■すべては私のイメージなのか。『爆笑問題のニッポンの教養』 知覚心理学・北岡明佳。
今回のテーマは『錯視』。
■『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE019:「この世はすべて錯覚だ」 2007.11.27放送
立命館大学文学部教授(知覚心理学) 北岡明佳
■まずは、何よりこれを見なけりゃ始まらない。
どんぐりはまわってますか?
これが『錯視』である。
■北岡先生は2000点をこえる『錯視』作品をつくった錯視界の大御所なのだ。
その原動力は、「自分の好奇心を満たすため」。
あっさりしていて面白い。
■その先生自体の面白さに興味を惹かれて太田がいじりに入るのだけれど、先生があまりにもマイペースなので先に進まない。
そういえばクラスに一人くらいはこういう雰囲気の生徒がいたな、と懐かしく思う。(ネクタイを締めてないのに律儀にワイシャツの一番上のボタンを留めている。そういう感じ。)
■話を『錯視』に戻そう。
錯視がおこるメカニズムは、ほとんど分かっていないのだという。
コントラストが強いところは脳内の処理が早く、
コントラストが弱いところは脳内の処理が遅い。
その「時間差」が「動き」を生んでいる。
そういう仕組みもあるだろうという話だ。
■人間の脳が映像を受け取るまでに0.1秒の時間がかかる。さらにその情報処理に時間がかかる。毎秒10億回の演算をおこなうパソコンのようにはいかないのだ。
したがって脳は、「だいたい、正しければOK」という、結構いいかげんな捉え方をするようだ。
■「我々は、本当のものを見ていない」
そのコトバが太田の心をゆさぶった。
他人のこころに自分がどう映っているか。
それは「今、目の前にいる太田 光」を見ているわけではなく、過去の言動からくる『イメージ』によって歪められた「太田 光」像じゃないのか、と最近つよく感じるらしい。
そして、「相手が抱いている歪んだイメージ」さえ結局は太田自身の脳に映ったイメージに過ぎないと考えたとき、
ああ、自分自身から逃れることは出来ないのか!
と、自問自答の堂々巡りに入っていく。
■『錯視』も、「カタチの組み合わせ」が持つ「文脈」、「先入観」が引き起こすという点で太田の苦悩と同じ構図で、所詮われわれは脳の中に映ったイメージでしか外界を捉えることはできないのだ。
そこに気がついたということなんですよ、太田さん。
と先生はあくまでも律儀である。
そして番組はすっかり太田のカウンセリングの場と化してしまうのであった。
■自分の外にあるものも、脳の中のイメージでしかない。
愛人とセックスしていてもすべては自分の脳の中の出来事であるが故に、それはオナニーに過ぎない。
他人と直接触れることが出来ないなんて悲しいじゃないか、というのだ。
「それでいいじゃないか」と開きなおる自分と、
「でも、そんな自分を許せないじゃないですか!」
と熱く追求する自分が、太田の中でせめぎ合い、のたうつ。
■けれども、太田が谷崎潤一郎の『春琴抄』について語ったくだりは私のこころをつよく動かした。
それによって私の中に『今まで存在しなかったもの』が生まれたのは事実だし、その『何か』が自分の外から伝わってきたのも事実である。
その『何か』は確かに私の脳の中のイメージに過ぎないが、『春琴抄』の話を聞くまえとあとでは明らかに『違う私』なのである。
■「赤い」とか、「イヌ」とか、我々の中で固定化されたイメージとは別に、他者と偶発的に係わり合い、干渉し合うことで生まれる『存在』もある。
それは絶対的なものではなく、それぞれの主観の中に生じる『影』なのかもしれない。
けれどその『影』が、予定されたものでなく想定外のドラマとして立ち上がるものだからこそ、人との関わりは面白い。
太田光は孤独(ひとり)ではないのだ。
<2007.11.29 記>
■関連書籍■
■ 錯視完全図解―脳はなぜだまされるのか? (Newton別冊)
監修:北岡明佳 ニュートンプレス (2007/09)
<Amazon評価> ★★★★☆(レヴュー数 2件)
■心理学を中心に脳科学の成果なども盛り込んで科学的に解説していきます。錯視のしくみがよくわかる一冊です。(紹介文より)
■関連記事■
■ アンドロイドは人間になれるのか。知能ロボット学教授 石黒浩。
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■『錯視』のいろいろ。
http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20071127_illusion.html
■北岡先生のHP
http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/
■『爆笑問題のニッポンの教養』番組HP
http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/
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コメント
ぐるぐる・うねうね・もやもや。。。
「錯視」のいろいろ のサイト、はまりました。
近眼・老眼でもしっかり錯覚できて嬉しいです^^
投稿: 臨床検査技師 | 2007年12月 1日 (土) 08時59分
臨床検査技師さんへ
あんまり錯視ばかり見て遊んでいると
目が回って気持ち悪くなってしまうので、
ほどほどに・・・(笑)。
投稿: 電気羊 | 2007年12月 1日 (土) 16時29分