■ミイラと暮らす死生観。インカ・マヤ・アステカ展。国立科学博物館。
NHKスペシャル『失われた文明 ~インカ・マヤ・アステカ~』を見て、是非ほんものを目にしたいものだと思っているうちに気がつけば終了間際。あわてて上野の国立科学博物館へ駆け込んだ。
■チラシ。左から、ワシの戦士像(アステカ)、ヒスイの仮面(マヤ)、
黄金の冠(インカ)、死の神像(アステカ)。
■紀元前4世紀頃、熱帯雨林を中心とした地域に誕生した都市国家の集合体・マヤ。
北方からメキシコ中央高原に移住してきた人々が湖上の島に首都(現在のメキシコシティ)を築き、14~16世紀まで栄えたアステカ王国。
紀元前10世紀頃のチャビン文明を源流とし、15世紀末頃には南米大陸の西側を貫くアンデス山脈に沿って南北4000Kmにも渡る長大な国家に発展したインカ帝国。
16世紀、スペインによって一瞬にして滅ぼされてしまった文明たち。それゆえに、その独特の文化が秘める謎めいた魅力が我々をつよく惹きつける。
■(左)密林に囲まれた都市・ティカル(マヤ)、(右)天空都市マチュピチュ(インカ)
■「ヒスイの仮面」(マヤ)、心臓の部分をくり抜かれた「マセワル(庶民)の石彫」(アステカ)、王や貴族が自らを傷つける儀礼に用いた「自己犠牲用の錐」(アステカ)、幼いうちから矯正されたのであろう異様に長い頭骨と平たい頭骨(インカ)。
多くの興味をそそられる展示があったが、やはり、インカの「父と子のミイラ」が私の心をとらえて離さない。
人は死んでもミイラとなって家族とともに生き続ける。
アンデスの西にある砂漠地帯で生まれたこの風習は、インカ帝国拡大とともに広がっていったという。そして現在でもペルーの一部では庭先に家族のミイラが住んでいたりするのだ。
■父と子のミイラ(500~1000年前、多くの副葬品とともに出土。)
■我々日本人にとっての「死」とは「人生の終わり」であり、だからこそ、懸命に行き続けようと空しくあがき、その決して逃れることの出来ない恐怖に慄くのである。ゆえに「死、そのもの」である遺骨は日常から隠され、見えない地下へと葬られるのだ。
「家族と別れがたい」という切ない想いは、「葬儀」という儀式によって切り離され、「遺骨」そのものから「位牌」という木製の置き物につなぎ変えられる。
果たしてインカの人たちは、一体どういう想いで「ミイラ」と暮らしていたのだろうか。
日本人である私のこころにはぼんやりとしか映ってこない。
■だが、不思議と「アステカの生贄」のような慄然とした生理的嫌悪は全く感じない。むしろ優しいあたたかさを感じるのだ。それはこの「父子のミイラ」の家族たちの愛によるものなのだろう。
そういう意味では、私はただ「ミイラ」という「かたち」に囚われているだけで、彼らの心は我々とそう変わらないものではないのかとも思えてくるのだ。
その上で、「死」と向き合って生きてきたインカの人々のこころは、強欲で、それ故に不安に満ちた我々のこころよりも、たおやかで豊かなものであったのかも知れない。
その優しさがインカ帝国滅亡につながるひとつの要因になったのではないか・・・、などと勝手な想像をめぐらせては、少しやるせない気持ちになるのであった。
<2007.09.26 記>
■追記■
国立科学博物館を訪ねるのは何年ぶりだろうか。20年ではきかないだろう。けれど、インカ・マヤ展の出口ではシロナガスクジラが変わらぬ姿で迎えてくれた。お久しぶり、元気だったかい?
■(左)国立科学博物館・正面
■(右)シロナガスクジラ(全長30メートル)・正面左手
■アンデスミイラ (NHKスペシャル 失われた文明)
■「アンデスミイラ」・・・って、メロンじゃないんだから。
■マチュピチュ (写真でわかる謎への旅)
柳谷 杞一郎 著 雷鳥社 (2000/02)
<Amazon評価> ★★★★★(レヴュー数 3件)
■いつか行ってみたいものである。(などと言っているうちに、よいよいになって行きそびれるパターンか?)
■銃・病原菌・鉄―1万3000年にわたる人類史の謎
ジャレド ダイアモンド 著 草思社 (2000/09)
<Amazon評価> ★★★★☆(レヴュー数 45件)
■「はるか昔、同じような条件でスタートしたはずの人間が、今では一部の人種が圧倒的優位を誇っているのはなぜか。著者の答えは、地形や動植物相を含めた「環境」だ。」・・・非常に興味があるのだけれど、まだ手を出せていない本のひとつ。うーむ。
■銃・病原菌・鉄[ナショナル ジオグラフィックDVD BOX]
ナショナル ジオグラフィック編集 (2007/6/28)
<Amazon評価> ★★★ (レヴュー数 3件)
■或いは安直に映像に奔る、か・・・。
■ Amazon.co.jp ■
■■■DVD 「今、売れている順番」カテゴリー別■■■
■ 日本映画 ■
■ 外国映画 ■
■ アニメーション ■
■DVD売上上昇率ランキング■
■■■書籍 「今、売れている順番」カテゴリー別■■■
■ 歴史・時代小説 ■
■ミステリ・サスペンス■
■ノンフィクション(思想・科学・歴史ほか)■
■書籍 売上上昇率ランキング■
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント