■岸田劉生と麗子像。
梅雨明けの週末に東京国立近代美術館に行った。
お目当ては別にあったのだが、思いがけず岸田劉生を勉強することになった。
岸田劉生といえば、教科書に載っていた恐ろしげな「麗子像」しか知らなかったので、新鮮な驚きを得ることが出来た。
■岸田劉生 『道路と土手と塀(切通之写生)』 大正4年(1915年)
この迫力に圧倒された。
坂道が持つ質量がドカンと存在する。
左手の白い石組み、右奥の土盛り、坂の上に広がる空、
全てがこれ以上ないと思われるバランスで
それぞれが存在を主張している。
坂道を横切る影は電信棒のものだろうか、
この2本の影は、絵に奥行きを持たせているだけでなく
正午過ぎのじりじりと照りつける太陽や、土のにおい、
といった「現実感」を産み出している。
その場面に気持ちが吸い込まれていくようだ。
しばし見とれてしまった一枚である。
■岸田劉生 麗子肖像(麗子五歳之像) 大正7年(1918年)
数えで5つだから、麗子が3歳か4歳のころの肖像である。
上の「道路と土手と塀」を見た上で麗子像をみると、
そこに感じる一種の「怖さ」は、
岸田劉生のリアルすぎる画風に由来するものだと気付く。
特別展示されていた写真に写った麗子ちゃんは
お母さん似で、子供らしい可愛らしさに
あふれたものであった。
また、岸田劉生から麗子に宛てた絵手紙や
麗子から父に宛てたハガキも展示されていて
それらを眺めると、
そこには、いつの時代も変わらない、
父と娘のあたたかい情感が感じられてくる。
モデルをやってる時に、お父様のためにと
足が痛いのを我慢するという文面もあって、いじらしい。
同じく娘を持つ親の身として、
お父さん、ちょっとは可愛らしく描いてあげなよ、と
突っ込みをいれたくなってしまった。
<2007.08.06 記>
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画と文:岸田劉生 二玄社 (1997/07)
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