■第6回『語座bis』公演。「語る」という作業は、語り手だけでは完結しない。
『語座(かたりざ)』という、主として声を生業にする人たちの勉強会がある。そこの座員から公演のお誘いがあって、「読み語り」なるものを体験しに代々木上原まで行ってみた。
舞台があって、中央に本を立てかける台がある。
そこに語り手が立って20分程の短い物語を「読み語る」。
当日の語り手は5人。
よって五つの短い物語を拝聴することとなった。
初めは、どう聴いていいやら勝手がつかめず、
目を閉じてみたり、語り手をしっかり見たりしてみたが、そのうちに、自然とコトバが心地よく心に入ってくるようになった。
実際に本を読むときのペースと、語りかけられるペースは明らかに異なる。従って上手くペースが合わないと、さっぱりアタマに入ってこない。
ところが呼吸というかペースが合うと、すんなりと物語の世界に没入できる。アタマに入ってこないどころか、アタマはすっかり飛び越えてココロに直接入ってくる感じなのだ。
「声が伝わる前にコチラに届く心地よさ。」とでもいうのだろうか。
「物語」は既に自分の中で動き出しているから、語り手が次のコトバを声に出すその前に、こちらの準備は出来ている。「ほら来た」ってなもんで、この時のタイミングの良さがとても気持ち良いのだ。
「語る。」という作業は語り手だけでは完結しない。
そこには、受け手との見えないキャッチボールが存在する。
何だか期待以上の収穫を得たようである。それは、「生」で体験することで初めて得られるものだと思う。
「プロの技」の切れ味を存分に堪能した贅沢な一夜であった。
■出演■
■松田真一さん 「出来心」 星 新一 (「おせっかいな神々」より)
・・・元気がいいことは良いことである。
■広瀬未来さん 「包丁」 石川結貴 (「小さな花が咲いた日」より)
・・・活きがいい。声のちからがびんびんと伝わってきた。それでいてラストは、しみじみとした幸福感につつまれる。女性が持つ「ギラリと光る刃物の恐ろしさ」と「それを包み込む手ぬぐいの柔らかさ」。そのコントラストが上手く出ていた。
■目黒光裕さん 「女も虎も」 東野圭吾
(「輝きの一瞬―短くて心に残る30編」収録)
・・・語りを聴いていて「安心」という言葉を思い出した。オチが読めてしまっても面白いと思えるところは語り手の技であろうか。どことなく落語の風情。
■栗田 圭さん 「声にしてごらん」 高橋克彦
(「短篇ベストコレクション(2003)」収録)
・・・決してアクションが派手なワケではないのだけれど、その語り口は臨場感に溢れ、映像や効果音が聞こえてくるようだった。ほら、白い手がスーと。
■福 絵美子さん 「花言葉」 連城三紀彦 (「年上の女」より)
・・・すんなりと物語の世界に引き込まれている自分に気が付いた。行間に込められた空気が伝わってくる。「緑色のコートを着た女」の主観から、「コートを追った男」の主観への見事な切り替え。その小気味良さ。素直に物語を楽しめた。
■語座(かたりざ)HP
http://www.katari-za.jp/
<2007.07.17 記>
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