■映画 『DEATH NOTE デスノート the Last name 』 出来のいいハリウッド映画を見た気分。
後編『 the Last Name 』は期待以上のデキ。原作ファンも十分味わえる作品である。
●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
古今東西なんでもあり、気楽でささやかな名画座をめざします。
ゆっくりUPしていくつもりなので、ひとつ長~い目で見てやってください。
No.04 『DEATH NOTE デスノート the Last name』
監督:金子修介 公開:2006年11月(前編:2006年6月)
原作では、登場人物の独白で話が展開していくところが多い。どうやってこれを映像化するのか非常に心配していたのだが、さすが金子修介監督、上手く『映画』に仕立ててくれた。特に、ラストの落としどころの「切なさ」は秀逸。レッチリの「スノー」が流れるエンディング・ロールも最高。出来のいいハリウッド映画を見た後のような気分に浸ることが出来た。
■DVD 『DEATH NOTE デスノート / DEATH NOTE デスノート the Last name 』 complete set
<Amazon評価> ★★★★☆(レヴュー数 135件)
■ストーリー■
<前編:「DEATH NOTE デスノート」>
将来を期待される青年・夜神月(藤原竜也)は、ある日、奇妙な黒いノートを拾う。「そこに名前を書かれた者は死ぬ」。それは死神「リューク(声:中村獅童
)」が面白半分に人間界に落とした「デスノート」だったのだ。唾棄すべき凶悪犯が法に守られ、被害者が報われることの少ない現状に不条理を感じていた夜神月は、そのノートによって凶悪犯を次々と粛清していく。
世界的に広がったこの奇妙な変死事件に対し、数々の難事件を解決してきた謎の名探偵’L’(松山ケンイチ)が立ち上がる。’L’の作戦により犯人像は絞り込まれ、ついに夜神月に疑惑の目が向けられる。
<後編:「DEATH NOTE デスノート the Last Name」>
凶悪犯に天罰を下す殺人者は、いつしか’キラ’と呼ばれ次第に世間から認められるようになっていく。
キラ対策本部に潜り込むことに成功した夜神月の前に「第2のキラ」が現れる。別の死神「レム(声:池畑慎之介(ピーター))」からデスノートを手に入れたアイドル・弥海砂(戸田恵梨香
)だ。弥海砂は自分の家族を惨殺した犯人を「処刑」してくれたキラを崇拝し、キラ=夜神月の為に、寿命の半分を犠牲にして相手の顔を見ただけで名前がわかる「死神の目」を手に入れる。
’L’はキラを特定できるのか、夜神月はその前に’L’の名前を知ることが出来るのか。夜神月の父、総一郎(鹿賀丈史)率いる捜査本部の面々や、視聴率の為ならなんでもありの「さくらTV」をも巻き込みながら、ふたりの激しい頭脳戦が繰り広げられる。
最後に笑うのはどちらか?
■以下、ネタバレあり、注意方。■
■前編、「DEATH NOTE デスノート」で、「神」として己の計画を達成するために、幼なじみの命すら生贄とし、完全に「魂」を売ってしまった夜神月。前編について否定的な意見もままあるが、夜神月に「悪」という印象をしっかりと植え付けたという意味で、十分な役割を果たしている。それ以上をこの作品に期待するのは酷であろう。
そして後編、「DEATH NOTE デスノート the Last Name」である。
■ラストは最高の落としどころだと思う。むしろ原作で望んでいた結末であった。脚本が出来上がるまでに紆余曲折があったやに聞いているけれど、金子修介監督自ら手を入れた脚本には、この作品へのファンとしてのコダワリが感じられる。
映画としてはニアとメロが登場する原作第2部は削らざるをえない。だが、このラストには原作で感動を呼んだメロの魂が宿っているのだ。
夜神月との駆け引きから、’L’は自らの命を賭けなければこの戦いに終止符を打つことは出来ないと「読み」きる。
それは、自分が殺される結果となることを十分予測しながらも、自分がニアの盾となって状況を混乱させる以外に夜神月に勝つ道はないと読みきったメロの「覚悟」と同じである。
第2部をざっくりと切り落としながら、その核心を残す。
あざやかなシナリオ捌きである。
夜神月と決着がついた後、ひとりチェスをしながら「その時」を待つ’L’。冷静な表情とは裏腹に小刻みに震える左手。その指につままれている板チョコはメロが好んでかじっていたものだ。こういう細かいところにも、原作に対する愛が感じられる。
■平成ガメラ3部作で培われた 金子修介
監督お得意の「ヒロイン」役。今回、その「ヒロイン」役を演じたのは、準主役「弥海砂」の戸田恵梨香ではなく、夜神月の妹、粧裕を演じた満島ひかり
であった。
原作のラストで「キラ」に祈る修道女(弥海砂?)の代りに、粧裕が兄の誕生日を祝おうとするシーンが挿入される。映画という露出の高いメディアでこの作品を語ろうとする場合、この粧裕の純真さ、穢れなさ、をメッセージとしてしっかりと刻んでおきたかったのだろう。それが映画製作者としての良心なのだと思う。
そう考えれば、映画冒頭、「さくらTVまつり」の惨劇の現場に偶然、粧裕がいたことの意味が生まれてくる。少々強引な気もするが、物語の前半で粧裕の純真さを印象付けておくための苦肉の策としては、上出来の方ではないだろうか。
■ひとつだけ、惜しいなと思うところがある。夜神月の「死」の場面である。
お前は死ぬんだよとリュークに宣告され、
もがきながら事切れる夜神月。
そして、訪れる『無』・・・。
その『無』を味わう時間が短すぎるのだ。30秒、いや10秒でいい。ここまでのドラマを「ドン!」と断ち切る圧倒的な『無』。それが欲しかった。最後の詰めのところなだけに非常に残念である。上映事故だと思われない為のルール(時間制限)でもあるのだろうか。
