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2007年6月29日 (金)

■完璧なプロットに脱帽。『プロポーズ大作戦』 その優しさ。

最高の最終回だったと思う。とても幸せな気分だ。

正直、このタイトルで引いてしまいスルーしていたのだけれど、
何だか妙に評判がいいので途中から見始めたら、スッカリはまってしまった。
なんだよ。こんなに面白いんだったら初めから見ときゃよかった。

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■ストーリー■

そこは結婚披露宴の会場。花嫁、礼(長澤まさみ)は、新郎、多田(藤木直人)の隣で微笑んでいる。花嫁の幼なじみとして、そつのないスピーチを終えた健(山下智久)は、ずっと伝えることが出来なかった彼女への想いを胸にひとり佇む。披露宴は進行し、新郎新婦の思い出をつづるスライドショーが始まっている。

そのとき、怪しげな黒服の男(三上博史)が健の前に現れる。この式場に住む妖精だと名乗った男は、彼に一つの提案をする。「過去に戻って、人生をもう一度やり直してみないか」。 スライドショーで映し出される写真の数時間前にタイムスリップして、その数時間の間だけ、人生をやり直すことが出来るというのだ。

健は、礼との人生を変えて、新郎の席に座ることが
できるのか?果たして!?

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●●●以下、ネタバレ注意!●●●

■たぶん、健は過去を変えることが出来ずに「現在」で決着をつけることになるのだろうな、とは思っていたが、さすがに『卒業』のダスティン・ホフマンよろしく花嫁を奪い去ってしまっては身もフタもないし、「いい人」としてしっかりキャラクターが出来上がってしまっている多田さんを不幸のどん底に突き落とすワケにもいかないだろう。

「うーん。落としどころが、さっぱり分からん、どうなってしまうんだろう。」とドキドキして見た最終回。すっかりやられてしまいました。

■スライドショー最後の一枚に望みをかけた「ハレルヤ~、チャンス!」だったが、結局、運命は変えることが出来なかった。

だが、健はようやく何かに気付き、自分の想いに決着を付ける為に自らの意思で「現在」に戻ってくる。

「過去に戻って礼のために無我夢中で走ってきた。でも、過去に戻ったところで結局、自分は不甲斐ない自分のままでしかない。そして、自分は「今」という時間の中で礼と向き合うことは、まだ一度もできていなかったんだ。」

健は妖精の計らいで、改めてスピーチの舞台に立つ。

そこで、礼への想いを切々と語る健。そして、すべての想いを出し切った上で初めて、心から『幸せになれ』と礼にエールを送ることが出来たのだった。

「健ぞうくん、大人になったな。」

という、森本レオ(礼の父親役)の声が聞こえてきそうだ。

前回の「新婦の父」からのビデオメッセージを撮る場面がしっかり伏線になってたわけで、「花嫁の父の想い」までもが蘇り、込み上げる切なさは倍加する。

■ドラマはこれまでに、一枚一枚の写真に焼き付けられた可笑しくも切ない想いを一話完結方式で見せてきたのだけれど、ここに至って、その積み重ねてきたものが効いてくる。

健のスピーチが終わり、スライドショーが始まる。

その一枚一枚を見つめる礼の心に、封印したはずの健への大切な思いがひとつひとつ蘇ってくる。このドラマを見てきた者は、今までのドラマを思い起こし、その礼の切ない想いを追体験するのだ。

脚本家・金子茂樹の構成力に脱帽。すべては彼の手のひらの上。もう、下手な詮索はやめて、ドラマの流れに身を任すより仕方が無い。

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■そして、問題の多田さん。
これ以上は無いだろうという絶妙の落としどころ。

礼の心の揺れを感じた多田は、今、未来をつかもうと必死に悩む花嫁の背中をそっと押してやる。カフスボタンの八百長で、礼に自分で選んだという形をとらせるところが泣けてくる。

彼は「新郎」であることをあきらめ、成長したかつての教え子たちを見守る「教師」の立場を選んだ。

「はーっ、何やってるんだろう・・・」

このつぶやきが、あまりにも切ない。

■素直に健の想いを受け止めずに心を閉ざしてしまったのは自分自身だったのだ、と気付き、過去を悔やむ礼。

そんな彼女のもとに妖精が現れ、過去をやり直そうと繰り返して、健が最後にたどり着いた「大切なこと」を彼女に伝える。

『過去を嘆く今よりも、
    今を変えようとする未来への意思が
                   一番重要なんだ。』

今からでも、間に合うと思わないか?

