« ■岸田劉生と麗子像。 | トップページ | ■朝焼けと雲の水面(みなも)。 »

2007年8月 7日 (火)

■【ひつじの本棚】『われら以外の人類』 ヒトの進化を俯瞰する。

■1980年代前半、私が中学生の頃には、北京原人から現生人類の間をつなぐ化石が見つかっておらず、その「ミッシングリンク」をめぐる論争が、一部冒険活劇的ドラマを含みながら語られていたように記憶している。

どうやら私に断りも無く、「人類史」は随分と進んでしまったようである。

Photo
『われら以外の人類 猿人からネアンデルタール人まで』
内村直之 朝日新聞社 2005年9月
<Amazon評価  ★★★★ レヴュー数 5件)>

■プロローグが衝撃的だ。

我々日本人(の一部?)が縄文時代を生きていた頃に、その南方には人類と異なる小人族が住んでいたというのだから驚きである。(2003年にインドネシアで発見されたホモ・フローレンシス、身長1メートル 3万8000年前~1万4000年前)

ここ10年の間にいろいろな発見があって、人類史が大きく塗り替えられている。ホモ・フローレンシスの発見は、その象徴的な『事件』である。

■本書は、そういった最新の発見と研究結果を俯瞰し、700万年前に類人猿から人類が分化して以降の複雑で興味深い『人類の歴史』を語ってくれる。

未だ諸説いろいろあるようだけれど、この本は基本的には、分子進化学に基づいた『アウト・オブ・アフリカ説』の考え方に沿っている。

ホモ・エレクトス(北京原人、ジャワ原人)は、160万年ほど前に狩りの獲物をもとめてアフリカを出たホモ・エルガスターの末裔であり、30万年ほど前に絶滅。先の小人族、ホモ・フローレンシスもこの末裔と思われる。

50万年前、地中海を渡ってヨーロッパに広がったホモ・ハイデルベルゲンシス(ハイデルベルグ人)は、15万年前頃にホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)に進化した。が、3万年前頃に消えるように居なくなってしまった。

一方、20万年前頃にアフリカで誕生したホモ・サピエンス(我々)は、10万年ほど前にアフリカを出た。一部、中東でネアンデルタール人と共存していた時期もあったが、さらに広く世界へ進出していった。

■つまり、かつて人類の祖先として教えられた北京原人やネアンデルタール人は、我々とは血がつながっていなかったのだ。

1987年に、現代人147人の胎盤からミトコンドリアのDNAを調べて系図を紐解いていくと約20万年前の一人のアフリカ人女性にたどりつくという『ミトコンドリア・イヴ』の研究もこれを裏付けている。

■さらに面白いことに、アフリカの同じ山の2頭のゴリラと、違う大陸の2人の現代人のミトコンドリアDNAを比べると、同じ山の2頭のゴリラより違う大陸の2人の現代人のほうが遥かに似ているのだそうだ(1994 ハーバード大 M・ルボロ)

それは我々人類が、アフリカで生まれ、世界に広がる途中で一時絶滅の危機に瀕して少人数まで絞り込まれたことによるものだと分かってきている。それを『ボトルネック効果(ビンの首効果)』と呼ぶそうである。

現在の遺伝子研究によると、10万人~4万人程度であったヒトの集団が、1万人程度まで減少する事態が起きたようである。実に90~75%が死に絶えた、ということだ。

我々人類は、アフリカ人、ヨーロッパ人、日本人と、随分違うように見えるけれども遺伝子レベルでは極めて純粋で多様性が無い、というのが面白い。

■さて、これからの人類はどうなるか。

Photo_2

1600年に5億人だった人口が、
1800年に10億人(100年で2倍)
1925年に20億人( 75年で2倍)
1975年に40億人( 50年で2倍)
2000年に60億人( 25年で1.5倍)

遺伝子の多様性のなさを補うように、「文化」という柔軟度の高い適応手段を得て、人類は加速度的に「増殖」した。

けれども、北京原人が30万年前に滅んだように、ネアンデルタール人が3万年前に消え去ったように、数十万年のタイムスパンの中では我々ホモ・サピエンスも、いつかは消え去る運命にあるのだろう。

その消滅は、どういう形で現れてくるのだろうか?

「進化」か、「新しい文明」か、判らないけれども、今と違う形で後継者に受け継がれていくのだろうか。

それとも、老人が記憶を失っていくように、数万年の年月をかけてゆっくりと減衰していくのだろうか?

或いは、小松左京が『復活の日』で描いたような、ウイルス感染で一挙に人口が激減するという唐突なカタチで現れるのだろうか・・・。 

人類が歩んだ数百万年という長い時間(タイムスパン)で考えたとき、ふと、そんな空想に耽りたくなる。われわれホモ・サピエンスが特別だという理由など、どこにも無いのだから。

果たして700万年後の世界で、我々はどのように『歴史』として記述されているのだろうか。
   

Photo
■『われら以外の人類 猿人からネアンデルタール人まで』
内村直之 朝日新聞社 2005年9月
<Amazon評価 
 ★★★★ レヴュー数 5件)>

  
■参考図書■
     

__2
■文庫 『復活の日』
小松左京 角川春樹事務所 (1998/01<初1964年>)
<Amazon評価  ★★★★☆レヴュー数 11件)>
■細菌兵器が事故により流出。爆発的な勢いで世界各地を襲い始めたウイルスの前に人類はなすすべも無く滅亡する。南極に一万人足らずの人類を残して・・・。
ウイルスの感染によって日常が崩壊し人類が次第に滅んでいくシーンのリアルさに慄然とする。神々しさすら感じるラストシーンもまた涙ものである。

■DVD 『復活の日』
角川映画 1980年作品
監督 深作欣二
主演 草刈正雄 オリビア・ハッセー
<Amazon評価  ★★★★☆レヴュー数 31件)>
■この頃の角川映画は大掛かりでしたねー。

Photo_2
■『成長の限界 人類の選択』
ダイヤモンド社 2005年
<Amazon評価  ★★★★ (レヴュー数 3件)>

                          <2007.08.07 記> 

 
■ Amazon.co.jp ■
■ TVドラマ・映画 原作本ページ
■ '07 上半期 Booksランキング
 
■【 書籍・ベストセラー 】
■【 DVD・新着ベストセラー 】

   

|

« ■岸田劉生と麗子像。 | トップページ | ■朝焼けと雲の水面(みなも)。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/208704/16038844

この記事へのトラックバック一覧です: ■【ひつじの本棚】『われら以外の人類』 ヒトの進化を俯瞰する。:

« ■岸田劉生と麗子像。 | トップページ | ■朝焼けと雲の水面(みなも)。 »