■役者でいえば、やはり松山ケンイチの’L’だろう。原作を読んで読んで読み倒して自分の中に’L’を育てていったに違いない。このあとも追いかけてみたい俳優だ。来年2月公開予定のスピンオフ映画『 L 』(中田秀夫監督)もクランクインしたようであるし、非常に楽しみである。
一方の藤原竜也。抑えた演技でありながら感情を表現する微妙な技を評価すべきなのだろう。だが、原作での夜神月が時折見せる『悪魔的微笑』で醸し出される薄っぺらな人物像が気に入っていただけに、あの抑えた演技は、ちょっと物足りない。けれど、映画であの表情をやってしまったらそれこそマンガになってしまうわけで・・・。本当に、こういう演技のバランスは難しいものである。
<2007.08.29 記>
■DVD 『DEATH NOTE デスノート / DEATH NOTE デスノート the Last name 』 complete set
<Amazon評価> ★★★★☆(レヴュー数 135件)
■スタッフ■
■監督: 金子修介
■脚本: 大石哲也、金子修介
■原作: 大場つぐみ、小畑 健
■音楽: 川井憲次
■撮影監督: 高間賢治
■製作: 日本テレビ、他
■配給:ワーナー・ブラザーズ
■キャスト■
■夜神月 ・・・ 藤原竜也
■’L’ ・・・ 松山ケンイチ
■弥海砂 ・・・ 戸田恵梨香
■高田清美・・・ 片瀬那奈
■夜神総一郎・・・ 鹿賀丈史
■夜神粧裕・・・ 満島ひかり
■松田 ・・・ 青山草太
■模木 ・・・ 清水 伸
■相沢 ・・・ 奥田達士
■ワタリ ・・・ 藤村俊二
■死神 リューク(声)・・・中村獅童
■死神 レム(声)・・・ 池畑慎之介
■原作 『DEATH NOTE デスノート』 第1巻
原作・大場つぐみ 漫画・小畑健 集英社 (2004年4月)
<Amazon評価> ★★★★☆(レヴュー数208件)
■やっぱり’L’が死んだ以降の話は余計だったと思う。少年ジャンプ編集部が、「これで止めちゃもったいないですよ。’L’の遺志を継ぐものとか出して、あっ舞台をアメリカに移したりしてもいいですねー」、なんていう風に半ば強引に話を継続させたに違いない。まぁ、それなりに楽しめたのも事実なのだが。とりあえず、「●●白書」みたいに「トーナメント方式の武闘大会」にまで引きづり込まれなかっただけでも良しとするか。(苦笑)
■CD 『ステイディアム・アーケイディアム』
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ (2006年5月)
<Amazon評価> ★★★★ (レヴュー数 64件)
■映画冒頭の「ダニー・カリフォルニア - Dani California 」にのせたデスノートの説明シーンのかっこよさといい、エンディングロールでの「スノー((ヘイ・オー)) - Snow ((Hey Oh)) 」のしみじみ感と曲後半の心を揺るがすビートといい、レッチリ無くしてこの映画は完成しないくらいの影響力があったと思う。アメリカ資本が入ると、こういうゴージャスなことが出来るところが素晴らしい。
■金子修介 監督作品■
【特報】平成ガメラ3部作『再販』決定!(2007年10月発売予定)
■『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年7月公開)
<Amazon評価> ★★★★★(レヴュー数 20件)
■金子修介監督の平成ガメラ3部作は、3作とも素晴らしいのだが、2作目のレギオン襲来は、怪獣映画として、SF映画として、そして戦争映画として非常にレベルの高い作品だ。単品でも十分楽しめるが、出来れば「生物としての怪獣」を描ききった第1作、『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年3月公開)を先に見た方がより楽しめる。
■ちなみに第3作の『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』(1999年3月公開)については賛否両論あるけれども、「私はガメラを許さない!」というキャッチコピーだけでも十分素晴らしい。両親を殺したガメラを憎むが故に神(怪獣)に仕える巫女となってしまった少女に焦点をあてたこの作品が、むしろ一番「デスノート」に近い作品なのかもしれない。
■『ウルトラマンマックス』(05年7月~06年4月TV放映)
<Amazon評価> ★★★★☆(レヴュー数 3件)
■初代ウルトラマンの頃の原点に立ち戻り一話完結形式で製作されたウルトラシリーズ(全39話+1)。メイン監督として金子修介が6作品の監督を務めている。主人公はデスノートで松田刑事を演じた青山草太、チームのマスコット的役柄で満島ひかりが出演している。(リンク先は、不朽の名作「第三番惑星の奇跡」(三池 崇史 監督)が収録されている5巻目です。)
■この時期、金子監督は「デスノート」2本の脚本、監督をやりながら、ウルトラマンマックスの監督もやりつつ、「神の左手、悪魔の右手」を撮ったわけで、どんだけパワーがあるの?という話である。
■『神の左手 悪魔の右手』(2006年7月公開)
<Amazon評価> ★★ (レヴュー数 7件)
■ここまで評価の低い映画も珍しい。よっぽどB級なのだろう。元は那須博之さんが監督を担当していたが、監督の急死により金子修介に引き継がれたそうで・・・。スプラッター・ホラーに興味のある方は是非。夜に一人で小便に立てなくなっても当方は一切関知致しません。ちなみに私は未見です。
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