■【ひつじの本棚】『人生なんて夢だけど』 やなせたかし。
この本は、今年で88歳になる、やなせたかしさんの自伝である。
■ 人生なんて夢だけど
やなせたかし フローベル館 (2005年2月)
漫画家といいつつも、三越の包装紙のレタリングやら、「手のひらを太陽に」の作詞やら、宮城まり子のステージの構成やらドラマの脚本やら、とにかく仕事が手広い。「困ったときのやなせさん」と自嘲ぎみに語るとおり、頼まれると断れない性格なのである。
そうだ うれしいんだ
生きるよろこび
たとえ胸の傷がいたんでも
なんのために生まれて
なにをして生きるのか
こたえられないなんて
そんなのは いやだ!
このアンパンマンのテーマは、そのまま やなせさんのテーマソングでもある。
「多くの人を喜ばせたい。うれしそうな笑い声を聞くのが大好きです。本当に気持ちがいい。」(第八章 時の流れはかえられない より抜粋)
と語るとおり、まわりの人たちの笑顔が やなせさんの心のエネルギー源である。そして文字通り、自らをすり減らしてでも、みんなの笑顔を得ようとする。
その使命感の突き抜け方は尋常ではなく、腸閉塞で緊急入院したその翌日にベッドを抜け出してミュージカルの舞台に立つほど。その時、実に83歳。
しかし、そこには飄々とした明るい空気が漂い、悲壮感を感じさせない。それは、戦後の人生を共に歩んだ漫画集団の仲間を次々と失っていき、ついには最愛の奥さんを亡くしてしまったことと無縁ではないだろう。
悪夢よりは楽しい夢がいい。
この世の「悲しみ」や「怒り」をひととき脇に置いといて、今は優しさにあふれた楽しい夢で笑おうよ。
というメッセージが、深いの悲しみの果てにあるものだと考えると胸を突くものがある。
<2007.07.30 記>
■ 人生なんて夢だけど
やなせたかし フローベル館 2005年2月
<Amazon評価 ★★★★ (レヴュー数 1件)>
■ アンパンマンの遺書
やなせたかし 岩波書店 1995年2月(絶版)
<Amazon評価 ★★★★★(レヴュー数 2件)>
■1994年に書かれた初めての自叙伝。やなせたかしさんが駆け抜けた敗戦後の青春時代については、コチラの方が詳しく、いきいきと描かれている。最愛の奥さんを失った直後に書かれたため、人生の総決算的けじめをつけたいという空気が全編に漂う。が、本質的に人を喜ばせることが大好きな やなせさんの人柄がにじみ出ていて決して重苦しくは無く、ところどころに散りばめられたイラストも含めて楽しい本である。
ところがこの本、何故か絶版となっている。古書でも、なかなか手に入りづらい状況。ぜひとも再販して欲しい良書である。
■ あれはだれの歌―やなせたかし詩とメルヘンの世界
やなせたかし 瑞雲舎 2005年12月
<Amazon評価 ★★★★★(レヴュー数 1件)>
■やなせたかしの代表作のひとつ「MR.BO」、だれもが耳にしたことのある「てのひらを太陽に」、もう一度読みたいというたくさんのリクエストのあった「チリンの鈴」。4コマ漫画と詩と絵とおはなしが、この本の中にぎっしりつまっています。<やなせたかしさんHPより>
■関連記事■
■ひつじの本棚■
『あんぱんまん』 やなせたかしと「正義の味方」
http://soko-tama.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_0ef1.html
■やなせたかしのアンパンマンショップ
http://www.anpanmanshop.co.jp/02-00.htm
■ Amazon.co.jp ■
■ TVドラマ・映画 原作本ページ
■ '07 上半期 Booksランキング
■【 書籍・ベストセラー 】
■【 DVD・新着ベストセラー 】
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント