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2007年7月20日 (金)

■【ひつじの本棚】 『相手に「伝わる」話し方』 池上 彰。実践に裏打ちされたプロの金言。

話を相手に理解してもらうことは難しい。伝わっているようで、実は全く理解してもらえていないときがある。そんな問題意識から、この本を手にとって見た。

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■ 相手に「伝わる」話し方
―ぼくはこんなことを考えながら話してきた
池上 彰 講談社現代新書 (2002年8月)

とても為になる本であった。何しろ、「伝える」ことのプロフェッショナルが、真剣に「伝えよう」として書かれた本である。「伝えること」の奥深さが、心に染込むように「伝わって」きた。

本書は、NHKの報道記者として出発した池上さんが、ニュースキャスター、そして「週間こどもニュース」の語り手と立場を変えていく歴史を追いながら、語られている。

その臨場感がとても大切だと感じた。だから、「いいな」と思った文章を、本文から直接切り取ってみたいと思う。   

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■池上 彰さん 

文章は短く
 ひとつの文章は、ひとつの要素だけを伝える。これを原則にしました。すると、読んでいて、独特のリズムが発生し、聞き手の頭に入りやすくなることを発見したのです。
第一章 はじめはカメラの前で気が遠くなった(P25)

 短い文章を積み重ねる。畳みかける。そこにリズムが生まれ、記者の説得力も生まれるのです。
第三章 現場に出て考えた (P95)

聞く人の知りたい順に話す思いやり
 どんなときも、まず「相手は何を一番知りたいかな。次は何かな」と話す内容に優先順位をつけながら、話す内容を組み立てていくのです。「相手は何を知りたいのだろう」ということを、常に考えます。そして、そのためにはどんなことを話せばいいのか考えます。これが相手の立場に立ったしゃべり方です。
 これが、思いやりなのです。
第三章 現場に出て考えた (P87)

「ありきたりの表現」に逃げ込まない
 たとえば、「主催者は複雑な表情でした」と書くと、それが何かを描写した気になってしまいますが、実際には、何も語っていないのです。(略)
 ありきたりの表現に逃げ込むことで、対象をしっかり見られなくなる恐れがあるのです。(略)
 ありきたりの表現を避けて、どういう表現を使えば、相手に新鮮な驚きを与えることができるのだろうか、と考えることが大事なのです。
第三章 現場に出て考えた (P96-98)

相手に信用してもらうためには
 自分が信頼されるようになるためには、まずこちらが信頼しなければなりません。こちらが好意を持てば、やがて相手も好意を持ってくれるケースが多いものです。
 相手を信頼し、尊敬して教えを請う。自分を知ってもらう努力をする。この基本原則をきちんと守っていれば、もっと特ダネが取れたのではないか。(略)
第二章 サツ回りで途方に暮れた(P64)

理解していないことは伝わらない
 あるとき、知り合いのアナウンサーが読む原稿を何気なく聞いていたら、ある一ヶ所で、突然、その内容が頭に入らなくなったことがありました。
 その人の放送が終わった後で、私は、「今の原稿で一ヶ所、意味がわからないまま読んだんじゃないの?」と、問題の個所を示して尋ねました。
 その通りでした。原稿を読んでいて、突然ふっと集中力が途切れ、その個所の文章の意味がとれなくなったというのです。
 意味がわからないまま読むと聞いている人もわからない、ということを、私はこのことで知ったのです。
第四章 テレビスタジオでも考えた (P119)

「わかる」ということ
 ある出来事についてひとつひとつの言葉や数字を説明するだけでは、本当にわかったとは言えないこともあるのです。自分の持っている断片的な知識をつなげ合わせ、ジグソーパズルのようにはめ込みながら、全体像が作り上げられたとき、「わかる」ということになるのです。
第五章 「わかりやすい説明」を考えた (P174)

「言葉にする」ことで考えを整理する
 相手の心に届く言葉とは、どんなものか。実は、言葉にしてみなければわからないのです。(略)
 まずは、「言葉にする」ことから始めるのです。「言葉にする」ことで、何を話すか、自分の考えをまとめることができるのです。(略)
 こうして「ひとりブレーンストーミング」をしたら、次は、身近な人を相手にして、「こういうことを言いたいのだが」、「こんなことを言ってみたいよね」などと声に出して語りかけてみるのです。(略)
 最初は話す内容がまとまっていなくても、声に出して話し出すと、次第に話す内容が姿を現してくるはずです。(略)
 自分の頭の中、さらには他人との会話を通じた「ブレーンストーミング」で、自分が実は、何を言いたかったのかが、見えてくるのです。
第七章 「言葉にすること」から始めよう(P200-202)

言いたいことは具体的に 
 どうしても伝えたいことがある。しかし、わかりやすく表現できない。そんなときは、伝えたい内容を示す具体例がないかな、と考えてみるのです。(略)
 会話は相手が参加してくれてこそ成立します。だったら、相手を話題に引き込む材料が必要です。それが、具体例なのです。あるいは、お互いが良く知っている固有名詞なのです。(略)
 抽象論は眠くなる。具体論は相手が身を乗り出す。この原則を忘れないことです。
第七章 「言葉にすること」から始めよう(P204)

「伝えたい」という熱い思いと相手への思いやり
 話すべき内容があって、「伝えたい」という熱い思いがあれば、それは相手に伝わるものなのです。「これだけは伝えたい」という、内心からほとばしり出る情熱があれば、たとえ説明は拙くても、それは相手に伝わるのだと思います。
 ただそのとき、相手への想像力、相手への思いやりを忘れさえしなければ。
最後にもう一言 (P212)

以上、9項目。
実践に裏打ちされた深い言葉が並んでいる。

「伝える」ことについてのバイブルとして、今後も大切に読みかえしたい。そういう本である。  

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■相手に「伝わる」話し方
―ぼくはこんなことを考えながら話してきた
池上 彰 講談社現代新書 (2002年8月)

【追記】今回、池上さんの文章を書き写しながら、文章をこねくりまわす自分のクセに気が付いた。やはり「読む」ことと「書く」ことはかなり違う。あらたな発見である。

  
■関連書籍■

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■「話す」「書く」「聞く」能力が仕事を変える!
『伝える力』

池上彰 著 PHPビジネス新書 (2007年5月)

「中学生にも分かる原稿を書け!」

池上 彰さんはNHKの報道記者として駆け出しの頃、こう指導されてきたという。難しいことを簡単に書く、話す難しさ。

これからコミュニケーション能力に磨きをかけていく若手のビジネスパーソンに向けて、「伝える」極意を説いた本。

『相手に「伝わる」話し方』のような深さは無いが、指導がとても具体的で、ノウハウ本として良い本だと思う。
 

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■これが「週刊こどもニュース」だ
池上彰 著 集英社文庫 (2000年9月)

この番組の語り手を担当したとき、池上 彰さんは「伝える」ことの難しさを改めて実感したという。それが「伝える」ことへのこだわりの原点なのだろう。その生の状況を感じようと思って購入した。内容? これから読みます・・・。

                       <2007.07.20 記>

 
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