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2007年9月 2日 (日)

■ アンドロイドは人間になれるのか。『爆笑問題のニッポンの教養』 知能ロボット学教授 石黒浩。

世の中には面白い人がいるものである。

ロボット工学と名乗りながら実はそれは単なる手段に過ぎず、その本質は哲学にある。それを確信犯として突き進んでいるところが素晴らしい。

Photo_2
■FILE009:「ロボットに人間を感じる時・・・」 (番組HPより転載)
大阪大学教授 石黒浩(知能ロボット学)
2007年8月31日放送

■ともかくたまげた。

石黒教授の作り出した「アンドロイド」たちは、まさに人間そっくりなのだ。その「本物らしさ」はモデルの精巧さによるもののではなく、その「動き」にある。

空気で駆動するアクチュエータで、カラダの動きや仕草だけではなく、微妙な表情や目線まで再現しているのだ。

その不思議な感じは、「気味が悪い」というコトバが一番近い。

「人間」らしいロボットは相手の人間に親近感を与えるが、それが「人間」に近づけば近づくほど「不気味さ」を与えるようになっていく。

このことは一体なにを意味しているのだろうか。

■石黒教授のロボット工学へのアプローチは独特のものである。「人間とは何か」という根源を問う、哲学的な興味から出発しているのだ。

テーマは、「人間らしさ」がどれくらい「人間」に影響を与えるのか。

それは、人と人とのコミュニケーションの問題であり、『我』が認識する『他者』との関係性を追及する哲学的問題なのだ。

そして、天才的に素晴らしいのは、その疑問を自らの『感覚』を通じて理解しようと実際に実物を作ってしまうところにある。

初号アンドロイドは自分の娘さんをモデルにして作られた。そこに石黒教授の「自分の感覚が頼り」という哲学的信念を感じる。

そして、しまいには自分をモデルにしたアンドロイドまで作ってしまう。

「自分とは何か」という根源的問い。

そのギリシャ時代から人類が長々と机上で論議していた形而上学的問いを、【これだ!】とそのまんま現実世界に持ち込んでしまう圧倒的乱暴さ!!!

世の哲学者たちは、その前で呆然と立ち尽くすしかあるまい。

なんて愉快なことだろう!拍手喝采である。

■太田は、『我れ思うゆえに我あり』というデカルトと、それに対するニーチェの話を持ち出してきたが、よく分からなかったので調べてみた。(付け焼刃なので間違っていたらご指摘くださるとありがたいです。)

デカルトは『我が思わないとき』の世界を維持するべく絶対的存在(神)を必要としたのに対し、ニーチェは難しいことをすべてゆだねることが出来る絶対的存在(神)を切り捨て、荒野にひとり佇む『私というもの』を厳しく定義した。

その『絶対的な孤独』に対して、フッサールという哲学者はこう考えた。

確かに『他人』について『私』が認識できるのは、相手そのものではなく、『私』に映った相手のイメージに過ぎない。その『隣人』が「『私』の夢や幻想であったり、自動機械(アンドロイド・哲学的ゾンビ)などでは無い」と証明する手立ては無い。

だが現実には、隣人と私とは、かなりの部分で意思疎通が可能である。きっと、完全に独立した『私』と『相手』の間には、共有し分かち合うことが出来る『場』のようなものが存在するのだろう。

■思うに、その共有される『場』というものは、「笑顔」が万国共通であるように、人間という生物としてDNAに刻まれたものと、秋の虫の音を風流だと感じるような「風土・文化」的なものとがあるのだろう。

石黒教授のアンドロイドは、その『私』と『他者』をつなぐDNAに刻まれた法則の領域に踏み込んでいるのだと思う。

ロボットが人間らしい仕草をすることに対して親近感を持てるのは、それが「相手は、あくまでも『自意識』を持たないロボットである」という安心感のもとに成り立っているのではないか。

そして、石黒教授のアンドロイドが人間に近づけば近づくほど『不気味』に感じるのは、頭では相手を人工物だと認識しているのに、自分の身体に埋め込まれた無意識が「これは意識をもった人間かもしれない」と感じとり、そこに強いギャップを生じるのであろう。

そのギャップは『不気味』であると同時に、「自分」という不確かなものを問答無用に突きつけてくる非常にスリリングなものであり、「言葉」では決して追いつくことの出来ない最高の『芸術』作品なのだ。

ああ、実物を見てみたい。

                         <2007.09.02 記> 

■爆笑問題のニッポンの教養■
新書版 「爆笑問題のニッポンの教養」
    

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■『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
フィリップ・K・ディック 著 早川書房 (1977/03)
<Amazon評価> ★★★★☆(レヴュー数 34件)
■P・K・ディックの最高傑作にして、名画 『ブレードランナー』の原作。逃亡したアンドロイドを追う男の話だが、テーマはまさに「人間とは何か」。映画も傑作だけど、原作はその10倍「深い」。石黒教授も繰り返し読まれているに違いない。
 

■大阪大学 知能ロボット学研究室HP アンドロイド研究
http://www.ed.ams.eng.osaka-u.ac.jp/research/Android_j.html

■『爆笑問題のニッポンの教養』番組HP
http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/

                    

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コメント

こんばんは。
アンドロイド、感触(?)も試してみたいですね。遠い昔、「母親学級」で扱った、新生児ダミーも結構リアルでしたが・・・
 そういえば、科学模型大手の京都科学が医療現場の卵達の臨床実習用に開発したものに、リアル人体模型「イチロー」(ネーミングは開発第1号だったから)や、新型静脈注射訓練用模型「シンジョウ」(新靜)などというのがあるそうです。京都科学のサイト、ご興味がおありでしたらご覧になってみて下さい。アンドロイドとはまた違った味わいですが、マニアックで面白い模型がたくさんラインナップされていますよ。

投稿: 臨床検査技師 | 2007年9月 5日 (水) 20時06分

臨床検査技師さん、
面白い情報ありがとうございます。

これですね。
http://www.kyotokagaku.jp/
→シミュレーター
→■医学・診療シミュレーター

いろいろ眺めてみましたが、どうもこういうのには弱い性質で、何故か指の力が抜けていくんですよね・・・。
なので、絶対に医者とか看護士にはなれません(苦笑)。

投稿: 電気羊 | 2007年9月 5日 (水) 21時38分

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