
(或いはひじで鼻と口を覆いかぶせる。)

■新型インフルエンザ発生に備えて。

●6~8週間の流行期間を備蓄・篭城でやりすごす。
①乾燥食品、缶詰、レトルト食品。飲料水など。
②日用品、医薬品、マスク、使い捨てビニール手袋など。
③非常用品:カセットコンロ、ラジオ、懐中電灯、水など。

■新型インフルエンザに感染したら。

●あわてて医療機関に駆け込まない。
①他人に感染を拡げる危険
②自分が感染を受ける危険。
③地域の保健所に連絡して指示を仰ぐ。
●家庭看護は患者の隔離と感染防御。
①マスク、小まめな手洗い、消毒の徹底。
②1時間に5、6回、部屋の空気の入換えを。
●患者の看護について。
(※当たり前のことですが、医師の指示に従ってください。)
①脱水症状を抑えるために、小まめな水分補給を。
②タミフルは発症48時間以内に服用。(重症化を抑える)
③解熱剤で体力消耗を避ける。(保冷剤を頭と脇の下に)
 ・15歳以下には必ず『小児用解熱剤』を。

■とにかく無用な外出を避けて自分が感染しないように気をつける。それが家族を守る最も有効な方策であるし、結果として社会全体での感染爆発の威力を抑えることにもつながることになるのだ。

いずれにせよ、「その時」に慌てないように事前にしっかり心構えをして準備しておくというとこだろう。

■読み始めたら止まらなくなり、夜中にやっと読み終えたのだけれど、突如として、ナニカヲシナケレバナラナイ、という衝動に駆られ、インフルエンザとは関係ないだろうと思いつつも、買ったまま放っておいた家具転倒防止のつっかえ棒を本棚の上に設置した。

そんな見当違いの行動に妙な満足感を覚えた不思議な夜であった。

                        <2008.01.31 記>

■新書 『 H5N1型ウイルス襲来 』
―新型インフルエンザから家族を守れ!

★★★★☆(6件のレヴュー)

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■気が遠くなるような彷徨とラストシーンに泣ける。■
★★★★☆(11件のレヴュー)
 

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