■万物は流転する。『爆笑問題のニッポンの教養』 分子生物学教授 福岡伸一。
隔週金曜日から、毎週火曜日放映に変更になった「爆問」。
いきなりオールナイトニッポンのテーマ曲で始るところが「爆問」らしくて面白い。
今回のテーマは、「生物とは何か?」
FILE:011 「生物が生物である理由(わけ)」(番組HPより)
青山学院大学教授(分子生物学)福岡伸一
2007年10月2日放送
■福岡伸一さんは、その、およそ理系とは思えない豊かな文章表現で評判になったベストセラー、「生物と無生物のあいだ」の著者である。
今回の番組を見ていて、随所に達観したようなところが感じられ、なるほどなー、と妙に納得。とくに、川辺にあそぶ小魚を眺める姿が印象的であった。
■さて、テーマの「生物とは何か?」である。
自己複製する有機体。というのが一般的な答えだと思うのだが、福岡さんは、そこからさらに「何故」という問いを起こす。
生物をカタチ作るの全ての要素を試験管にあつめて混ぜ合わせても、生命は「立ち上がってこない」。それは何故か?
■福岡さんは、早世の科学者ルドルフ・シェーンハイマーが1937年に発見した「動的平衡」に着目する。
ハツカネズミが食べた「物質」が、瞬く間に全身の細胞に行き渡たる。それでいてハツカネズミの体重は変わらない。
そのことが指し示しているのは、我々の細胞がその細胞のままで中身の分子が入れ替わっているということだ。
一般に新陳代謝として我々が認識しているのは、からだの細胞が次々と入れ替わる、というものだが、細胞自体を構成する分子のレベルで常に「入れ替わり」が行われているというのだ。
生物と無生物のあいだには常に分子のやりとりが行われている。我々の体を構成している分子も、かつて机や鉛筆を構成していた分子なのかもしれないのだ。
■そういう目で、もう一度「生物とは何か?」と問うとき、生物と無生物のあいだにある境界線がゆらぎはじめる。
もちろん、そこに「生物とは何か?」に対する答えは提示されない。むしろ難しくなってしまった感がある。
ただ分かるのは、クローンを行ったところで、「全く同じ存在」が複製されるのではない、ということだ。
シェーンハイマーが提示した「動的平衡」の世界では、生物の構成分子は常に入れ替り、同じところにとどまらない。
過去の自分とは、もう出会うことは出来ない。その一瞬一瞬は、一度きりの存在なのである。
■太田は、そこに宗教的なものを感じる。科学と宗教は何が違うのか?実は同じものではないのか?
それに対して福岡さんは、科学と宗教は「文体の違い」でしかない。と言いきる。
今回の話にしても、「万物は流転する」と説いたヘラクレイトス(B.C540頃~480頃.)が語っている内容であり、全ての現象はすでに語りつくされている。
宗教と科学にしても同じこと(現象)をどう説明するか?という問題に過ぎない、というのだ。
■では何故、学問をするのか。
それは、「新しいものの見方」を得るためだと福岡さんは語る。
うーむ、至極まっとうな科学史観を難しく言い換えているだけのような気もするが、その「言い換え」にこそ意味があるという「コトバ遊び」と捉えられるのは本意ではないだろう。
多面的に物事を捉えることができるように、いろいろな物差しをもっていること、或いは作り出していくこと。それが、常に流転し同じところにとどまらない「世界」というものを理解するために必要なことだと言いたいのではないか。
そのことが福岡さんの著作の「分かりやすい」という評判につながっているようにも思えてくる。まぁ、読まずして語ること無かれ。秋の夜長の供として、まずは読んでみましょうか。
<2007.10.09 記>
■新書 『生物と無生物のあいだ』
福岡伸一 著 講談社 (2007/5/18)
<Amazon評価> ★★★★ (レヴュー数 101件)
■レビューを読む限り、タイトル通りの内容を期待すると肩透かしに合うようだ。けれど読む人のほとんどが読みやすいという文章が如何ほどのものなのか、非常に気になるところである。
■新書 『プリオン説はほんとうか?―タンパク質病原体説をめぐるミステリー』
福岡伸一 著 講談社 ブルーバックス(2005/11)
<Amazon評価> ★★★★☆(レヴュー数 17件)
■ノーベル賞を受賞した狂牛病の「プリオン説」に対して異議を唱えた本。プリオン説が正しいかどうかとは別として、学問のアプローチの多様性という意味で主流の意見に対して異議を提示することは大切なことだと思う。
■書籍版・『爆笑問題のニッポンの教養』
■一話一冊、新書サイズにまとめた本のようです。
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