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2007年8月31日 (金)

■【ひつじの本棚】『スカイラインとともに』、櫻井眞一郎かく語りき。

今年はスカイライン生誕50周年なのだそうだ。
スカイラインといえば櫻井眞一郎さん、なのである。

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■『スカイラインとともに (わが人生 (2))』
櫻井眞一郎 著 神奈川新聞社 (2006年6月)
<Amazon評価> ★★★★★(レヴュー数 2件)

■神奈川新聞で連載されていた「わが人生」を単行本化したものだそうで、とても読みやすい構成になっている。

もちろん内容はスカイラインのことが大半を占めている。1957年に完成した初代スカイライン(ALSI型)から、1981年の6代目スカイライン(R30型、いわゆる「ニューマン・スカイライン」)まで、櫻井さんが開発に打ち込んだ情熱がビシビシと伝わってくる本である。

■日産と合併する前のプリンス自動車は中島飛行機と立川飛行機の流れをくむ会社で、「中島」のエンジン技術はピカイチだが、クルマの技術に関しては暗中模索の状況だったようだ。

そのような状況の中で、櫻井さんは上司に励まされつつ独力でサスペンションの技術を磨き上げていったのだ。

■自動車に限らず機械設計の技術者だったら、うーむと唸る言葉が、あちらこちらに散りばめられている。

エンジンの神様、中川良一さん曰く、

「開発に必要なのはクオンタム・ジャンプ(発想の跳躍)だ。大胆に跳べ。」

「おれも失敗を数え切れないほどやってきた。駄目だから元に戻すというのでは、いつまでも進歩しない。元に戻すというようなやり方はするな。櫻井が正しいと思う通りにやれ。」

そうして、板バネや防振ゴムと格闘し、検討と実験を重ねていき技術を積み上げていったのだ。他社の猿マネでは技術は育たない。

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■初代プリンス スカイライン(ALSI-1) ■2代目プリンス スカイライン(S50)

■1966年。プリンスと日産が合併する。

当時、櫻井さんが開発していたC10型スカイラインは、日産の510ブルーバードと競合してしまうが、「出来るだけ共用部品を増やして、別々のクルマにしよう」ということでなんとか生き残る。

この場面での、自らの技術力に対する櫻井さんの絶対的な自信は素晴らしい。理想が高く、信念を持った人でなければこうはいかない。

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■3代目 日産 スカイライン C10型(いわゆるハコスカ)
510
■日産 ブルーバード 510型 【日産ミュージアム】より

■合併後、プリンス系の櫻井さんたちは、「売れる」クルマを作ろうとする日産側と、「『スカイライン』というクルマが持つ哲学、情」といったものを大切にしたい気持ちとの板ばさみに合う。

結果、4代目「ケンメリ」は「羊の皮をかぶった狼」ならぬ、ただの羊になってしまった。と切り捨てる。5代目の「ジャパン」での抵抗も中途半端だった、と悔しがる。

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■4代目C110型スカイライン「ケンメリ」・5代目C210型スカイライン「ジャパン」
「ケンメリ」は、「ダルマ」セリカと並んで小学生の頃の憧れのクルマだった。

■そして、開発をまとめる立場に立った6代目「(ポール・)ニューマン スカイライン」で、「本来」のスカイラインに回帰することを目指す。

その時の開発陣内でのベクトル合わせのやり方が、身震いする程かっこいい。

『作りたいのは、こういうクルマだ!』と上から伝えるのではなく、まず自分のイメージをドラマ仕立てで作っておいて、開発メンバーに対して語りかける。

それに対してメンバーそれぞれが、役職も肩書きも関係なく、自由闊達に「スカイライン」のイメージについて討論する。そうすると、あたかもオーケストラのように、それぞれの想いが共鳴していく。

製品の開発は、コストを制約とした異なる性能の凌ぎあいとなる場合が多い。そうしたときに「こういう商品をつくるのだ」というイメージが開発メンバーで共有されていると、向かうべき方向が分かっているので話が早い。

このベクトル合わせが、なかなか上手くいかないのである。やはり、櫻井さん自身の人徳によるところが大きいのだろう。

_r30_
■6代目 R30型スカイライン 「ニューマン・スカイライン」
親父がR30を買ったときの嬉しそうな顔を思い出す。

■実際の販売台数では、「大衆迎合」の4代目、5代目は大成功で、むしろ、「所有する人がそのクルマに『愛』を感じる」という「スカイライン」らしさを取り戻した6代目で、売上は半減する。

商売というのは難しいものである。

■その後、櫻井さんの「魂」は、サスペンション設計部を中心に引き継がれ、「90年には世界一のクルマを」という901活動を生み、R32スカイラインGT-Rを代表とした技術的頂点を極める。

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■8代目 R32型スカイラインGT-R

■だが、その後日産は長い低迷を迎えることになる。

ゴーンさんのマネジメントで財政的には復活を果たした日産自動車。だが、残念ながら「売れる」商品がなかなか産み出せずに苦しんでいる。

愛を求めるお客に向けた「魂」のこもったクルマを創るのか、市場分析による「大衆迎合」で商品像を組み立てていくのか。

私見を述べるのであれば、それぞれのクルマには役割があって、スカイラインは前者である続けるべきクルマなのだと思う。

■櫻井さんが最前線にいた時代から20年。北米に市場を広げることでスカイラインは何とか生き延びてきた。

この秋発表の新型スカイラインクーペは、バルブコントロール機構「VVEL」を搭載するなど、なんだか「スカイライン」らしい匂いも漂ってくる。「スカイライン」と呼ぶかどうか分からないがGT-Rも大進化を遂げて復活するらしい。

さて、ミスター・スカイライン櫻井眞一郎さんは、いまのスカイラインに対してどういう思いを抱いているのだろうか?

V36 _v36
■12代目 V36型スカイライン セダン/クーペ。

                         <2007.08.31 記> 

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■『スカイラインとともに (わが人生 (2))』
櫻井眞一郎 著 神奈川新聞社 (2006年6月)
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■何故か絶版。古本は結構出ているようです。

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コメント

はじめまして
NHKドラマ「ハゲタカ」のウェブサイトから、こちらにお邪魔いたいました。40代後半の臨床検査技師(♀)です。「ハゲタカ」「時効警察」にはまり、過去ログも読ませていただき、とても興味深い内容がもりだくさんでた。(自称スカイラインファンとしては今回の車ネタも嬉しかったです!)これからも拝読させていただこうと思っておりますので宜しくお願いいたします。


投稿: 臨床検査技師 | 2007年9月 1日 (土) 21時33分

臨床検査技師さん。こんにちは。
喜んでいただけて光栄です。
ブロガー冥利につきるというものです。
時には中断することもあるかもしれませんが、これからも気長に眺めてやってください。

投稿: 電気羊 | 2007年9月 2日 (日) 11時26分

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