そして、礼も走り出す。
その手に幸せをつかむために。

けんぞー! 

礼の声はようやく健に届き、そして微笑みを取り戻す。

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■脚本の素晴らしさが際立つ作品であったが、演出も決して負けてはいない。披露宴のストップモーションのシーンは、あの人数に対して瞬きすら許さずに撮影されたという。安易にCGに流れないそのこだわりは、ドラマに厚みを持たせることに成功している。

特にコミカルなシーンのテンポの良さが最高だ。ツルが教室の窓から見えるように校庭に白線で大きく

「エリが好き」

と書こうとするのだが、途中で粉が切れて

「エリが女子」

になってしまう。

「まぁ、・・・そうだよな。」、「何やってんだ、あいつ。」

思わず飲んでいたコーヒーを噴き出した。真面目に感動させるシーンよりも、こういった単純なお笑いシーンで確実に仕留める方がある意味難しい。

緻密に練り上げられた繊細なシナリオを違和感無く、着実に作品として作り上げた、素晴らしい職人技だったと思う。

■不器用な主役のふたりを演じきった山下智久も長澤まさみも良かったし、妖精役を楽しんでいたに違いない三上博史も気持ち良さそうだった。藤木直人の「変な」感じ、平岡祐太の抑えた演技と濱田 岳のはっちゃけた演技の対比も面白かった。

かなり長い年月に渡る物語なのだけれど、ちょい役も含めて出演者を絞り込んだことで、どのキャラクターもどんどん深みを増して個性が凝縮されていったように思える。そういうところも上手いと感じた。

そして青春群像といえば、やっぱり桑田佳祐。
健の切ない独白からエンディングテーマへの流れで何度胸を詰まらせたことか。「ふぞろいの林檎たち」から24年。ますますその声の切なさに磨きがかかる桑田佳祐は本当にすごい。

■よく考えてみれば、健は過去にタイムスリップして、ただ失敗を繰り替えしただけではなく、実は礼や仲間達の人生を幸せにしていた訳で、「プロポーズ大作戦」は、そういう優しさと思いやりにあふれた作品であった。

こういう、あたたかいドラマが好きだ。 

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■DVD■ 『プロポーズ大作戦』(出演 山下智久、長澤まさみ)
<Amazon評価> ★★★★★(レヴュー数 2件)

■単行本■ プロポーズ大作戦 もしもあの日に戻れたら
<Amazon評価> ★★★★ (レヴュー数 10件)

■CD■ 「プロポーズ大作戦」オリジナル・サウンドトラック

                       <2007.06.29 記> 
   
   

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■ キャスト ■

■岩瀬 健  ・・・山下 智久
■吉田 礼  ・・・長澤まさみ
   * * * * * * *
■奥 エリ   ・・・榮倉 奈々
■榎戸幹雄  ・・・平岡 祐太
■鶴見 尚   ・・・濱田 岳
   * * * * * * *
■妖精     ・・・三上 博史
   * * * * * * *
■多田哲也  ・・・藤木 直人
■吉田貴礼  ・・・森本 レオ 
■吉田礼奈  ・・・宮崎美子
   * * * * * * *
 
■吉田太志  ・・・夏八木勲
「今度やろう、明日やろうは、バカ野郎だ!」  

■ スタッフ ■

■脚本 金子茂樹
■演出 成田 岳 / 加藤裕将
■音楽 吉川 慶
■主題歌  「明日晴れるかな」桑田佳祐
■製作 フジテレビ    

■プロポーズ大作戦 公式HP■
http://wwwz.fujitv.co.jp/propose/index.html

■ Amazon.co.jp ■
【 書籍・ベストセラー 】

【 DVD・新着ベストセラー 】

  

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ちょwwこれよく放送できたなww山下智久が亀梨和也と二人で激ヤバなジャニーズの話をしてくれてますw ジャニーズって上下関係厳しいんだねぇ。。。 ホストクラブみたいだわ〜ww [続きを読む]

受信: 2007年6月30日 (土) 13時27分

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