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2007年9月16日 (日)

■神の領域。『爆笑問題のニッポンの教養』 宇宙物理学教授 佐藤勝彦。

今回の爆問のテーマは宇宙論。

ひやー、難しそう。

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FILE:010 「タイムマシンは宇宙の扉を開く」(番組HPより)
東京大学大学院理学系研究科教授 佐藤勝彦(宇宙物理学)
2007年9月14日放送

■今回の太田の突っ込みはあまり冴えていなかった。

「相対論で時間の流れが絶対的でないことが分かり、不確定性原理でモノの状態もあいまいなものになってしまった。

我々が生きている「科学的」世界観なんて大したものじゃない。むしろ人のアタマの中のイメージ・想像力の方がよっぽどスゴイのじゃないか。」

その「混ぜっ返し」に対して、「宇宙のモデルを『イメージ』する力は必要なのだけれど、それが現実で検証されてこそ意味がある。」と佐藤教授は教え諭すように語りかける。

太田は太田なりの世界観をもっているのだけれど、佐藤教授の世界観に比べれば、非常に脆弱なものだった、ということだろう。

太田の完敗である。

■137億年前の「宇宙の誕生の姿」をモデル化し(インフレーション理論、1981年)、しかも宇宙線の「ゆらぎ」の観測によって、そのモデルの確からしさが裏付けられた。(2006年)

その理論では、宇宙は「無」から始まったとされる。「時間の流れ」も「空間的な果て」も無い「真空」、または「’はて’のない条件」。だが、そこには粒子と反粒子が現れてはお互いに消しあう『真空のゆらぎ』というエネルギーがあり、それが、あたかも「形の無い『水』」が「結晶構造を持った『氷』」になるように「相転移」して実世界にエネルギーを放出し、ビッグバンにつながったのだという。(よく分からん!)

しかも、その宇宙は、母が子を産み、子が孫を産むように多くの『子宇宙』を連鎖的に生み出すらしい。しかも「我々の宇宙」は、そのどの宇宙であるかは分からない、というのだ。(さらに分からん!)

佐藤教授とは、実はそういう「生半可な想像力」を遥かに超越した理論を構築したすごい人なのである。

Photo_4
■「宇宙の創生」
東京大学総合研究博物館ニュース・
宇宙の創生とウロボロスの図より

■佐藤教授の「凄さ」は、それだけではない。

「人間なんてものは、アフリカにいた10万年前とそう変わってはいないですよ。身内は大切にするけれど、ちょっと離れると虐殺したりする。そういうふうに進化してしまったのです。」

と、熱っぽく語るところに佐藤教授の「世界観」の本質が凝縮されているように思える。

そこには、単に物理法則をこねくり回す数学オタクの姿ではなく、ヒトとして「世界の深層」を見極めようとする哲学者の眼差しがあるのだ。

■「宇宙の始まり」を語ることは、「人がどう作られてきたのか」という疑問の延長線上にある。

人を構成する元素は宇宙の誕生によって生まれてきたものだし、我々が「認知」している空間+時間の4次元という時空の構成も宇宙の誕生によって決まってきたものだからだ。

したがって、人間は「宇宙」の論理から逃れることは出来ないのである。

人間を中心としてミクロの世界(量子論)とマクロの世界(宇宙論)が広がるが、マクロの極限である宇宙の創生は、ミクロの極限である量子論によって初めて語られる。

つまり、「世界は人間を含んだ円のように美しくつながっている」という世界観(ウロボロスの図)を描くことができるのだ。

Photo_3 
■「ウロボロスの図」
東京大学総合研究博物館ニュース・宇宙の創生とウロボロスの図より

■その世界観の中では、我々は美しい物理法則に則った「永劫回帰」の循環の中に存在している「物理学的」な存在なのだ。

これだけ強固な哲学を持った物理学者には生半可なことでは太刀打ちできない。

それはアリストテレスから、ニュートン、アインシュタインへと連なる偉大なる哲学体系の頂点であり、その眼差しは「世界」を創造する「神の領域」に至ろうとしているのだから。

とりあえず我々にできるのは、佐藤教授の肩に乗り「その領域」を盗み見ることで、自らの安直な世界観に痛烈な打撃を加え、小さくまとまった「想像力の限界」を拡げてみることなのだろう。

                           <2007.09.16 記>

■爆笑問題のニッポンの教養■
新書版 「爆笑問題のニッポンの教養」

      
■佐藤勝彦 教授 の本■

■『「相対性理論」を楽しむ本』―よくわかるアインシュタインの不思議な世界
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・楽しいイラストとポイントが一目でわかる図解による画期的分かりやすさ、なのだそうです。

■『「量子論」を楽しむ本』―ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる!
佐藤勝彦 著 PHP文庫 (2000年4月)
<Amazon評価> ★★★★☆(レヴュー数 21件)
・平易な文章と図解で文系の人でも理解しやすい本のようです。

■『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』
佐藤勝彦 著 PHP文庫 (2001年11月)
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・宇宙創生の理論、子宇宙、孫宇宙・・・宇宙の最新パラダイムについて平易に解説した入門書。だそうで、私はこれを読んでみようと思います。

■『ホーキング、宇宙のすべてを語る』
スティーヴン・ホーキング 著 佐藤勝彦 訳 ランダムハウス講談社 (2005年9月)
<Amazon評価>
 ★★★★ (レヴュー数 12件)
・ホーキング博士の最新理論が比較的分かりやすく書かれているようです。   

    
■ 佐藤勝彦教授 講義録 ■

■『宇宙創生と物質の起源』・日立ハイテク・科学シンポジュウム講演
東京大学大学院理学系研究科教授 佐藤勝彦
・宇宙の創生について簡便にまとめられています。

■東京大学 駒場教養学部・学術俯瞰講義ノート
・『物質の生い立ち』 -素粒子、原子、宇宙-
東京大学大学院理学系研究科教授 佐藤勝彦
・4回にわたる講義録(パワーポイント)。音声はありませんが、大体の流れはつかめます。常に『人間』のサイズを意識しながら考察を進めていく、佐藤教授の哲学が垣間見える。

 
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コメント

はじめまして。
毎回この爆笑問題の番組はみているのですが、今回だけ見逃してしまいました。
そしてその回がなんと佐藤勝彦さん!

もし番組録画しておられたら、ぜひダビングさせていただけないでしょうか?

是非よろしくお願いいたします。

>これだけ強固な哲学を持った物理学者には生半可なことでは太刀打ちできない。

全く同感です。

投稿: YK | 2007年9月21日 (金) 20時07分

YKさん、見逃して残念でしたね。
でも、ダビングは勘弁させてください。(苦笑)
番組HPをこまめにチェックしていれば、再放送もきっとあると思います。お盆の頃に、深夜枠で再放送していたみたいだし・・・。
あと、新書版で続々出版されるようですから、そちらを待つのも手ですね。
早速、今月末くらいに4冊(4回分)出版されるようですよ。

投稿: 電気羊 | 2007年9月22日 (土) 22時43分

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